「プロローグ」


私は、かなりの巻き込まれ体質である。


しかも、犯罪レベル鬼以上に巻き込まれる確率が高いように思える。

私を襲った怪人達の中には、人の命を奪った怪人ももちろんいた。

私が死んでいてもおかしくなかったのだ。


そんな私が、今日までこうして生きていられるのは…。


「お、ソヨカゼじゃねーか。近くに怪人いんのかな?やべえ、マントとか家だわ。」


この人がいるから。


「いませんよ!下校中ですっ!!」
「えー、わかんないだろ?」


サイタマさん。
サイタマさんは、今でこそプロのヒーローとして活動しているようだが、私は彼が趣味でヒーロー活動を始めた頃から何度もお世話になっている。
私が怪人に襲われると、必ず颯爽と彼が現れ、怪人を退治してくれるのだった。


『あれ、お前また襲われてたの?やばいね。』
『笑い事じゃありませんんん!』


粉砕された怪人の前で、何度こんな会話を交わしただろうか。
さすがにサイタマさんも私の顔を覚えてしまったようで、街なかで出会った時は向こうから気づいて挨拶してくれるくらい。
そのうえ、どうやらお弟子さんのジェノスさんまで私の顔を覚えてくれたらしい。


「いや〜お前が平和にしてると、世の中も平和って感じだな。」
「そ、それは…えーと、喜んで、いいのでしょうか…?」

サイタマさんはコンビニのレジ袋をカサカサと音立てながら笑った。


「んじゃま、俺は早く漫画読まなきゃいけないから帰るわ。お前気ィ付けて帰れよー。」
「はい!サイタマさんもお気をつけて!」



今日も安心して街を歩けるのは、サイタマさんがいるから。

誰もが彼をプロのヒーローだなんて気づかず、素通りしていく。
そんな人達の横を通り小さくなっていくサイタマさんの背中に向かって呟いた。


「いつもありがとうございます。サイタマさん。」


たとえ誰もあなたをヒーローだと思わなくても、わたしにとってあなたは最強のヒーローです。

だってわたしはあなたのおかげで生きているようなものだから。


わたしは軽い足取りで家に向かって歩き出した。




公開:2016/12/29/木


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