「……」 「どないしたん、名前」 忍足が話しかけてくる。今必死で抑えてんのに。ばーか。もう抑えらんないっつーの。 「………気に入らん」 「え?」 「気に入らんがって!!!!」 街中で全力でほたえた。仕方ないろ。こじゃんちイラついちゅうがやき。 原因?そらぁ氷帝メンバーと一緒に見に行った映画よ。 その映画は我が地元・高知の伝統的な祭り「よさこい祭り」をモデルにした映画やったがやけど……。 「え、何がだよ。結構いい話だったじゃねぇか」 「そーそー。跡部なんか泣いてたしなー」 「あ〜ん?何言ってやがる」 頑張って見栄張りゆうけんど、まだ目ぇ赤いで、跡部。まぁ、跡部らしいゆうたららしいがやけど。 って、跡部はどうじゃちえぇがって。 「話がえいがは認める」 「なら、何が不満なんや?」 ……聞いて後悔したち知らんで。 「方言がまずおかしいがって!!語尾に『やき』付けたらえいと思いなよ。『やき』ゆうがは、標準語で言う『だから』と一緒ながで?普通会話する時に『何とかだから』、『何とかだから』って繰り返すかえ?しかも、あの主役の女の子よねぇ、イントネーションが関西弁ぽいがって!!あらぁ、土佐弁やないで。ほんでついでやけど、地理もおかしいわ。大体四万十川から市内にチャリで行ける訳ないろうがえ。車じゃち一時間はかかる筈じゃに」 「「「……お、おぅ……」」」 ほら、やっぱり。圧倒されゆうやいか……。やき、言わんかったに。まぁ、全部言うてすっきりしたけんど。 「あぁ、それから。あたし見おったらわかる思うけんど、今時『ぜよ』らぁ言わんきね。言うがは精々じぃちゃんばぁちゃんばぁで?後はふざけちゅう時ばぁやき」 龍馬のイメージが強いがはわかるけんどね。 「……名前、方言好きなんだな」 「土佐弁ぐらいだよ?しかも、好きっていうより、間違われるのが嫌なだけだし」 (((戻った……。良かった……))) 何か安心された気がする。何だかなぁ。 *** ほたえる→叫ぶ、暴れる、騒ぐetc. 本文では叫ぶで使いました。 こじゃんち→とても そらぁ→それは あらぁ→あれは 動詞+ゆう、ちゅう→現在進行形 例)見栄張りゆう→見栄張ってる etc. じゃち→でも 〜ばぁ→〜ぐらい |