私、死んでもいいよ



正直、何を言っているのかよく分からなかった。
それでも目の前のごんべは至って真面目な顔をしていたし、冗談でもそういうことを言う奴では無いと知っているので、俺は余計に訳がわからなくなってしまった。

何か嫌なことでもあったのだろうか。
今日も一日中ごんべは楽しく園のチビ共と遊んでいたらしいし、俺はごんべに特に不機嫌になるようなことはしていない。強いて言うなら少しばかり自主練の時間が長かったくらいで、そんなのいつもことだし、コイツは廊下に座って笑いながら、時折ダメ出しをしながらそれを見ていた。

不思議なことを言われるのには慣れていたが、こんなにも突拍子も無いことを言われたのは初めてだった。
なにか原因を探そうと自分の行いを思い返してみたけれど、俺は考えることが嫌いだし、物思いに更けるのもなんだか馬鹿馬鹿しくなったので、再び顔を上げてごんべを見た。
相変わらず少し微笑んでいて、でも目は真剣で。

気が付けば俺はいつの間にかごんべを抱き締めていた。
ただ、もしこのままごんべがその言葉通り死んでしまったら、俺の前からいなくなってしまったら。
そう思ったら怖くて堪らなくなった。
そして、すっぽりと腕の中に収まったごんべは細く、少しでも力を込めたらすぐに壊れてしまいそうで、より一層俺の不安を掻き立てた。
そんなごんべの腕がそっと、でも確かに俺の背中に触れたのに少しだけ安心して、またその温もりが無性に嬉しくて思わず顔が綻んだ。




愛が溢れたら


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