夢下限恋愛 | ナノ



『共に堕ちて』


※if この世界が終わるまで、呪詛師として貴方のそばに。


「ケガは、ないかい? ……皆実」

 部屋に戻ってきた傑さんが、ベッドに腰掛ける私のことを心配して、そう声をかけた。
 傑さんにそんな顔をさせたいわけじゃないのに、その原因を作ったのは私だった。

 困らせたかったわけじゃない。悲しませたかったわけじゃない。
 ただ、買い足したいものがあったから、ほんの少しだけ、誰にも言わず一人で街に出てしまった。……そうして、数人の男の人たちに囲まれてしまって。
 私の呪いにアてられて狂った男の人たちが私を襲って、意識を無くす者もいれば、涎を垂らしながら虚な目で私を犯す者もいて。

 最後、その汚い欲の塊をナカに鎮められそうになった直前で。
 助けにきてくれた傑さんが、非呪術師である彼等を全員殺してくれた。
 私の呪いのせいで、もう普通の人間には戻ることのできない彼等を、みんな葬って。

 私のせいで、その手を汚してしまったの。

「……夏油様」

 あえてそう呼んで、ごめんなさいと謝れば。
 先ほどまでの歪んだ顔を収めて、優しい笑顔を私にくれた。

「人祓いはしてある。……堅苦しい呼び方はやめてくれ、皆実」

 私の隣に腰掛けて、傑さんは私のことを抱きしめてくれる。

「君は謝らなくていい。……怖かっただろう? 駆けつけるのが遅くなって……すまない」
「傑さんは……悪くない、です。……私が言いつけを破って…一人で外に出たから」

 ずっと言われていた。
 私は自分の意思とは関係なく、誰かを呪ってしまうから。
 一人で外に出てはいけない、と。
 美々子でも菜々子でも、ミゲルでもいい。そこにいる誰かと一緒に外に出ると。
 傑さんとともに生きることを誓ってからずっと、そうしてきたのに。気を抜いて、その約束を破った結果がこれだった。

「自分を責めてはいけないよ、皆実。全部……あの猿たちが悪いんだから」

 冷たく彼等を否定して、傑さんは私の頬を撫でた。
 人を殺めることを知らないような優しい手。
 でもその手は、私たちを守るために、何度も血に染まってる。

「あともう少し。……君を呪うすべてを、私が祓うよ」

 私たちを笑顔にするために、傑さんは戦っている。

 非呪術師を全員皆殺しにするための、百鬼夜行。

 その日は着実に近づいていた。

「無理はしないで…くださいね」
「ああ。……皆実がいれば、勝率は一気にこちらに傾く。そこに乙骨憂太を抱き込めば…負けはありえない」

 百鬼夜行が終われば、私も傑さんも……きっと救われる。
 ちゃんと心の底から笑えるようになる。

「傑さん…」

 そう信じて、私は縋るように、傑さんの唇に自らの唇を重ねた。

「……ん…皆実」

 いつものように、傑さんに教えられたキスを繰り返す。
 徐々に深くなるキスを、やめずに続けていたら。
 不意に傑さんが、私の肩に触れた。

「……傑、さん?」
「ごめんね。このままだと…いつもみたく君を抱いてしまいそうでね」

 苦笑する傑さんに、私は首を横に振ってそれを強請る。

「大丈夫、です」
「さっきあんなことがあった後だ。……無理はしなくていい」
「無理じゃ、ないです」

 ほんの少し声量を上げて、訴えかけるように傑さんに縋った。

「……傑さんに、触ってほしい…です」

 そう口にして、傑さんの唇に自分の唇を再び押し当てた。
 口を開けてほしくて、舌先でその唇を舐めたら……小さなため息とともに傑さんが薄く口を開けてくれて。

「……いいのかい? ここから先は止められないよ?」
「止め、ないで。……傑さんが、欲しい…です」

 傑さんが私だけに与えてくれる快楽を、いつだって求める。
 美々子も菜々子も知らない……私だけが知ってる傑さんの顔を見たいの。

 ずっと、見ていたいの。

「……っ…すごい殺し文句だ」

 優しく笑って、傑さんは私の髪を撫でる。
 そうして私の後頭部をしっかり押さえて、傑さんがこのキスの主導権を奪った。

「…っ…あ……っ…ん…ぅ」

 吐く息すら奪うように、舌を絡めて。
 傑さんは私の頭を支えたまま、私を優しく押し倒した。
 互いの体勢が変わっても、傑さんは私の口の中を舌でなぞり続けて。
 私の前開きのワンピースを脱がしていく。

