ケーキを嬉しそうに食べる姿を見て、霧野くんにもそんな顔を見せてあげたらきっと誤解も解けるのに、なんて溜息を吐くとむすっとした顔で睨まれた。
「何?」
「ううん、何も」
霧野くんの名前を出すと決まって機嫌が悪くなるから困る。何でそんなに突っ掛かるのかなぁ。他の人にはそんなことしないのに。ただ、時々物凄く子供染みた悪戯をするけど、そこはまだ子供だから「まぁ、いいか」と諦めてしまう。そういえば初めてマサキに話掛けた時、私もそんな態度をとられたっけなぁ。しみじみと物思いに耽っていたらにゅっとフォークが伸びてきていちごに刺さった。他人事のように眺めているとそこではたと気付いた。
「私のいちご!」
「ぼーっとしてる方が悪いんだよ」
声を上げるも時既に遅し。いちごは口の中に消え、マサキはしたり顔でそう言い放った。せっかく最後の楽しみにとって置いたのに!悔しいのと悲しいのと心配して損したのとをわざとらしく溜息にすると、今度は満足したとでも言いたげな笑みを向けられた。
刺激的な果実
(すぐに捕まえてみせる)