『普通』の幸せ 02

※あんず視点

 今日は来月に控えたKnightsとTrickstarの合同クリスマスライブの打ち合わせのため、私はKnightsが貸し切っているスタジオに顔を出していた。

「わははっ☆ ひっさしぶりーでもないか、このあいだぶり! あんず!」

 月永先輩が『うっちゅー☆』という彼らしい挨拶をしてくる。
 Trickstarのメンバーが何かとKnightsのメンバーと関係が深いこともあって、私もKnightsのプロデュースに関わる機会が多い。
 だからKnightsの面々とは頻繁に顔を合わせていたが、最近予定が立て込んでいてしばらく顔を出せていなかった。

「お姉さま、こんにちは。お元気にされていましたか?」
「司くん、こんにちは。元気だったよ。あ、このあいだのライブ映像見たよ。司くん、すごくよかった」
「本当ですか? 嬉しいです」

 にこにこと司くんは嬉しそうに笑ってる。そんな司くんがかわいくて頭を撫でていると、嵐ちゃんが私の肩からニョキッと顔を出した。

「あらぁ、あんずちゃん。司ちゃんのことだけ? アタシのことも褒めてほしいわぁ」
「嵐ちゃんは言うことないくらい完璧なんだもん。いつも通り、とっても綺麗だった」
「ヤダ、嬉しいこと言ってくれちゃって」

 嵐ちゃんはキャピッと嬉しそうにはしゃいで、私の肩をちょんちょんと突いてくる。行動の女子力は本当に見習わなければいけないレベルだ。

「ちょっとぉ……いつまで喋ってんの。あんず」

 瀬名先輩の少し不機嫌な、かまってほしいような声がとんでくる。今日の打ち合わせは主に月永先輩とセットリストや演出の確認をする予定だったけど、月永先輩だけじゃ頼りないからと瀬名先輩がメインで仕切ることになっているのだ。

「泉ちゃんってばヤキモチ?」
「うるさいよ。オカマは黙ってレッスンしな」
「ひっどーい! 司ちゃん慰めてー」
「いえ、鳴上先輩! 瀬名先輩の言うとおりそろそろLessonを始めましょう」

 真面目な司くんの発言に嵐ちゃんは肩をすくめつつ、ストレッチを始めた。

「あれ……凛月くんがいない」
「くまくんなら、別室でレッスンしてるから気にしなくていいよ」
「別室……?」

 私がキョトンとしてみせると、瀬名先輩は小さく息を吐いて言った。

「衣更のことで……あんたに顔合わせづらいんでしょ」

 そう言われて、少し納得する。
 真緒くんのこと、ほとんど凛月くんに押しつけてしまったし。……私の勝手なワガママでたぶん一番凛月くんが苦労してるんだと思う。
 謝りたいけど、謝ったところでどうしようもない。
 凛月くんの優しさに、私は甘えてる。

「あんず」

 そんなことを考えていると、瀬名先輩の手が私の頭の上に乗った。

「アイドルの前で情けない顔するなんて、プロデューサー失格だよぉ。しっかりしな」

 顔を上げると、堂々とした顔の瀬名先輩。
 綺麗で、まっすぐな瞳と視線が交差する。

「はい」


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