極端とまでは言わない。
グレン×ジャック
僅かな笑みを浮かべては柔く触れてくる優しいその手が好きだった
今となってはその好きがどの意なのかはわからないが
兎に角好きだったんだ
「んん、」
「どうした」
「いや、さ…注文されたオルゴールの曲が何だか納得いかなくてね」
ことり、と机に置いた小さな箱の蓋を開けば流れてくるのは誰もがよく知る有名なクラシックミュージックの綺麗な旋律。曲も勿論オルゴールとしての技術の高さも窺える。普通の人ならば何が納得がいかないのだろうと思うだろう。
しかしグレンは何かを思い考えるような素振りを見せたあと指で蓋をつついて倒すように開いたそれを閉じた。それと同時にぴたりと止まるメロディ。ジャックは顔を上げてグレンの様子を窺う。彼はいつも通り真っ直ぐで、それでもどこか漂う空気が違うように感じられた
「グレン…?」
「お前の言いたいことはわかる。だが、作り手は時に自分を曲げて客を満足させなければならない」
「…わかってるさ、だから‥」
ジャックが切なそうに笑ってはそう言い掛けた時、グレンはいつものようにふわ、と触れてるのか確かめたくなるようなほどの優しさで髪に触れる
何かと不器用な彼の優しさが垣間見えるのはやはり触れ合う時だった。隠しきれない優しさが伝わってくる、じんわりと
ジャックはその心地良さに思わず瞼を伏せているとそんな様子を見てか少し安心したグレンが口を開く。
「だから、今の仕事が終わったら好きな物を作るといい。曲は…作ろう」
「…グレンが曲を?」
「ああ」
「つまり共同作品…か……丁度作りたいと思ってた物があるんだ」
ジャックが明るく笑顔を見せればグレンも口許を緩ませる。
お互いに唯一無二の存在、親友。
それだけは確かなことだった。
子供のように無邪気に笑って真っ直ぐ伸ばしてくるお前の繊細なその手が好きだった
今となってはその好きがどの意なのかはわからないが
兎に角好きだったんだ