小説 | ナノ




  変わらないアナタ(祐月様/85)




「なんでエイトは武器を使わないで、自分の拳で戦うの?」

「なんだ、急に?」
本当に突然だった。


「なんとなくー!!」

「…前にも言ったはずだろ」
いつだったかは忘れたが、前にも同じように聞かれた覚えがある。

「あれ〜?そーだっけ?」

シンクらしいな。


「俺は人の命を簡単に奪う武器が嫌いなんだ。命を奪ったこと、その奪った人の痛みを覚えておくために俺は武器は使わない。」

あまり口にはしないが、これが俺の武器を使わない理由。


「そ〜だったんだぁ」
結構真剣な話のはずが、シンクの独特のゆるい話し方が真剣さをなくさせる。

「前に一度話したはずなのに、その反応。やっぱり忘れてるんだな」

「えへへ、シンクちゃん忘れっぽくて」

よくシンクは課題を忘れたりしてナインたちと一緒に居残りさせられていた。たいていサボっていたがな。


「エイトは強くて優しいね」

「強くて優しい?」

俺が強くて優しい?どこがそうなのかまったく検討がつかなかった。

「うん、エイトは強くて優しいよ〜。だってわたしがメイスを選んだのは一発で楽に敵を殺せちゃうから選んだんだぁ〜。それにシンクちゃんにはメイスが似合うから〜」



「…重くないのか」

「う〜んちょっと重いけど、全然平気〜。私、力だけはエイトにも負けないよ〜!」

実際シンクの力は強かった。がたいの良いキングやナイン、それに俺自身力比べで勝てないほどに強い。0組、いやもしかしたら魔導院の中でも一番かもしれない。

「今はその力が疎くないのか?」





−――――
−―――――――
−――――――――――


シンクは俺達0組と出会った時から力が強かった。正しくは出会う前から強かったらしい。そのせいか親や周りから
『怖い…』
『気持ちが悪い…』
『化け物…』
と散々罵られ、蔑まれてきたそうだ。そしてとうとう捨てられ、マザーに拾われた。
俺達と出会った当初、シンクは自分の力を持て余し、コントロールできずによくモノを壊していた。たまに人を傷つけてしまうこともあった。力のコントロールの仕方がわからず、教えられもしなかったシンク。実は俺はそのたんびシンクが自分の力を嫌い、泣いていたのを知っている。いつしかすっかりコントロールでき、笑顔が絶えないシンクだったが、本当に昔は力を疎んでいた。






「別に〜。昔はすごく嫌いで嫌いで仕方がなかったけど…エイトのおかげで今は嫌いじゃないよ〜」

「俺?」
いったい俺は何をしたんだ?

「あれれ〜覚えてないの〜?」

「悪い…」
本当に覚えてなかった。

「別にいいよ〜。でも意外とエイトも忘れん坊さんだね〜」

わたしはずっと覚えてるよ。エイトがわたしに言ってくれた言葉を…。


−――――――
−――――――――
−――――――――――


あの頃のわたしは自分の力が嫌いで嫌いで仕方がなかった。お母さんやお父さん、友達から、周りの人々から罵られ、蔑まれ、最後は捨てられた。
そんな捨てられたわたしを拾ってくれたのはマザーだった。そしてわたしはマザーに連れられてあの施設に行き、みんなと出会った。最初は不安で、皆怖かったけど、どんどんみんなの優しさと温かさに触れて、
『ここにいるみんなはわたしを怖がらない、罵らない、蔑まない。わたしは皆と一緒にいたい。嫌われたくない』
そんな風に思い始めた。でもわたしは自分の力をコントロールできずに、モノを壊し、みんなを傷つけてしまう。そのたんび強すぎる力を持って生まれたわたし自身を、力を憎んで泣いた。
あの日もいつものように、泣いていたわたし。そんなときエイトが現れたの。

『シンク』

わたしがいた場所はめったに人がこない場所。みんなも知らないはずなのに、突然エイトがやってきた。

『うぅっ、また、わたし壊しちゃった。傷つけちゃったよ。どうして、どうしてこんなに力が強いんだろ。』

『こんな力…』

『こんな力いらなかった!!こんな力あったっていいことなんか一つもないよ!!もう、いやだ…。こんな力あるなら生まれてきたくなかった!!』

ずっと誰にも言えなかった。こんなウジウジしたわたしはみんなに嫌われてしまう。それが嫌でずっと言えないでいたのに、不思議と突然現れたエイトには言えてしまった。そこまで親しかったわけじゃない。もちろん嫌いじゃなかったけど、あんまり話したことがなかった。


『……シンク』

そっと両手を伸ばしシンクの手を握りしめた。

『うまくは、言えないが、俺はシンクの力は人の役に立っていると思う』

『嘘だよ』

『この前だって固いボトルのふたを開けてくれたし、重たいモノを持ってくれた。俺はすごく助かってる』

『本当に…』

『あぁそれにシンクの力は人を守る力にだってなる。だから自分自身を、その力を好きになってやれよ』

『……うん、ありがとう』


その時はまだ本当に自分を、力を好きにはなれなかった。そんなすぐになれるわけがない。けど時が経つにつれて、力のコントロールが出来るようになり、『わたしの力は人の役にたてる。人を守れるんだ』ってわかったんだ。あの時言ったエイトの言葉通りだった。
それからわたしは自分と、この力を好きになれた。

そしてわたしはこの時からエイトを……。







あの時のことを思い出していた。


「ねぇエイトはわたしの力どう思う?」

「シンクの力?そうだな、俺はシンクの力はみんなの役にたってると思うぞ。人の役にたてて、人を守れる力。それがシンクの力だと俺は思う」


覚えてなくても、エイトは変わらないね。
あの時も今も同じだ〜。


「えへへ、エイトはやっぱりすごいやぁ〜」

「何がだ?」

「おしえなーい!!」

覚えてないなら教えない。エイトが忘れててもわたしが覚えていればそれでいい。

「エイトはそのままでいてね〜」

「よくわからないんだが…?」

「いいから〜、エイトは今まで通りのエイトでいればいいんだよ〜」

「あぁ」
人の命を簡単に奪う武器を嫌い、命を奪ったことと、その奪った人の痛みを覚えておくために拳で戦う強さ…。
すべてを受け止めて、わたしを救ってくれた優しさ…。


シンクちゃんはそんなエイトが今も昔も大好きなまんまだよ!!



end


―――――――――――
20000打

〜祐月様〜
大変お待たせしてしまいスミマセンでした。しかも内容がかなり捏造…。シンクちゃんは力はある程度強いとは思いますが、メイスを軽々もつほどの力はないのに、すごく力が強い設定になってしまいました。あと過去とか、エイトが武器を使わない理由も…。さらに85というか8+5?8←5?みたいな感じになってしまい、すみませんでした。私としてはエイトの可愛らしさがちょっと出せて良かったです。あと個人的には「エイトも意外と忘れん坊さんだね〜」と言わせることができて良かったです。
書いていてやっぱりこの2人いいなぁ〜と思いました。ほんと可愛らしい2人だなぁと思います。改めてこの2人のCPにハマらせてくださりありがとうございました。書いていて楽しかったです。スラスラ書けちゃいました。こんなんでよろしければどうぞもらってください。これからもよろしくしてくださると嬉しいです。

20000打リクありがとうございました!!









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