▼ 1話
「×××容疑者は容疑を認めており…」
朝ごはんのトーストを頬張りながらテレビを見る。最近のニュースはつまらないものばかりだ。それだけこの国は平和だという証だと、そう思う。
きっと自分ならもっと芸術的にラストを飾れるし警察に捕まることもなくうまくやれる。
彼女はそう思った。
やるなら楽しく、刺激的にやらなくちゃ意味がない。彼女にとって殺人は楽しむための娯楽でしかない。
実は彼女、日本を騒がせている連続殺人事件の犯人である。
犯人どころが犯行のトリックも分からず迷宮入りしてしまった殺人事件の犯人である。
身元は不明、名前も不明、容姿も不明、年齢も不明。警察は不明な点が多過ぎて指名手配もできずにいた。
唯一手掛かりがあるとすれば、どの事件も摩訶不思議なダイニングメッセージのような芸術作品が置かれていることだ。警察からすればそんな芸術作品が最低最悪のものでしかないため《人類最低の殺人鬼》だとか騒がれているらしい。
無差別に、理由なく殺してるわけじゃないから鬼ではないのだと思うが周りから見れば私はどうしようもない殺人鬼なのだ。
彼女は、頼まれて殺すわけでも、主君のために殺すわけでも、理由がないから殺すわけでも、正義のために殺すわけでも、みんなのために殺すわけでも、綺麗にするために殺すわけでも、運命に背くものを殺すわけでもない。
彼女の犯罪原理はただ一つ
自分の芸術のためだ。
彼女の犯罪目的はただ一つ
自分の芸術のためだ。
彼女の名前は桐崎佐季
しがない殺人鬼だ。
prev / next