Missing PastA

「竜胆。……莉亜の身体、ちゃーんと抑えてろよ」

 真っ暗な部屋の、大きなベッド。
 独特な華の香りは、誰のものでもなく、昔から知る2人の香り。

「ちょっとー、竜胆くん聞いてるぅー?」

 蘭の命令を聞いても、竜胆は莉亜を正面から抱きしめたまま離そうとしなかった。

「……当然のように兄貴が先に抱く流れなの納得いかねぇんだけど?」
「え? なになに、いつも一緒にヤるとき文句言わねぇじゃん、どしたぁ?」
「……莉亜は別件でしょ」

 莉亜の身体を挟んで、口論をする。
 耳を塞ぎたいのに、竜胆にきつく抱きしめられた身体はそれすら叶わない。
 
「竜胆が挿れた後は緩くなっからむーり
「……それ言うなら兄貴の後に抱くと感度悪くなるから嫌なんだけど」
「そんな拗ねんなってぇー」

 ケタケタと笑いながら、蘭は綺麗に結った長い髪を解いて、竜胆から無理矢理引き剥がした。
 そうして莉亜の背中を竜胆の胸板に押しつけて、こじ開けるように莉亜の脚を開かせた。

「ちゃんと抱く前に……他のヤツのきったねぇ汁掻き出さねぇとなんだから」

 蘭の冷たい瞳が、莉亜の濡れた秘部を眺めて。
 軽蔑するように、その長い指が溢れ出る愛液を絡め取った。

「中出しなんかしてたら、冗談抜きで殺してたけど。……命拾いしたなぁ、あの雑魚」

 精液の混ざらない透明な蜜を……その質を確かめるように、蘭は親指と中指で捏ねて、銀色の糸を伸ばしてみせた。

「あんなのに抱かれて、こんなんなったの? オマエ」
「や……んぅっ」

 問いかけながら、蘭は躊躇なく莉亜のナカに中指を挿しこんだ。

「……きっついナカで、あんな雑魚の咥え込んだ?」
「や……め、て」

 顔を背ければ、背後の竜胆が莉亜の頬に触れた。
 そうしてそのまま、貪るように莉亜の唇を食んで、わずかに開いた唇の隙間から舌を忍び込ませた。

「り……ぅん、んぁ」
「全部、忘れろよ……莉亜。……オレたち、以外の……ことなんか……覚えんな」

 途切れる呼吸は、苦しげな声をさらに悲しく響かせる。

 頭から流れる血が額から頬を伝って。
 唇へと流れた真紅の液体が唾液と混ざりあって、口づけを血で濡らした。

「他のヤツに……触らせたとこ……全部、触らせて」

 言いながら、竜胆は脱げかけの莉亜の制服を乱雑に剥ぎ取って、ベッドの下に落とす。
 制服の下、たくし上げられたままの下着は莉亜が寸前まで情事の最中であったことを、蘭と竜胆に如実に思い知らせた。

「へぇー……乳首真っ赤じゃん。そんなになるまで弄られた?」

 新たな問いを莉亜にぶつけて、蘭はナカに挿れる指の数を増やす。
 同時に、目の前でその輪郭を露わにする莉亜の乳首に、わざとらしく息を吹きかけた。

「んん…ぅ」
「あーあ……オレの指ぎゅうぎゅうにしめつけて……処女だったくせに、すげぇエロいじゃん」
「莉亜……オレの触り方……覚えて。他のヤツに……触られたことなんか……全部忘れろ」

 キスを繰り返しながら、竜胆は莉亜の胸の頂を優しく捏ねて、押しつぶす。
 柔らかい肌を堪能するように掌で乳房を揉んで、莉亜が身体を捩る度、頂を愛でた。

「こんだけシーツ濡らせば……ほとんど掻き出せてるだろーけど」

 蘭の指がとろりと抜けて、糸を引く。
 長い指から滴り落ちる愛液が、シーツの上に水溜まりを作って、ぴちゃりといやらしい音を立てた。

「……っ、ふぁ……や、っぁ」

 そうしてあてがわれた、蘭の肉棒が慣らすことも焦らすこともなく、貫くように奥へと突き刺さった。
 電撃が走るみたいに、身体中が熱く、ビリビリと心地よい痛みを残して。

