良いと

どこからともなく飛び交う朝の常套句。勿論私に掛けられる事はな

「よう苗字。はよ。」

…い。

「……。」

余りの衝撃に反応することが出来なかった。黒尾は私に挨拶をさらっとこなしてさっさと横を通りすぎていった。きっと朝練に行くんだ。

「………おはよ」

去っていく背中に小さく挨拶を返せば一瞬振り向いた黒尾は笑っていて。
足は止めないものの「おう。」と短く返事をされた。


別に挨拶を返したことに他意はない。ただ珍しく私に声をかけようなんて人が居たから気まぐれで返しただけ。なのにこの笑顔ときたら憎たらしい。

奴は何処か私を子供扱いするのだ。
たまに頭を撫でてきたりと。

思い出すだけで不快だ。
そんな気分で教室のドアを開けたものだから少しばかり勢いが強くて音が響いてしまった。
クラスの子達は気にするって言っても、"私が何かをした"ことに反応を示す。誰かがどんな馬鹿をやった所で大した波紋は生まれないだろう。特に負の波紋は。

その証拠に騒音に紛れてヒソヒソ聴こえる。否きっと私に聴かせているのだ。

総じて「感じ悪い」しか言ってないだろうし気にするだけ無駄に近い。
どうせ卒業したら2度と会うことなどないのだから。

「よ。お前もうちょい愛想よくしてみたら?」

いつの間に朝練から帰ってきたのか黒尾が何か言っている。かといって話し相手が私とは限らない筈。何より面倒見の良いお兄さんみたいに話しかけないで欲しい。
とりあえず黒尾が居ない方に顏を背けた。ふん。今度は私からちゃんと話しかけるんだ。


それからすぐ授業開始を告げる鐘は鳴り響いた。
隣の黒尾は爆睡してた。






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