反魂人形 07

 どんなふうに旅館まで帰ってきたか、もう思い出せない。

「五条先生……」

 広いベッドの上、私は五条先生の膝の上に乗っている。
 さっきまで五条先生と家族風呂に入って温泉に浸かっていたはずなんだけど。
 温泉が心地よかったって記憶さえも、曖昧なの。
 昨日とは打って変わって、温泉に浸かっている間、五条先生が全然私の身体に触ってくれないことがもどかしくて。
 互いに温泉を満喫できるはずの空間だったのに、私は全然落ち着くことができなかった。

「皆実」

 そんな私を見透かしたように、温泉から部屋へ戻ると、五条先生が私をベッドに導いてくれた。

「ダメじゃん。せっかくの温泉なのに全然安らげてなかったでしょ」

 裸の五条先生がそばにいて、安らげるわけない。
 でもそんな文句を口にする時間すら、惜しくて。

「……ぅ…ん」

 私は五条先生と口付けを重ねていた。
 角度を変えて、何度も。昨日お預けされた分と、これから訪れる『五条先生と会えない時間』の分。
 私の身体の中を、五条先生の呪力で満たしたくて。
 舌を絡めたのは私の方。

「……かわいいよ……皆実」

 甘い言葉に刺激されて、私の呪力が溢れかえる。
 毒に等しい私の呪いを受け止めて、五条先生は尚も優しく私の頭を撫でてくれた。

「キスの先……始めてもいい?」

 待ち侘びてる言葉に、頷いて返す。
 そうしたら、五条先生がキスをしたまま私の胸へと手を下ろした。
 五条先生の手が浴衣の上から私の胸に触れて、五条先生が小さなため息を吐く。

「……なんでブラつけてないの?」

 私の胸との仕切りは浴衣の布一枚だけ。
 五条先生が困り顔で私を見上げる。その瞳は微かに熱を帯びて濡れていた。

「……もう…寝るだけ…だと思って」
「嘘。……いつも寝る時、ブラつけてるじゃん」

 私のヘタクソな嘘を簡単に暴いて、五条先生は私の胸を優しく掌で包み込む。やわやわと形を確かめるように触って、五条先生は私の耳元に顔を寄せた。

「正直に言いなよ……皆実」
「…っ…ん…ぁ」

 囁き声と、咎めるようにつねられた胸の蕾が、私の身体を震わせる。
 襲いくるもどかしい刺激に、私の理性は簡単に音を上げて。

「……五条、先生に……早く…触って……もらいたく…て」

 視線を少し横に逸らせば、私の耳元に顔を寄せた五条先生と目が合う。
 五条先生の瞳を見ただけで、熱が身体中を駆け巡るの。

「もう……全然…待てないです」

 言葉に任せて、私は自ら浴衣の衿をはだけさせた。
 衿が緩んで、私の胸が中から溢れるように顔を出す。
 五条先生のくれたリングが揺れて、五条先生の喉がゴクリと鳴った。

