雨後 01

10 雨後



※この章では五条悟以外のキャラとのR18が含まれますので苦手な方はご注意ください。



※???視点

 街中を、呪霊を引き連れて五条袈裟を着た男が歩く。

《わざわざ貴重な指1本使ってまで、確かめる必要があったかね。……宿儺の実力》

 不機嫌な、その声を聞き取った者は、おそらくこの通りに一人もいない。
 その姿を、ちゃんと視認しているのは、この五条袈裟の男だけ。

「中途半端な当て馬じゃ意味ないからね。それなりに収穫はあったさ」
《フンッ、言い訳でないことを祈るぞ》
《$"$%%#%+£&%》

 そっけない返事をする火山頭の呪霊に、顔から樹木を生やした呪霊が何事かを告げた。
 それは理解不可能な言葉の音だったが、会話をしている彼らの頭には理解可能な言葉として浮かび上がる。

《貴様は喋るでない! 何を言ってるか分からんのに内容は頭に流れてきて気色悪いのだ!》

 憤慨する呪霊を背後に従えて、男はファミレスの中に入る。

「いらっしゃいませ。一名様のご案内でよろしいですか?」
「はい、一名です」

 男の背後に立つ3体の呪霊の存在を、店員も認識してはいなかった。
 店員は当然のように1-2人用の席に案内するが、男は「4人掛けの席にしてもらえないか」と柔和な笑みで懇願する。
 その笑顔に絆された定員は、何の疑問も覚えず、男を4人掛けのテーブルへと案内した。
 店員が席から遠ざかると、男はできる限り静かに、呪霊へと声をかける。

「つまり君達のボスは今の人間と呪いの立場を逆転させたいと、そついうわけだね?」
《少し違う。人間は嘘でできている。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある》

 男の問いに対し、火山頭はコツッと指を机にぶつけて自らの意見を述べた。

《だが負の感情、憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ、真に純粋な本物の人間≠ネのだ》

 今にも噴火しそうな感情の熱を、内に溜め込んで、火山頭は告げる。

《偽物は消えて然るべき》

 今にも人類を鏖殺してしまいそうなほどの迫力で、火山頭は言葉を紡ぐが、男は一切怯む様子を見せない。
 それどころか、その顔に薄く笑みを浮かべていた。

「……現状、消されるのは君達だ」
《だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?》

 火山頭の問いに、男は指を2本立てて答える。

「戦争の前に2つ条件を満たせば勝てるよ」

 焦らすように少し間を置いて、男は静かに口を開いた。

「五条悟を戦闘不能にし、両面宿儺・虎杖悠仁……そして、綾瀬皆実を仲間に引き込む」
《誰だ、その綾瀬とか言う娘は》

 知らぬ単語を耳にして、火山頭の表情が歪む。
 けれど、その問いも想定内だったのか、男は躊躇なくその問いに対して答えを示した。

「呪いの媚薬……宿儺の餌だ」

 男は何を考えているのか、クックッと楽しげに喉を鳴らす。
 その笑いの意味も、言葉の意味も理解できず、火山頭はさらに表情を歪ませた。

《言ってることがわからん。それに、何を言うかと思えば……。死んだのであろう? 虎杖というガキは》
「さぁ、どうかな」

 次の問いに、男は答えを濁した。
 けれど、虎杖悠仁の生死自体は呪霊にとっても大した問題ではなかったようで、呪霊の思考は【現代呪術師最強】へと移る。

《五条悟。やはり我々が束になっても殺せんか》
「ヒラヒラ逃げられるか、最悪君達全員祓われる。『殺す』より『封印する』に心血を注ぐことをオススメするよ」
《封印? その手立ては?》

 男の言葉の真意を計りかねて、呪霊は少し苛立った声音で問いかける。
 それでも男は飄々とした態度を崩すことなく、こう告げた。

「特級呪物、『獄門疆』を使う」

 瞬間、呪霊の頭が泡立ち、その熱を沸かし始める。

《獄門疆……? 持っているのか! あの忌み物を!》

 あまりの興奮に、沸騰した蒸気が周囲の温度を急激に上昇させていく。

「漏瑚、興奮するな。暑くなる」

 男は尚も冷静に言葉を紡ぐ。
 しかし、この状況も周囲の人間からは五条袈裟を着た男が一人、4人掛けのテーブルを占領しているようにしか見えない。
 いまだ注文をしないでいる五条袈裟の男に痺れを切らした、愚かな店員がそのテーブルに近づいた。

「お客様ご注文はお決まりですか?」

 その言葉を言い終わる前に身体が燃えて焦げ腐る。
 周囲から上がる悲鳴に、五条袈裟の男は表情を歪ませ、興奮状態の呪霊を睨んだ。

「あまり騒ぎを起こさないでほしいな」
《これでいいだろう》

 興奮冷めやまない呪霊は、指を2本突き立てて客全員を燃やし始める。
 各所で炎上する煙を吸い込んで、男は少しばかりむせてしまった。

「高い店にしなくて良かったよ」

 男がむせることなど全く気にも留めず、興奮した声音のまま火山頭が問う。

《夏油。儂は宿儺の指何本分の強さだ?》
「甘く見積もって8.9本分ってとこかな」

 その答えに、呪霊は満足げな笑みを浮かべた。

《充分。獄門疆を儂にくれ! 蒐集に加える。その代わり……》

 身の程を知らないその呪霊はニヤリと歯を見せて笑い――。

《五条悟は儂が殺す》

 ――その場にいた、すべての非呪術師を焼き尽くした。



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