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  私の可愛いこ(フルフル)




「ナナシおねぇーちゃーん」

「元気にしてたか」

この雪山に通うようになって約一年。このやりとりは当たり前になっていた。今私の所へ駆け寄ってくるのは人間ではなく、モンスターだ。フルフルといって、私を姉のように慕ってくる。私もなんでかわからないが、フルフルと話すことができ驚きを隠せない。だが世の中不思議なことは絶えないわけだし、フルフルとも話せて私は嬉しいので、特に気にしてはいない。

「うん、元気だよ!!ナナシおねえちゃんに会うのは久しぶりだから、僕凄く嬉しい」

「ごめんな。仕事がちょっと忙しくて」

そう言って私はフルフルの頭を撫でた。プニプニしていて気持ちいい。

「うん、わかってる。ナナシおねえちゃんに会えるだけで僕嬉しいから平気だよ」

フルフルはとても素直で優しい子だ。こんな素直で優しい子は人間でもなかなかいないだろう。私の近所の子供はフルフルと違い生意気で、より一層そう思う。


「今日は何をしようか?」

「またナナシおねえちゃんのこと聞かせてよ!」

「また私のことか?」


フルフルはやたらと私のことを聞きたがる。
この前来たときもそうだった。好きな食べ物や好きな色、と様々なことを聞かれた。なんでそんなに私のことを聞きたがるんだ…?。


「ナナシおねえちゃんのこと大好きだからもっと知りたいんだ!」


(なんて可愛いことを言うんだ!!)

フルフルが可愛くてツライ。世間一般的には可愛いと言われる容姿ではなく、むしろ反対の容姿だが私には可愛くてしかたがない。こんな弟なら欲しかった。

「わかったじゃあ今度は私の家族について話そう」

「家族?」


フルフルは座り、私もフルフルに寄りかかるように座った。雪の上に座るのは防寒対策をしてきてもやっぱりちょっと冷たい。フルフルに寄りかかるとプニプニしていているから気持ちがいい。
プニプニを堪能しつつ私は話し始めた。



「家族というのはな、血で繋がった人の集まりで、一緒に住んでご飯を食べたり、共同生活をする集団のことを言うんだ」

「えっと」

(さすがに家族の説明は難しかったかな?)

「わからないならいいんだよ」

「ごめんなさい…」


謝ることはないのに。わからないならものはわからないのが普通だ。素直に謝るフルフルは本当に良い子だな。

「気にしなくていい。で、私の家族は父と母と妹の4人家族でいつも賑やかな家族なんだ。家族でよく食べ物の奪い合いをしたり、妹とちっちゃなことでケンカはするがいい家族だと思う。そんな家族が私は大好きなんだ」

「いいなぁ…」


「どうした?」

「ナナシおねえちゃんとその人達はいつも一緒にいて、好かれてる。その人達がすごく羨ましい…。僕もナナシおねえちゃんと家族になりたい」

(なんだこの可愛い生き物は!)

あぁもうどれだけ私を悶えさせるんだ!!
私は立ち上がりフルフルに抱きつく。

「なぁフルフル、私は家族が大好きだ。けどなフルフルも同じくらい大好きなんだ。だからフルフルも私の大切な家族だよ。毎日会いに行くことは出来ないけど死ぬまで一生会いに行く」

「ほんと!?ナナシおねぇちゃん大好き」



(なんかプロポーズっぽい気がするけどまぁいっか)

今日も私のフルフルは可愛い。


end









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