「……マジでたまんないんだけど、ソレ」

 五条先生は私を膝の上に乗せたまま、私の首筋に唇を寄せる。
 五条先生の手が私の胸に直に触れて、形を変えるように強く揉みしだいた。

「優しくしたいのに……皆実エロすぎ」
「あ……ぅ……ぁ…っ……ん」
「浴衣……着てるだけでも…エロいのに……破壊力ヤバいんだけど……」

 私の首筋に舌を這わせながら、五条先生は言葉を続ける。
 紡ぐ言葉に重なる吐息が、私の首を掠めて。
 ぬるりと五条先生の舌が触れた場所に、小さな痛みが残った。

「……首、見えちゃ…う」
「見せつけてよ。……僕のだって」

 五条先生はそう言って私の鎖骨に微かな痛みを重ねる。
 服から見え隠れしてしまいそうなところまで、鎖骨の至る所が五条先生の痕で赤く色づいた。

「ハハ……ッ……首輪の周りに…僕の痕がたくさんついて……皆実の身体、僕でいっぱいになってる」
「ん……ぅ」

 満足げに私の鎖骨を痕だらけにして、五条先生の顔がさらに下降する。

「ひゃ…ぁ……っん」

 たどりついた胸の頂を五条先生が転がすように舐めて、空いてる手が私の下腹部へと伸びる。

「……残念、こっちはちゃんと履いてたんだ?」

 五条先生が乳首から唇を離さずに、そんなことを呟く。
 もし五条先生が部屋に戻っても抱いてくれなかったらって考えて、念のためにショーツだけは履いていた。でも……。

「でも……履いてる意味、ないじゃん」

 クスクスと笑いながら、五条先生がすでにぐっしょりと濡れた私のショーツに触れる。割れ目を確かめるようになぞって、私の蜜をさらに染み込ませた。

「……っ、ぅ」
「ねえ、皆実。コレ脱いで……脚広げて見せてよ」
「や……ぁ」
「えー……このまま脱がさずに触ってほしい?」
「……だ、め」
「どっちか選んで」

 強い口調で言って、五条先生が私の胸を噛む。
 その強烈な刺激に背中が反って、私の口から高い声が上がった。

「早く選ばないと……胸だけでイかせちゃうよ?」

 本当に胸だけで絶頂に連れて行かれそうで、怖くて。
 五条先生を受け入れないまま、意識を飛ばしたくなくて。
 私は五条先生の膝の上からお尻を浮かせて、ショーツを脱ぎ捨てた。

「……あー…マジでヤバい」

 五条先生の肩に手を置いて、そのまま背を反らす。
 膝を開いて、五条先生に私の秘部が見えるように、重力に身体を預けた。
 五条先生の瞳に、私の淫らな蜜壺が映ってる。
 その事実が、私の呪いを沸騰させて、蜜の色を濃くした。

「僕の……浴衣越しに、皆実ので濡れちゃってるね」

 浴衣の下、五条先生の膨らみが私の秘部に擦れて濡れてる。

「……皆実、僕の触って?」

 私の秘部を直に撫でながら、五条先生が私に囁いた。
 それは命令なんかじゃなくて、あくまで私の意思を尊重したお願い。
その優しさが、嬉しくて。
 拒否する理由なんて、一つもないの。
 むしろそうすることを望んでいたみたいに、考えるよりも先に私の手は五条先生の昂りに伸びていた。

「……っ」

 五条先生の熱の先端を、掠めるようになぞって。
 すでに五条先生から溢れてる先走りを指に絡めながら、その肉棒を撫でた。
 触れる指先に呼応するように、五条先生の吐く息が荒くなる。

「……先生……っ、ん……きもちいい…っ…ですか?」
「うん……めちゃくちゃ……きもち、いい」

 五条先生が私の肩に唇を這わせて、尋ねてくる。
 肩をチュッと吸われただけでも、私の身体は震えてしまう。

「……っ…や…ぁ…っ」
「痕つけられたくない?」
「……あ…ん……もっ、と…つけて…くだ、さい」

 素直に溢れた言葉に、五条先生の身体がビクッと跳ねる。
 同時に手にしていた肉棒がまた熱と質量を増した。

「……触りながら…煽んな、バカ」
「ちが……ぁ…それ……だめっ」

 五条先生の指先が、私のナカにわずかに埋まる。
 すべてを埋めずに、五条先生の指が蜜壺の入り口を広げるように動いた。

「皆実……手、休めないで。……気持ちいいから」
「だ……って…五条…先生のせい……で、うま…く…触れ…な…ぃっ」

 五条先生が与える快感が強すぎるから。
 気づいたら身体が快楽の波に飲まれて、手の動きが止まっちゃうの。

「でも……ちゃんと広げないと……今日の僕、皆実のナカ裂いちゃいそうだから」

 苦笑して、五条先生が私にキスをする。
 私の唇ごと食べてしまいそうなキスが、私の理性をどんどん壊して、五条先生の熱を擦る刺激を強めてしまう。

「……っ…ぁ…皆実」

 吐息まじりに囁かれる名前が、こんなにも嬉しいの。
 五条先生のモノは、もう私の片手じゃ握りきれないくらいに大きくなっていて。
 こんなのがちゃんと入るのか不安なはずなのに、その巨大な熱が欲しくて欲しくてたまらないの。

「先生……っ…もう…大丈夫……です、からっ」

 懇願するように言って、私は五条先生の熱を私の秘部にあてがう。
 五条先生の指で掻き出される私の蜜液と、五条先生の先走る薄液が混ざり合うけれど。
 五条先生の熱をそこに埋めようとした私を、五条先生が止める。

