私が長期任務から帰ってくるとサソリは飴をくれるようになった。初めて貰った飴はしゅわしゅわして爽やかなサイダー味だった。この前は酸っぱいレモン味。その前は色んな味が楽しめるミラクル味の飴だった。いつの間にか苦手意識を持っていたサソリに想像の兄を重ね慕うようになった。兄がいなかった私にお兄ちゃんってこんな感じなのかな、って思わせてくれる。まるで餌付けされたみたいだとデイダラは笑ったけど、私の為に飴を買うサソリを想像するととても愛おしく見えるのだ。
やっと任務が終わり足早にアジトに向かう。今日はどんな飴をくれるのだろう。甘い?酸っぱい?不味い?どんな味でも良かった。サソリから手渡される飴は任務を頑張った私へのご褒美だ。貰った飴を舐めると、どれだけ疲れててもその疲れは吹っ飛ぶのだ。サソリメディシン、とひっそり呼んでいる。



「サソリ!ただいま!!」
「…ああ。」



ぶっきらぼうで無表情だったけど手には飴が握られていた。それだけで充分。自分の頬が緩むのが分かった。今日はどんな味なのだろう。サソリから貰った飴をすぐに舐める。包装は緑のチェック柄で可愛らしかった。口内で飴が踊る。ころころ、ころころ。しかし私の眉毛の間のしわは濃くなる。なに、これ、



「まっずい!苦い!なにこれ、何味なの?」
「今日は青汁味だ。」



苦くて舐めることすら苦しいこれは青汁味らしい。ご満悦とでもいったようにサソリはいやらしく笑っている。まさかこんなまずい飴を買ってくるとは。おえっとえづきそうになりながらサソリを睨みつける。
サソリは私の反応を見るのが楽しいらしい。この前私が美味しいと思った団子をあげようとしたら、いらないと断られた。サソリは人傀儡だから食べ物はもうずっと口にしてないらしい。何年も食べることをしていないサソリの味覚はもう腐ってるんじゃないかな。私の味覚とサソリの味覚も共有できたら、幸せなんだろうなあ。もうすっかり小さくなった青汁味の飴を舐めながらそう思った。



「私も今度サソリの任務が終わったとき、飴あげるよ。」
「いらねぇよ。」
「ううん、絶対舐めさせてやるから!」



最終的にサソリは根負けして頷いた。私の勝ちだ。約束だよ。サソリの味覚がなくて美味しいとか不味いとか感じなくても大丈夫、私も一緒に舐めて味を共有するんだ。もうすぐサソリは任務で行ってしまうから、近い将来になるんだ。楽しみ。どんな味にしようかな。ハバネロ味?ミント味?うーん、難しい。初めて選ぶ立場になってみたけどこんなに悩むものなのか。サソリもこんな感じで悩んでくれてたら嬉しいな。







サソリはあれから帰ってこなかった。ひっそりとしたアジト。サソリに買った飴を舐めてみる。早く帰ってこない方が悪い。先に食べちゃうよ。ころり。甘くて美味しいはずのいちごみるく味の飴は、何故か何の味もしなかった。なあんだ、私の味覚の方が腐ってたのかもしれないね。



20131215


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