深夜二時。
DIO様に連れられて、プッチ君と待ち合わせた教会へと赴く。
扉を開けて中に入ると、いつもとは違って華やかに飾り立てられた祭壇が目に飛び込んだ。
「これ、どうしたの?」
尋ねれば、明日ここで結婚式を開くための準備なのだという。
結婚式、かあ…。
真っ白いウェディングドレスに身を包み、愛する人と永遠を誓い合う特別な儀式……憧れはすれど、今の私には叶わない夢で。
今だってDIO様は私を傍において下さる。
部下としてはそれ以上に幸せなことなんてない。
その、はずなのに。
恋人としての私は、ずいぶん欲張りなようだ。
「名無子」
一人でぐるぐると物思いにふけっていたら、不意に名を呼ばれた。
どうやら、今日の用事は済んだようだ。
「すみません、DIO様!今すぐそちらに、」
言いかけて、気が付いた時にはDIO様に抱きかかえられていた。
どうやら、スタンドの仕業らしい。
「えっあっDIO様!!?ああああの、」
「結婚式が、したいのだろう?」
「…え?」
突然心の中を言い当てられて、思わずどきっとする。
DIO様はというと、このDIOに隠し通せると思ったか?なんて、いつも通りのニヤリとした笑みを浮かべていて。
そのまま、私を祭壇の前に立たせ、飾付の造花と白い布を遠慮なく外していく。
「ふむ…急ごしらえだが、これでいいか」
そう言いながら、DIO様は私の頭に先ほどの飾りをまるで花嫁のヴェールのように優しく被せた。
「プッチ」
「ああ、わかっているよ」
「話が早くて助かる」
混乱する私をよそに、二人はなにやら相談を始める。
暫くして、DIO様が自分の手から指輪を二つ外して、プッチ君に手渡した。
「これで準備は整ったな。…来い、名無子」
言われたとおりにDIO様の前まで進み出たところで、気づく。
…え、これって、もしかして。
「今から、君たち二人の結婚式を執り行うよ」
「神父役はもちろんプッチだ」
「まあ、まだ見習いだけれどね」
そんな、本当に、こんなことって。
悪戯っぽく笑う二人に、じわりと目が霞む。
その様子を見たDIO様は、更に笑みを強くして。
「名無子。このDIOとともに、永遠を生きると…誓ってくれるな?」
そう言って私の手を取るDIO様が、まぶしくて、かっこよくて、どうしようもなく好きで。
言いたいことはたくさんあるはずなのに、ただただ精いっぱいの笑顔で「はい」と返事をすることしかできなかった。