「皆実……待っ、て」
「や……待て…ない……です」
「……………バカ……勃ちすぎて、マジで痛いくらい…だから……これ以上…大きくさせないで」

 五条先生は言いながら、いつの間に用意してたのかベッドサイドに置いていた四角い袋に手を伸ばした。
 中から出てきた薄いゴムを、反り勃った先端にあてがって、五条先生は私の手を握った。

「先生……」
「ん……皆実…手伝って」

 丸まったゴムに、私の指が触れて。
 クルクルと、その透明の膜を下ろしていく。

「……っ…、上手」

 五条先生の熱をすべて包み込んで、五条先生が深く息を吐く。
 よくできました、と私にキスをして。
 五条先生はそのまま私のことを押し倒した。
 白いシーツの上、私の髪が散らばって。
 浴衣が淫らにはだけて、私の身体を曝けだす。
 五条先生を求めるように手を伸ばして、その首に腕を回した。

「挿れていい? 痛いかもだけど」

 膜に包まれた熱を秘部に当てて、入り口に擦り付けながら尋ねてくる。
 その刺激だけでもトんじゃいそうだから。
 コクコクと何度も頷いて、五条先生を受け入れるように足を開いた。

「……っ」

 グチョリと、私の濡れたナカに大きな熱が埋まる音がする。
 ミチッと身体が軋んで、その痛みが身体を巡って快楽に変わっていく。

「……キッツ……皆実…痛いっしょ?」
「や……だっ、やめ…ないで」

 五条先生が私のナカからその熱を引き抜こうとしたから、思わず身体に力を入れてしまって。
 五条先生の眉が苦しげに顰められた。

「皆実……絞めすぎ」
「ごめ、なさ……でも…気持ち…ぃ…から……っ」

 痛いけど、その痛みが気持ちいいとすら思えるから。
 この快楽の波を止めて欲しくなくて、私は五条先生の腰に足を絡めた。

「……離れ…な…ぃで…ください」

 ゼロの距離をもっと深く求めて、五条先生の身体を引き寄せる。
 ミチミチと裂かれるような痛みが私の身体を震えさせて、それだけでもう身体はおかしくなっちゃいそうで。

「……離したくなくて…困ってんだよ、バカ」
「あ…んっ……ぁ、っ先生……っ」

 五条先生が私にキスをしながら、腰を揺らす。
 私のナカをこじ開けて、推し広げるように、五条先生の腰が角度を変えて打ち付けられた。

「先…生っ、ぁ…あぁっ…」
「もう…軽く……イッちゃってる、でしょ、皆実」

 意識をトばすほどではないけど。
 快楽の波に呑まれて、何度か身体が弛緩してる。
 でも一際大きな波が、何度も押し寄せては引いて、私の中でどんどん大きくなって燻ってるの。

「ん…ぁ……っ…先生……もっ、と……っ」
「もっと……なに?」
「激し…く…」 

 私が強請った通りに、五条先生が音が鳴るくらいに激しく腰を打ちつけてくれる。でもその刺激があまりにも強すぎて、身体が言うこと聞かないくらいに震えてしまって。

「あ…だめ……っ、激し…っ」
「皆実が…言ったんじゃん……っ、激しくって。ハハッ…すごい痙攣」

 吐息まじりに笑って、五条先生はそれでも激しい律動をやめない。

「あー……ヤバい。……僕もうイきそ」

 首に回した私の手を解いて、その手を握りしめてシーツに縫い付ける。
 バランスを取るように、その手に体重をかけて五条先生が腰に力を入れた。

「ごめん、皆実……ちょっと1回イかせて」

 言いながら五条先生が自由に腰を動かす。
 壊れそうなくらいに身体が軋む音がして、五条先生の顔が快楽に染まってく。

「はぁ…っ……ぁ…皆実…きも、ちいい……っ」

 五条先生が思いのままに快楽に溺れていく姿なんて初めてで。
 いつも私ばかり気持ちよくさせられて、五条先生のイく寸前の姿は、霞む意識の中でしか見られなかったから。
 その姿を、目に焼き付けたくて。
 瞬きすら、できなかった。

