夢を見るのが怖い。
だから夢も見ないように、見てもそれを忘れられるくらいの深い眠りにつける様に日付を跨ぐ位まで起きているのが習慣になっていた。もしも夢の中で彼と会えたとして、目が覚めたときにどこへ行ってもサッカーをする彼の横顔を見れないなんて空しすぎる。自信家に見えて真面目でサッカーが大好きな彼がその不器用さ故にサッカーを手放してしまうとは。


自分の中でどれだけ強く思っていても、やはり身体は睡眠を欲するようで石を載せたように重い目蓋はいくら擦っても勝つことは出来なかった。


気がついたときには暗闇の中にいて、ぼやけた視界で夢かそうでないか、しっかりと判断できないでいる私の前に水色の髪の健康的な褐色の肌をした――ってこれは倉間じゃないか!私よりも少し低い背の某妖怪のような、またまた某兎戦士のような特徴的な髪型をしているのは私の知っている限り倉間しかいない。しかし、目の前の彼にはまるで天使のような白い羽があった。



「えっ…と。倉間?」
「…はぁ?」



仮にも白い羽を持つ人間(?)がこんな喧嘩腰の返事をしていいのだろうか。倉間は確かにちょっとツッコミが厳しいけれどかわいいかわいい私の後輩だ。とにかく返事から察するに倉間ではないらしい。多分。



「何言ってんの?まぁいいや。」



いいのか。



「あんたさぁ、疲れてるんならやめれば?」
「…は?」



どうやら今度は私が素っ頓狂な声を出す番らしい。



「じゃ、そーゆーことで」



いやいやいや、全く意味が分からないんですが。勝手に現れて意味のわからないことを言われて…何をやめればいいの!この偽倉間!お前誰だよ!なんて心の中で悪態を吐いていると遠くの方から聞き覚えのある音が流れてきた。えっと、これは確か最終下校五分前を知らせるチャイムだったっけ。段々と意識がはっきりしてきた私が見た空はもうすっかりとオレンジ色に染まっていて結構な時間眠っていたことがわかった。


軽く伸びをすると窓の外ではまだサッカー部が元気に走り回っていた。けれどそこにはやっぱり南沢の姿はなくて。天馬くんみたいに素直だったらあいつも辞めずに済んだのかなって、今更悩んだところでもう遅い。大体、この学校にはいないのだから。


ただ、サッカーをしてるときのあの楽しそうな表情がもう見られないのかと思うと何故だか胸が酷く痛んだ。




ただそれだけ
(なのになんでこんなに切ないのだろう)

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