ね、手握って。
にこにこと笑いながら手を取られる。もう握ってんじゃねえかって思ったけどめんどくさくなりそうだと思って口には出さなかった。
こいつは顔はかわいいけど、性格がちょっといやかなりアレなので、普通の男ならドキドキするんだろうけど、俺はそうでもない。
どういう意図があるんだろうと、違う意味で少しドキドキしているけれど。

「……今失礼なこと考えてるでしょ!」
「う、ええ?考えてねえよ…」
「嘘だあ。明らかにきょどってるし」

ほんと分かりやすいよね、と言って彼女が歩き出す。痛いからあんまり引っ張るなよ、とは思うけど、面倒だから言わない。言ったからといって何か変わるわけでもないし。

「どこ行くの」
「えっとねえ、買い物!」

なるほど、俺は荷物持ちね。

「自分の兄貴に頼めよ」
「お兄ちゃんねえ、今日はちょっとだめなんだって」
「だめって、なにが」
「今日は、だめな日」

だから何がだめなんだ、と思ったけれど、あのシスコンが妹の頼みを断るなんてよっぽどのことなんだろうと思ってそれ以上は聞かなかった。聞けなかった。

「……今日ねえ」
「うん」
「私たちが初めてみんなに会った日なんだよ」

みんなは日付にこだわらないから、覚えてないかもしれないけど。
手を握る力が少し強くなった気がした。多分、きのせい。
そうして歩きながら、彼女がぽつりぽつりと話を続ける。

「わたし、みんなに会えてよかったなあ、って。毎年思うの」
「…ふうん」
「みんな優しくて、あったかくて」

ここはひだまりみたい。
ふわり、と微笑んだ少女の顔が、純粋にきれいだなあと思った。

「…ふうん」
「だからみんなのことだいすき」
「そう」

俺もみんなのことだいすきだよ、って言ったら彼女が嬉しそうにいっしょだね、と答えた。



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