金魚すくい、ヨーヨー釣り、射的にお面…
出店は他にもいっぱいあると言うのに先程から俺が見たものは、たこ焼き、いか焼き、焼きそばにみたらしだんご。こうも食べ物のオンパレードだといくら育ち盛りの男子中学生でも嫌になるのである。主に胃が。

どうしてこうなっているかというと早い話、「マサキ!こっちこっち!」…奴である。
浴衣に下駄なんて歩きづらいに決まっているのに、食べ物を前にした奴の前ではなんの障壁にもならない。足取りは軽い。むしろ軽すぎるくらいだ。

俺にブンブンと手を振ってるごんべの次の標的はどうやらりんご飴。
人を掻き分け屋台の前にやっとのことで辿り着くと「はい、」と渡される赤いそれ。普段は喜んで食べるそれも今日ばかりはなんだか忌々しく見える。しばらくりんご飴と一方的なにらめっこをして、それからちびちびと渋々舐めながら歩いていると前方にあったはずのごんべの姿がないことに気が付いた。

携帯も持っているしあいつのことだから大丈夫だろう。とも思ったのだが、胸の辺りがざわざわしてどうも落ち着かない。焦りの所為か、背中に流れる冷や汗が酷く気持ち悪い。辺りを見回してみても俺の身長では(自分で言ってて辛いが)周りは人ばかりで何も見えやしない。歩き回っても無駄に疲れるだけなのでその場にとどまってあの大食いバカがどこの屋台に行ったのか考えていると、「まーさき!」なんて声とともに顔面に白いふわふわしたものが押し付けられる。甘い、ってこれは綿菓子…?綿菓子をぐいぐい押し付けながらごめんね、と謝る姿に抵抗しながらも安心してしまって、同時にどこか少しむず痒くなってなんだか無性に腹が立つ。仕返しとばかりに無理矢理ごんべの手を掴んで人混みの中を駆け出した。

title by 確かに恋だった



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