「あぁ…っ…ん、んぁ……っ、竜、胆っ」
「兄ちゃんのだけで……気持ちよくなんのは、やめて」

 背中を支えていた竜胆の身体がふと離れて、浮いた莉亜の身体がそのままベッドに横たえられる。
 竜胆の膝の上に頭を乗せて、竜胆は莉亜の頬に自らの塊を擦り寄せた。

「……っ、な、に」
「うーわ……いつもよりだいぶデカくなってんじゃん。かーわい

 莉亜が見た男の人の性器は、先ほどの『彼氏』だった男と、蘭と……そして竜胆のだけ。
 その誰と比較しても、竜胆の肉塊はずっしりとその熱を膨らませていた。

「……からかうなよ。兄貴だって、いつもは前から抱かねぇじゃん」
「トーゼン。……バックのほうが、気持ちぃーじゃん? でーも……莉亜がオレで、感じてる顔を…見ねぇのは……もったいないだろ?」
「あ…んっ、あぁ……蘭…っ、や…ぁ」

 さっきの男のモノでは、一度も届かなかった最奥に何度も何度も突き刺さる。
 苦しいはずなのに、どうしようもなく心地よい……快楽の波がどんどん莉亜の理性を追い詰めていた。

「莉亜……次…オレの、挿れるから。……触って…形、覚えて」

 掴まれた手が、そのまま竜胆の熱に導かれる。
 逃がさないように上から手を添えられて、片手でやっとのこと収まりきるほどの熱を優しく握らされた。

「ん……そのまま、こうやって……上下に…そう、すげぇ……上手」

 竜胆の手に導かれるまま、手を動かして。
 上を見上げれば、熱に濡れた竜胆の瞳が莉亜だけを真っ直ぐに見ていた。

「竜胆の…ちゃーんと感じれるように……もっと、拡げとこーな」
「あ…ぅ…っ、はぁ…っ」

 竜胆の熱に気を取られれば、すぐに意識を引き戻される。
 腰が浮くほどに膝裏を抱えられて、蘭の肉茎が根元まで莉亜のナカに沈む。蘭の快楽に濡れた声すら、自分の嬌声がかき消して。

「あぁ…最っ高……オレの、全部呑み込んじゃってんのに……きもちよさそーな顔して」
「う……ぁ…っ、やだ…っ、だ、め…っ竜胆、た、すけ…て」
「ん……オレの、痛くねぇように……するだけだから……いっぱい、兄ちゃんで感じて。……莉亜」

 根元まで突き刺したまま、蘭は腰を押し付けるようにぐりぐりと揺らして。
 ナカを掻き回すような動きが、無理やりに莉亜の奥を拡げるのに、その痛みすらも気持ちよくて声にすらならない。

「あー……イ、きそ」
「莉亜……オレのこと、見てて」

 揺れる身体が苦しいのに、その苦しみすら気持ちいいと思えるほどに、感覚が壊されて。
 果てた身体から滴り落ちる白濁の液が、まるで溢れ出る涙のようにシーツを濡らした。

「へばんなよ? 莉亜。まーだ、終わんねぇんだから」

 息を整えることもできないまま、莉亜の身体が抱きかかえられて、今度は蘭の膝の上に寝かされた。

「兄貴……出しすぎ」

 莉亜の秘部から溢れる蘭の精液を見つめて、竜胆は呆れたように声をこぼす。
 それでもその精液を拭き取ることはせずに。

「痛かったら……言って」

 竜胆は蘭の欲すらも潤滑油にして、莉亜のナカにゆっくりと自らの膨張した熱を押し進めた。
 呼吸を止めるほどの圧迫感に、思わず身体が強張って。
 その刺激に、竜胆が眉を寄せた。

