相違点
「高尾。」
「へーい。」
「お前、もっと勉強しろ。
今回の赤点、お前だけだぞ。」
「げっ。マジっスか!?」
期末考査のテスト返却。
自分ではないのに
自分が呼ばれたように吃驚する。
「宮地。」
「はい。」
「クラストップだ。よくやったな。」
「ありがとうございます。」
一礼してさっさと自席へ戻る。
そうゆーの、本当に止めてほしい。
別にどうだっていい。
それに…勉強が出来ることなんかよりも
バスケ部でレギュラーを取る方がずっと大変で凄いことだと私は思う。
それも、1年生なのに、だ。
「んじゃあ、御察しの通り高尾は放課後居残りな。」
「先生ぇ〜。」
「…だが!
お前は一応レギュラーだ。曲りなりにも。」
一応をかなり強調して言う。
「ひでぇ!」
「知るか。
そして今日は俺も忙しい。
だから、補習はプリントで済ませてやる。
終わったら、俺の机の上に置いとけ!」
何だかんだ言いつつもちゃんと高尾君の事を認めてる。
それが伺える言葉だ。
「じゃあ、これが補習プリントだ。
さっさと取りに来い!!」
「先生、優しい!」
茶化すように高尾君が囃し立てる。
「あ゛ぁ?
ふざけた事言ってると倍に増やすぞ。」
「勘弁っス!!
つか、宮地サンみたいなこと…、」
「その宮地サンの妹がこのクラスにいるんだよな?」
ニヤリと笑う先生。
「ぎゃすっ!?
名前サン、勘弁!」
「え?…別に言わないけど。」
「助かった…。」
本気で安心したように胸を撫で下ろした。
「つか、名前サンってあんま宮地サンに似てないよな〜。」
「そう?」
カリカリとシャーペンが立てる音が放課後の教室に響く。
「いや、外見は超ソックリだけどさ。
身長と髪の長さを除けば見分けがつかないくらいに。
けど、内面っつーの?そーゆーのが兄妹なのに全然違うっつーかさ。」
「あぁ、よく言われる。
…あの人、結構歪んでるしね。」
だからこそバスケを真面目にやってるのには驚いた。
しかも、レギュラーとか。
「ははっ、やっぱり?」
「あの人が聞いたら“刺すぞ”な台詞だね。」
ニヤリと笑ってあの人…兄の真似をしてみる。
「止めて!
マジ似てるから!!」
お腹を抱えて笑いを堪える高尾君。
「てかさ、名前って呼んでもいい?」
「別にいいけど。」
「じゃあ、俺のことも和成で!」
「はいはい。」
…ん?
「じゃあ、終わり!
サンキューな名前。
俺の補習に付き合ってくれて。」
「いえいえ。
じゃあ、兄によろしく。」
「あっ、そうそう!
俺、ちゃんと宮地サンに認めさせるから。」
ニヤリと試合中に良く見る笑みを浮かべる高…和成。
てか、何を?
「お義兄さんって呼ばせてもらうこと!」
end.
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