「…ん……っ…ぁ」
「……皆実」

 キスをしたまま、私の着ているものをすべて脱がして。
 傑さんは……唇を触れ合わせたまま尋ねてくれる。

「このまま唇にキスするのと、……他の場所にキスするの……今の君はどちらが好きかな?」

 戯けたように笑う顔も、苦しいくらいに妖艶で。
 もっとその顔が蕩けていくのを見たくて。

「もっと……いろんなところに…キスして」

 強請る言葉は決まっていた。

「……私の身体中に、傑さんの印を残して」

 掠れる声で告げれば、傑さんは「了解」と大人の笑みを向けて。
 最後にまた私の唇を舌先で舐めた。
 そしてそのまま滑るように顎から首筋へ、そして鎖骨まで唇で撫でるように下りて。

「……ん…っ…ぁ」

 傑さんの唇が私の桃色の実を齧る。
 いきなり与えられた刺激に身体が跳ねても、傑さんはそれを揶揄することなく、「可愛いよ」なんて言って私の心を煽った。

「声も顔も……胸も……私にかける言葉のすべても…全部……可愛いよ…皆実」
「……ぁ…んっ…あ…ん…ぅ…っ」
「ほら……声を聞かせて。堪えないで」

 優しすぎる声が、それだけで私の身体中に熱を回す。
 傑さんは私の身体に焦がすほどの熱を残していくのに、傑さんは余裕そうな顔のままで。

「…す…ぐる……さん…っ」
「……っ…こら……悪いことをしてはいけないよ」

 膝を擦って、傑さんの欲の塊を確かめようとしたら、そんなふうに咎められる。でも触れたその塊はしっかりと硬く大きくなっていて。

「傑さんの……早く……欲しい、です…」

 手を伸ばして、傑さんの着物に触れる。そうしたら傑さんがわずかに眉を顰めて。
 私の手で変わる傑さんの表情が、こんなにも愛おしい。

「……皆実っ」
「傑さんも……早く…挿れたい……でしょ?」

 下着の中、窮屈そうに硬く反り上がったソレに触れて取り出せば、傑さんももう私のすることに抗うことはしなくて。

「まだ……君のナカを慣らしていないだろう?」
「慣らさなくても…大丈夫です……から。もう……早く……傑さんのこと欲しくてたまらなくて……」

 こんなに濡れてるの、って。
 傑さんの手を私の蜜壺に導いたら、傑さんは困ったように眉を下げた。

「痛かったら……ちゃんと言うんだよ」
 
 壊れたみたいに溢れる私の蜜を、指で絡めとりながら。
 それでもささやかに、私の蜜口を拡げるように、2本の指を私のナカに埋め、数度開いては閉じて。

 でもやっぱり、この刻むような優しすぎる刺激じゃ私の身体は満足できなくて。

「……傑…さん……っ」
「挿れるよ……皆実」

 傑さんの背中に腕を回して、傑さんが動きやすいように脚を開く。
 痛みなんて少しも感じない。
 だってもう、私のナカは傑さんの形を覚えてるの。
 ぽっかりと空いた穴を埋めてくれるのを、いつだって待ってるの。

「…ぁ……んっ、あ…」
「力…抜いて。……そんなんじゃ…君も私も、すぐに果ててしまう」
「だっ…て……傑さん…の……はいった…だけで…きもち……いい、の…」

 挿れられただけで頭の中が真っ白になる。
 大好きで、大好きで……仕方ないの。
 どんなに求めても、この気持ちが収まることなんてないの。

「傑……さん……っ…あ…んっ……」
「は…ぁ……っ…」

 気遣うように優しく、でも刻み込むようにしっかりと。
 傑さんの肉棒が私のナカをいろんな角度で暴いていく。

「……ん…ぁ……っ…傑、さん……ぁ…きもち…い、ぃ…っ?」
「ああ……すごく……良くて……っ……壊して、しまいそうだ……」

 そんなことありえないのに。
 こんなに優しく抱かれて壊れるはずなんかないのに。

 でも傑さんは本当にそれを恐れているみたいに、私の存在を確かめるようにギュッと抱きしめながら抱いてくれる。
 
「……は…ぁ…皆実…っ……愛しているよ……君のことを……誰よりも」

 求める言葉を口にして、傑さんが私の唇にキスをする。
 乱れた呼吸を、もっともっと苦しくするキスを。

「……わた、しも……愛して…ます……っ…傑…さんと……ずっと…ずっと…一緒に」

 何があっても、ずっと一緒に。
 もしも貴方がこの世からいなくなるなら、私は貴方のいる世界を追いかけて、この世から一緒にいなくなる道を選ぶよ。

「…ぁ……っ…う…ぁ…んんっ…ぁ」

 傑さんのことを、ひと時も忘れられないほどに。
 傑さんが私のことを、ひと時も忘れられないように。

「皆実……っ」

 私はどんな世界でも……貴方と共に堕ちていく。



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