かわいいな、そう思った。
初めて見たとき小さくて花が咲いたように笑う彼女に胸の辺りがギュッと締め付けられた。
そう、所謂一目惚れというやつである。



日本代表の選考メンバーとして選ばれてから数週間が経って、暑さも練習も一層ハードになってきた。
選手である俺たちも勿論のこと、マネージャーだって洗濯にスコア付けに忙しいようで、今日もななしさんは洗濯籠いっぱいのタオルを持って物干し竿の方へ行ったかと思うと今度はタンクを持ってきてドリンクを作っている。日に照らされながら一生懸命自分の仕事をこなす彼女はとても素敵で思わず溜息を吐いてしまう。


自分はこんなにもななしさんのことを見ているのに、彼女から話しかけられるのには全くなんの耐性もついていないらしく、この間「緑川くん、」だなんて声をかけられたときには思わず硬直してしまった。そんな俺を見て首を傾げるななしさんに心中、それは反則だって!と叫びながら「え、っと、ど、どうしたの?」となんとか返事をすることができたけれど、きっと彼女は変なやつだと思ったに違いない。そもそも初めて会った時俺は“宇宙人”だったのだからすでに十分おかしなやつ認定されていて当然なのだが。
それでもやっぱり彼女のことがどうしても気になるわけで、毎日毎日ななしさんのことばかり考えてしまうのである。好きな人はいるのだろうかとか、どんな人がタイプなのだろうとか、あわよくば彼女に…なんて。
全く、井の中の蛙、大海を知らず。己の無力を思い知るのは俺じゃないか。


今日何度目かわからない深い深い溜息を吐いていると監督から休憩の指示が出てフィールドで練習していた皆が各々水分補給をしにベンチに集まっていく。
あぁ、彼女がタオルとドリンクを持ってあの笑顔で俺の元に駆けて来てくれないだろうか。
……ま、そんなことあるわけないんだけど。



ねぇ、こっち向いて

song by 高嶺の花子さん
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -