「…アサミ、ちゃん…?」
「……」
「アサミちゃん!アサミちゃんだよな!?」
「ええ、いかにも私は豊臣アサミにございます」
「よかった、やっぱりアサミちゃんだったんだ!今はどうしてるんだ!?秀吉や半兵衛は!?暫く会ってなかったから心配し、」
「急いでいるので、失礼してもよろしいでしょうか」
「…え?あ、ご、ごめんよ。…い、いや!待ってくれ、少しくらい話を聞いてくれても、」
「急いでいる、というのが聞こえませんでしたか、前田様」
「……えっ、な…っ、どうしたんだよ、そんな、他人行儀な呼び方…」
「他人行儀、ではなく、他人でしょう」
「…っ!?…アサミ…ちゃん…?」
「兄様の友は、唯一、半兵衛様だけ。…貴方様は、捨て去るべき過去、にございます」
「え、そんな、嘘だろ、アサミちゃんまで」
「嘘を言っているように、お見えですか」
「…っ!……おい、なんでだよ…なんで、アサミちゃんまで…そんなふうに、変わっちまうなんて……」
「私は正真正銘豊臣アサミ、豊臣秀吉の妹です。何一つかわってなどおりません」
「そんなわけないだろ!昔はもっと、花が咲くように笑う女の子だったじゃないか!それなのに、今は、」
「貴方様から見た私が変わっていたとしても、それは捨て去られた過去の産物。貴方様の中の私など、とうにこの世に存在しないのです」
「…ッ、なんだよ、それ…!」
「貴方様が納得せずとも、それが真実です。…それでは、私はこれにて」
「………なんで、なんでこうなっちまうんだよ……ちくしょう……ッ」
藪の中の荊