ごんべが気分転換をしたいと言ったから、そんな成り行きでベランダに出た。
深い深い濃紺の海に小さな石ころのような星が1、2、3…無数にあるそれはキラキラと綺麗に輝いている。
人々が眠りに入ったこの街は、まるで私とごんべの二人だけの世界のようで。
できることならばこのままずっと一緒に二人きりでいれたらいいのに。



…月が綺麗だな
「そうだね」



かの有名なあの人は"I love you."をこう訳したと言う。
しかし、私の想いの丈を込めたその言葉はごんべの返事によって意味のないものとなってしまった。
…まぁ、今夜の月は本当に綺麗なので、不自然に思われることはなかったことが唯一の救いだったが。
私の言葉を言葉通り、そのままの意味で受け取った当の本人は紺色の大きな深いカーテンを眺めながら、どこか儚げな笑みを浮かべている。
それはもしかしたら月に帰ってしまうんじゃないか、そんなバカげたことを思ってしまっても仕方がないくらいに綺麗で。
そうやって夜空を眺める体を装いながら隣の存在をボーッと見つめていると、不意にごんべが此方を向いた。



「風介って時々凄くロマンチックなことをするね」



聞いてるこっちが恥ずかしいよ。そうやって笑った彼女に、私は少しぐらい期待してもよいのだろうか。




月に愛を囁いた


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