「ぁ……っ…ヤバい…ぁー……っ、は…っ」

 五条先生が私で気持ちよくなってくれてるのが、心の底から嬉しいの。

「……先生」

 五条先生の手を握り返して。
 私は少しだけ頭を持ち上げる。
 苦しい息を吐く、五条先生の唇に私の唇を重ねた。

「……っ、皆実…」
「あ……ん、ぅ…っ」

 五条先生の舌をレロッと舐めて、笑ってみせた。

「先生……気持ちよく…なって」
「……っ、ぁ……バカ」

 ――かわいすぎって。
 そんなこと言って、五条先生がまた私の唇を奪って。
 そのままビクビクと身体を震わせた。

 薄い膜の中、熱い欲が脈打つように解き放たれる。

「……あー……皆実のせいで…身体バグってる……いっぱい…出てんだけど」

 身体をいまだに震わせながら、五条先生が私の耳元で呟く。
 五条先生の身体を労りたくて摩ろうとしたら、動かせないように手を握られた。

「……まだ勃たせんな」
「背中……摩ろう、と」
「そんなんされたら勃つに決まってんだろ、バカ」

 そうなの? って首を傾げた私を、五条先生が呆れたような顔で見下ろした。

「次は皆実がイッてもイかせ続ける」
「……え、っ、ぁ」

 恐怖の宣告をして、五条先生が私の中からズルン、とそれを抜き出した。
 大量の白液を溜めたゴムを器用に縛ってゴミ箱に投げると、五条先生は荷物の中に入れたままのウェットティッシュを取りに、ベッドから立ち上がった。

「……う、わっ、皆実!」

 この状況で、少しも離れたくなくて。
 私は立ち上がった五条先生の腕を引っ張って、五条先生のことをベッドに押し倒した。
 先ほどまでとは真逆の位置。五条先生の上に私が跨った。

「皆実……挿れる前に拭かないと、ソレ、僕の精液ついてる」
「分かってます」

 五条先生が生ではしないって決めてることも。
 それが私のためだってことも。
 だから、そのまま挿れたりはしない。
 私は、私を大事にしてくれる五条先生を大事にしたいから。

「……ちょ…皆実っ」

 押し倒した五条先生の下腹部へと私は顔を下ろす。
 私の行動に驚いて、五条先生が上半身を起こすけど。
 でも、私の唇がソレに触れれば、五条先生の動きは震えに変わった。

「……っ…汚い……から、やめろ……バカ」

 私で気持ちよくなった証を、私はペロペロと舐めとっていく。
 肉棒に絡みついた白くて濃い粘液を丁寧に舌に絡めたら、またその肉棒が大きくなって硬さを取り戻す。

「いや……ですか?」

 五条先生の昂りを咥えながら問いかけたら、五条先生は苦しげに唇を噛んだ。

「……っ…マジで…めちゃくちゃに……しそう」

 五条先生が私の頭を撫でて、またその四角い袋に手を伸ばす。
 その行動の最中もずっと、私は五条先生の熱を丁寧に舐め続けていたけれど。
 突然与えられた刺激に、身体が跳ねた。

