じわりじわりと、こいつの体温が伝わってくる。他のやつよりも少しだけ高い体温。こういうのを子ども体温というのだろうか。
黙って引っ付いてくるのは、正直犬みたいでかわいい。ぐりぐり頭を擦り付けてくるのが、まるでマーキングみたいだなと思う。
こいつの体温が俺の体に侵食してきて、そのうち俺のそれと混ざって分からなくなった頃、ごそごそと服の中を弄られる感覚があったのでそいつの頭を叩いた。
「いでっ」
「そこまでしていいとは言ってねーぞ」
顔を上げて俺を見たあいつの目はいつも以上に赤いし、眉は垂れ下がってる。情けない顔。自称イケメンが台無しだ。でもいつものヘラヘラした顔より、こっちの顔の方が俺は好きだ。
「…じゃあもっかいキスして」
「…勝手にすればいいだろ」
「いいの?」
「いいよ」
肯定した次の瞬間には唇を塞がれてた。と思った次の瞬間には舌が入っいた。相変わらず下手くそなキスだなと思う。相手が居ないんだから上手くなるはずもないのだけれど。
「ん……」
名残惜しそうに顔を離すこいつがつい、かわいいと思ってしまう。しょうがない。かわいいものはかわいいのだ。
そしてまた俺の首元に顔を埋めて、そのまましばらくそうしていた。
たぶん、俺も同じくらい、こいつがすきなんだろう。恋なのか愛なのかはそれはよく分からないけれど、すきに変わりはない。でもそれを言ってしまえば、伝えてしまえば、きっとこの男を縛ってしまう。優しいから、あんたとずっと一緒にいるよなんて、こいつはあの笑顔で言うんだろう。
「……すき」
「それは聞いた」
「何回でも言いたいの。すき、すきだ…」
「あーはいはい」
耳元で流される言葉が心地いい。返事は適当に、でも耳ではしっかり聞いちゃって。実はそれだけで満足だとか。本人には教えない、絶対。