悲しくなることがあったんです
まっくら。
電気を消したから当たり前。
「……」
鬼灯は、彼女の"異変"を、ちゃんと感じ取っている。
それ故、なにも言わない。
ベッドに一人で寝転がり、微動だにしなかった死乃。
自分の作業を終えた鬼灯は、卓上の電気を消し、自分もベッドに潜り込む。
死乃は背中を見せている。
よくみれば小刻みに震えている。
わかっている。
だから、なにも言わない。
そっと、抱きしめた。
ぴくり、と反応する死乃。
サラサラとした髪の毛にキスをする。
くるりと向きを変えた死乃の頭を、胸の中に閉じ込めた。
彼女の手が自身の顔の辺りにあるため、顔は見えない。
頭をゆっくりと撫でると、ついさっきよりも震えが激しくなる。
…声を、押し殺して泣くんですね。
どうして、そんな悲しい泣き方を…。
抱きしめる腕に力を込める。
守ってあげたい、助けてあげたい。
そんな欲求が溢れてくる。
しばらくすると、しゃっくりしていた死乃の呼吸も規則的になってきた。
相変わらず抱き合ったまま、また夜を越す。
二人で、夜を越す。
そして、また朝を迎える。
二人で、朝を迎える。
fin.
公開:2013/06/07/金
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