「……っ、ぁ…先生」
「何? 皆実…ちゃんと……舐めて」

 見上げた五条先生は四角い袋を口で破っていて。
 空いている方の手が私の背中からお尻に回って、ぐっしょりと濡れた秘部に触れていた。

「や……ぁ、先生……」
「腰揺らしながら……僕のしゃぶって……眺め最高でしょ。ずっと……見てたいんだけど」

 私が五条先生を慰める音と、五条先生が私を暴く音が重なって、どちらの水音かも分からない。

「こんなエッチなことするのは……せめて…僕だけにしてね」

 悲しい響きが降りてきて。
 思わず口を離したら、五条先生が私のナカに埋めた指を激しく動かした。

「あ……っぁ、やぁ……ん」
「あー……こういうことはもう言わないって決めてたのに……皆実のせいだからな」

 私のナカをめちゃくちゃにしながら、五条先生は器用に片手でゴムをつけていく。

「皆実がかわいくなればなるほど……ヤキモチ止まらなくなんの」

 五条先生の指が私のナカから消える。私の腰を抱いて、五条先生が私を目の前で膝立ちさせた。

「先生……」
「そのまま腰下ろして。……自分で挿れてみようか」

 五条先生が私の腰に力をかける。
 その力に任せて、腰を下ろしていけば、秘部に異質な塊が触れた。

「ん……っ」
「そう……そのまま……っ…ぅ」

 待ち望んでいたように、私のナカが五条先生のモノを咥えていく。
 搾り取るように、ギュウギュウに絡みつきながら、どんどん奥まで咥え込んで。

「や……っ深…い」
「あー……根元まで入っちゃった……っ……きもち、よすぎ…」

 深呼吸を繰り返して、五条先生が私を突き上げる。
 その刺激に身体が反応して、思わず五条先生に抱きついた。

「皆実、わざと……おっぱい、当ててんの? ……興奮、するん…だけど」
「違…っ、あぁっ」

 ギュッと抱きついてしまって、五条先生の胸に私の胸が擦れる。
 指摘されて離れようとしたのに、五条先生が抱きしめ返してくれたから離れることもできない。

「奥まで……僕の当たってる?」

 優しい声音とは裏腹に、私をつく腰つきは荒々しくて。
 舌を噛んじゃいそうだから、言葉を紡ぐ代わりに何度も頷いて答えた。

「あ……ぁん……っ…ぁ………っ」
「ハハッ……皆実、腰揺れてる……かぁわいい」

 からかうような響きも、今の私には理性を壊す言葉でしかないの。
 絡まり合う蜜の音が、私の意識をどんどん霞ませていく。

「皆実……イきそ? イッていいよ? イかせようか」

 煽るように言葉をたたみかけられて、重ねるようにガンガンにつかれたら、もう何が何だか分からなくなっちゃって。

「ぃあ…っ……あぁーー…っ! …ん…んっ」

 五条先生の声に導かれるように、身体がビクビクと震えた。
 ナカに埋められた熱をギュウッと締めつけて、弛緩する。
 一瞬顔を顰めた五条先生も、私の弛緩を合図にまた笑顔を携えて。

「1回目」

 私の耳元で五条先生がそう囁いた。

「え……ぁっ、や…待ってぇっ、イったばっ…か、あぁっ!」

 五条先生は容赦なく、私のナカを抉るように突く。
 イッたばかりの身体は悲鳴をあげて、収まらない痙攣がすぐに新たな快楽の波を連れてくる。

「五条…先生…っ、待って…まっ…あぁんっ、あ…っ」
「だーめ。言ったじゃん。イッてもイかせ続けるって」
「や…ぁ…っああ……んっ、あ」
「もう2回目イッちゃいそうじゃん。……僕がイくまでに何回イッちゃうだろうね」

 愉しそうに言って、五条先生がまた私の身体を激しく揺らす。
 跳ねる身体が、五条先生から与えられる快楽の激しさを物語ってる。

「あ……あぁっ…ん…や…ぁっ」
「ね……皆実。……ちゃんと…気持ちいい? 僕のが1番?」

 こんなときに、そんな大事なこと聞かないでよ。
 どんなに本気でも、熱に浮かされた返事みたいになっちゃうから嫌なのに。

「五条…先生の…が……ぁ、1番すきっ……先生じゃなきゃ…やだっ」
「……それ、他の男にも…言ってたら……許さないからね」
「言わ…ない、から……ぁっ」

 五条先生の負の感情が流れこんできて、その痛みが私を刺激してまた身体が震えちゃうの。

「……あー……ダメだ。全然……収まんない」

 五条先生の熱はどんどん質量を増していくばかり。
 対する私の身体も痙攣を止められなくて言うことを聞かない。
 互いに熱の収め方を知らぬまま、再びベッドに私の身体が沈んだ。

「……会えなくなる分だと思って、今日はもう、僕に抱き潰されて」

 そんなこと言われなくても、五条先生がくれるものを拒むわけないけど。
 でも会えなくなるんだと思ったら、むしろ私の方からそれを願ってしまうの。

「先生で……いっぱいにして、ください」

 五条先生の頬に手を伸ばして、自らキスをする。
 言葉以上に想いが伝わればいいのにって、そんな願いをこめて。
 繰り返したキスを全部受け止めて、五条先生は苦笑した。

「マジで……ちょっとでも離れるの、僕の方が無理なんだけど」

 そんなことありえない。絶対、私の方が無理なんだよ。
 でもコレが『依存』なんだって。
 きっと今の関係は、五条先生の足枷にしかならないって。
 壊れた頭でも、それが分かるから。
 五条先生が私のために考えてくれた『本当の仲直り』をするために。
 死ぬ前のように、五条先生と冗談言って笑い合えるように。

「五条先生」

 これから先も五条先生のそばにいるために。

「……また、私のご飯……食べてくださいね」

 未来の話をした私を、五条先生は困ったように笑って。

「美味しいの、作れるようになっといてよ」

 しばしの別れを、惜しむように。
 私と五条先生は何度も何度も、身体を重ねる。
 溢れる気持ちを、心に隠して。
 互いの証を、その身体に刻み込んだ。


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