novel2012 | ナノ


渦巻く感情に名前はいらない




 本日は、晴天ナリ。

「悪い、待たせた! 俺が最後が?」
「ん、あー、まあそういうことになるかな。一応今日のメンバーは揃っているからさ」
「日向で最後! ま、久々の休日だし楽しもうよ、ね、水戸部もそう言ってるし!」
「……」
「俺もさっき来たとこだし日向が気にしなくていいんじゃないかな」
 なんて言葉はどーでもいい、本当にどうでもいい。
 まあ、真っ青な空に照らす太陽、お天気様はどうもご機嫌なご様子。
 現在俺たちは、誠凛高校最寄り駅に位置するとある喫茶店に集まっていた。
 そこにいるメンバーはお馴染み誠凛バスケ部の二年生メンバーで。
 久々の休日、即ちオフ。
 俺たち二年生はたまにはバスケ以外でも息抜きしようぜ、ということで此処に本日十時集合の約束を昨日交わした。
 一年生は一年生で付き合いがあるようなので、今回は二年だけ。
 といっても、カントクは家族との先約があったようなので、居ないけれど。
 しかし、ひっかかるのは最初の伊月の言葉。
 『一応今日のメンバー』ってどういうことだ?
 空いていた伊月の隣の席に腰を掛けて面子を確認する。
 伊月に、俺、水戸部にコガに、土田。
 ……あれ、なんかいつもより人が居ないような。
 そんな俺の表情に気付いたのか伊月が言葉を発する。
「木吉は、なんか今日先約あったの忘れてたからそっち優先するってさ」
「ふーん、まあアイツがいなくても問題ないっていうかむしろ清々するけど。で、目的地何処にするよ?」
「はいはい! 俺の家の近くにさ、美味しいって評判のクレープ屋さんできたんだよね! みんなで行こーよ!」
 元気よく挙手しながら提案するコガに、特に反論するものはおらず。
 俺たちは支払いを済ませてコガの家の近くまで歩き出した。
 もちろん、オフだからって一日休むわけには行かないから歩きだけど。
 目的地まではそう遠くないし電車賃でクレープが買える。


 歩くこと約30分、ようやくコガの住んでいる街にたどり着く。
 正直坂道とかがあるのは想定外だった、結構キツい。
「あ、あの店だよ! うわー、やっぱ行列だね!」
「行列を見ていま俺はぎょーれつに驚いている」
「伊月死ね」
「え」
 コガの指差す先には長蛇の列を作るクレープ屋『Liebe』というお店があった。
 並んでいる人物たちの大抵はカップルで正直行きにくい。
 伊月や土田も同じことを考えているのか少し冷や汗。
 と、そんな時。
 俺たちの視界に見覚えのある人物と、その因縁の相手を見つけた。
 呆然とする俺たち、コガが一番最初に言葉を発する。
「えっと、あれ、木吉だよね? 隣に居るのって花宮だよね? ……木吉の先約って花宮のことだったってこと!?」
「コガ、もう少し声抑えないと聞こえるよ」
 土田がコガを一先ず抑えるが効果はあるのかないのか。
 目をキラキラと輝かせるコガの姿に俺達は覚悟を括った。
「よし、今日の行動は決まりだね! 名付けて『木吉とアイツの不思議な関係!』でどうよ!?」
「そのままじゃねーか、ダァホ」
 とは言いつつも、どうみても犬猿な二人が仲がいいという光景は少しばかり好奇心が抑えきれない。
 二人はもうすぐクレープを買う直前の所まで進んでいる、俺たちは遠くの茂みから覗いている。
 大した効果は得られない気がするけど……、まあ面白そうではある。


 それから五分後、花宮と木吉はクレープを一つずつ持ち行列から離れた。
 そして俺たちのいる茂みの近くのベンチに並んで腰を下ろす。
「ふはっ、だるいし暑い。こんなもんのために付き合わせるなよ。今日は家でまったりする予定だったじゃねーか」
「ま、たまにはいいだろ? それに此処のクレープは評判なんだ。食べてみろよ」
「……ん」
「どうだ?」
「悪くはねえな」
「だろー?」
 家でまったりする予定!? っていうかなんだよその甘い雰囲気!
 同意を求めるまでもなく全員の反応は同じ。
 木吉と花宮って、犬猿の仲なんじゃなかったっけ……?
「なー、花宮の一口ちょーだい」
「ハァッ? 自分の食えよ」
「固いこというなって!」
「あ、ちょ! 待てってば!」
「んー、ほろ苦くてこれもいいな。こっちもうまいぞ。はい、花宮」
「……どうしろと?」
「あーん」
「……」
「嫌か?」
「……ん、まあまあじゃねえの」
 そうか、と嬉しそうに花宮の髪をくしゃくしゃする木吉。
 えっと、俺たちはもしかして暑さのあまりに白昼夢を見ているのか。
 とりあえずいたたまれなくなる二人のラブラブ(?)オーラから逃げるため、俺たちはその場を後にした。
 幸い、気づかれることはなかったと、思いたい。


「はあ、びっくりしたあ〜! どうみても恋人だよね!?」
「コガの意見に一理あるけど、なんでだろうなあ」
「意外と正反対だから故に惹かれあったってとこだったりしてな」
「ダァホ、なんでお前ら誰もツッコまないんだよ!」
 まったく、木吉のヤツはとらえどころがない。
 正直、少しばかり複雑な感情はある。
 だけど、まあ、アイツが、幸せだと感じるなら。
 俺が深く考えることではないのだろう。

 まあ、どうぞご勝手お幸せになりやがれ!






 大変お待たせしました!
 あまもんさまリクエストの木花+誠凛or木花+日/木花と遭遇or見かける誠凛群or日向です。
 両方とも取り入れたいがために日向視点で誠凛二年生(特に小金井くん)に見守ってもらいました。
 多分花宮さんは五人の存在に気付いていると思います。
 ふはっ、バァカと多分思いながらも木吉がいることに幸せを感じてたら。
 木花と言えるのか分からないですが木花だと言い張ります。

 以下コメントレス。
 何度も拍手いただいたり、応援していただいてありがとうございました!
 復帰を喜んでいただき嬉しく思います。
 いえいえ、+でもなんでも大歓迎ですのでこの度はリクエスト感謝です!
 第三者は語る、というスタイルは結構好きだったりするので書いていて楽しかったです。
 そして大変お待たせしました!
 フリリク企画に参加、誠にありがとうございました!



 お持ち帰り、返品はあまもんさまのみ受付です。
 ご閲覧ありがとうございました!

 2012.10.30 弥深(title by hmr)


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