盲目笛 私はひたすらに小さくなった。 そうすることでなにかから逃れ挙げ句、消えてさえしまえるのではと。 その名前の姿は怯えた幼子と大差ない。 丸め込んだ身体がなによりそう思わせた。 しばらくすると水面の波紋のようにそこが揺れた。 波紋は大きくなったり小さくなったりと疎らだったが、最後に小さく揺れるとそこに藍が居た。 「名前…。」 「……。」 藍は名前を認識すると手を差し出した。しかし名前は踞っていて動かない。顔を上げようとしないのだ。 藍は聴こえなかったのかと推測し、自身の耳を覆う名前の手に触れた。 「っ。」 藍の手が触れたのを感じとると名前は小さく肩を竦めた。それを気にすることなく藍の手のひらは次に名前の頬を撫でる。 その直後、物凄い向かい波が藍を襲う。 触れるなとでも云うように。 なす術が無かったわけではないが藍はそのまま流されていった。 ほんの一瞬見えた名前の表情に驚きながら。 |