七松小平太は幼少期から力加減を上手くできなかった。幼少期から大人顔負けの力を持っていた彼に制御という文字は頭になかっただろう。もし、万が一、百億分の一ぐらいの確率だが、制御を知っていてもきっと彼はそうしなかったはずだ。だって、暴君だもの。

初めて七松小平太が生き物を殺しているところを見たのは、彼が二年生に進級したと同時だった。わたしは知っている、生物委員が飼っていた猫と戯れようとしていたことを。頭を撫でようとした瞬間、ぐにゃり、そんな効果音が合うように猫の首が折れ曲がったのだ。一時期流行ったスプーン曲げのように、鉄でできた固いスプーンが曲がるように、丈夫で簡単には折れないだろう猫の首の骨が折れた。ただ撫でようとしただけで猫の首は折れるだろうか?そもそも彼は、何故そんな強い力で撫でようとしたのか。答えは簡単だった、彼はまだ力を制御出来なかったのだ。









「やあ、七松小平太。」
「…おー。」



間抜けにもとれる間延びした声。七松小平太はわたしを見ずにずっと手元の作業に専念していた。何事かと思い彼と同じく地面にしゃがむ。彼の手は砂だらけだった。それもそのはず。小さい子が遊ぶように、砂の山を何個も作っていた。わたしの握りこぶしほどのものが三個、それとバケツ一つ分の大きさのものが一個。一個だけ異常に大きく見えて変な感じだ。



「それは何のために作ってるの?」
「墓。」



これは昨日撫でたら死んでしまった猫、同じく犬、それは今日毛づくろいをしてあげようとしたら死んでしまったウサギだ!といつも通りの声量で(もっともわたしからしてはうるさい)話す七松小平太。ぞっと背筋が凍った感じ。えぇっとでも、この大きい墓は?



「あんたの思い人、死んだらしいね。」
「そうだな。これからは気をつける。」



その言葉は通算…いや何度も聞きすぎて忘れてしまった。それだけ多いってことだ。七松小平太、あんたは、六年生にもなっても力の制御が出来ないんだね。



20120806
蛇の白昼夢

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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