廊下の方からペタペタとこちらへ向かってくる音がしたと思ったら、鈍い音と共に何かが衝突してきた。痛い。体はがっちりとホールドされているので仕方なく首だけを動かして確認すると、視界に入るのは赤い色。
「・・・どうしたの」
「・・・」
「ねぇ、」
「・・・」
・・・・・・返事がない。ただの屍のようだ。
なんてことはなく、布越しに伝わってくる体温はバカみたいに熱くてこれで平熱なのだから驚きだ。常人ならこれは"熱がある"のレベルに入るはず。ふと、視界の端にある足が震えているのに気づく。あぁ、珍しいこともあるんだな。
「晴矢」
名前を呼ぶと腕の力が強くなってぎゅうぎゅうと締め付けられる。食後じゃなくて良かった。それなら確実に気持ち悪くなっていただろうから。
「晴矢」
もう一度呼ぶと身体が悲鳴を上げるか上げないかギリギリのところまで力をこめられる。これで手加減しているなんて言うんだったら、私には晴矢に常人とはなんたるかを小一時間ほどかけて教える権利があるはずだ。とにかく苦しい。
「・・・今日は寒いね。」
少し経ってから肯くように真っ赤なチューリップが揺れて、やっぱりかわいいところもあるじゃないかと少しだけ口が緩んだ。
あしたてんきになれ