「……っ、莉亜……力、抜いて」
「あはっ、やっさしぃー……いつもは痛がっても無理やり突っ込むのに」
「兄貴は……ちょ、っと、黙って」

 深呼吸を繰り返しながら、竜胆はゆっくり、ゆっくりと莉亜のナカにその熱を埋めていく。
 気を抜けば息の仕方すら分からなくなるほどの、熱の塊をその身に受け止めて。
 莉亜が歯を食いしばろうとしたら、それを止めるように、蘭が欲に濡れた塊を莉亜の唇に押し当てた。

「口寂しぃーだろ? ……オマエのとオレのでとろっとろになってんの、舐めて?」

 汗と血で濡れた莉亜の頭を優しく撫でてくれる。
 頭の傷の痛みなんて、莉亜にはもう全然感じることができなかった。

「舐め……わか、な…っ」
「舌出して……んで、飴舐めるみたいに……そう……あぁ……ぁはっ、かわいぃーねぇ……オマエほんと」

 小さく出した舌先で、蘭のモノを舐めれば、柔らかく縮こまっていた塊が再び熱を灯して、硬くその感情を張り詰めさせる。
 見上げた蘭の顔が、いつになく余裕をなくしていることが……莉亜の身体を余計に興奮させた。

「莉亜……ぁ、今シめんな…っ」
「無理、だよなぁ…? ……オレの舐めて、興奮してんだから」
「……っ、ぁ……やっ、と全部」

 身体を裂くような水音とともに、竜胆の大きな熱が莉亜のナカにすべて埋まる。
 他に何も受け入れられないくらいに、ぴったりと収まったのに、それでも竜胆の肉塊は莉亜のナカを押し拡げるようにその膨らみをさらに大きくした。

「や……っ、も…くるし、っ」
「んじゃあ……上の口も、ちょっと苦しくなろーな

 開いた口の中に、蘭が反り勃った熱をゆっくりと押し込んでくる。
 ゆっくりと、けれど……際限なく、どこまでも。

「……っ、う、けほっ……げほっ」
「あー……喉の絞まりもいぃーのな? 莉亜」

 咥えきれない熱を、蘭は無理やりに根元まで押し込もうとしてくる。莉亜の口のナカをすべて満たして尚、その奥へと突き進んで。

「兄貴……っ、イラマ…莉亜にはキツい、って」
「えぇー? オマエが、そんな顔するくらい、ナカ…絞めてんのに?」

 蘭の腰が揺れるたび、莉亜の肉壁が竜胆の熱を押し潰すように収縮を繰り返す。 

「こんな……、絞められ、たら……もたねぇ、から」
「竜胆、そんな早漏だったぁ?」
「……っ、冗談じゃ、なくて……マジでっ!」

 堪えるような声が大きく響いて、竜胆の律動が荒くなる。規則正しく莉亜を揺らしていた身体が、不規則に乱暴にも思えるくらいに莉亜の身体を揺らす。

「そんなに……突いたら、それこそ…イラマになんじゃん?」
「無、理……っ、もう…1回イきたい……っ、ちゃんと……莉亜が、気持ちよくなれる、まで……抱く、からっ」
「あはっ……んじゃ、オレも……っ」

 肌がぶつかるたび、視界に白い霧がかかって。
 チカチカと何かが煌めくように莉亜の目を奪って。

「たっくさん……気持ちよくなろうな」

 それが、すべての終わりで――すべての始まりだった。

 その日から毎夜繰り返された情事の日々が、次に終わったのは……2人が二度目の少年院に入ったとき。

 それから10年、莉亜は2人から逃げ続けて。

「行き止まりだよ、莉亜」

 そうして再び、2人の檻に閉じ込められたのだ。

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