2、信じられない【END福沢さん】 | ナノ
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「……そうか」
そう呟いた新堂さんの声には、明らかに失望の響きが含まれている。
信じられないっていったのが、そんなにショックだったのかしら?
だったら、悪いことしちゃった。

「信じられないか…………」
更に落胆した声でそれだけ付け加えると、新堂さんはすっかり黙り込んでしまった。
「あの……。
新堂さん……?」
いたたまれなくなって、暗闇の中に呼び掛けてみる。

すると、暗闇の奥でドサッという、何かが倒れたような音がした。
「新堂さん……!?」
「信じら……れな……い……」
かすかに耳に聞こえてきたのは、途切れ途切れのかすれた声。
そして……。
「きゃはははは…………」

……という、けたたましい女の笑い声。
この声は……誰?
「恵美ちゃん、信じられないんだって?」
この声は……。
「……福沢さん!?」
「ピンポーン!
大正解、おめでとーーーっ!」

福沢さんの明るい声が響き渡ると同時に、室内の電気がパッとついた。

「ひっ……!!」
辺りを見回して、私は息を飲んだ。
そこは、新聞部の部室だった。
だけど、いつもの部室じゃない。
壁や床、天井までが血で赤く染まり、いたる所に死体が転がっている。

七不思議に集まってくれたみんなだ。
荒井さん、風間さん、細田さんに岩下さん……。
それに新堂さん…………。
みんな、苦悶の表情を浮かべたまま息絶えている。

そして、みんなの死体を見下ろすような格好で、真っ赤に染まった福沢さんが立っていた。

「ねえ、恵美ちゃん。
新堂さんが話したことは、ぜーんぶ本当なんだよ。
あの人はねえ、私の半身を殺したの。
夢の中に生きていた半分の私を……。
私の半身は男の子でね、人の夢の中を冒険して歩くのが大好きだったの。

でも、新堂さんの夢に迷い込んじゃった時に、夢の中に出てきた学校に閉じ込められてしまって…………。
後は、話で聞いたでしょ。
そのままなす術もなく、無抵抗なまま殺されちゃったのよ。
半身を失った時の痛みはね、本当に苦しいものなんだよ。

身を引きちぎられるような感じがして、その後、震えが止まらなくなるの。
体力も気力も落ちて、何をしてもすぐ疲れる。
どんなに睡眠をとっても、目の前に広がるのはただの真っ暗闇。
そして、半身が受けた痛みだけが蘇ってくるの。

痛いよう、辛いようって、地獄の底から伝わって来るような痛みなんだから。

……と、こんな話しても無駄だったかな?
だって、恵美ちゃん。
信じられないっていってたもんね。
……だったら、しょうがないよ。
恵美ちゃんにも、体験してもらうしかないね」

そういって、福沢さんは口の端を歪めて笑った。
「恵美ちゃん……。
私からのプレゼントだよ。
せいぜい恐ろしい体験をしてね。
そして、素晴らしい記事を書いてね」

不気味な微笑みを浮かべる福沢さんを見つめながら、私の意識は遠くなっていった。

……そして、夢を見た。

学校の裏庭に女の子が二人……。
一人はカッターを振り回し、その腕が大きく動くたびに、もう一人の身体が血に染まっていく。
……やめて!
私の叫びは声にならない。
無抵抗な女の子はどんどん血まみれになっていく。

……やめて、やめて!!
それでも、私は叫び続けていた。
そして、ついに……。
「やめてーーーっ!!」
私の声が、初めて音となった瞬間……。

私は、ハッと目を覚ました。
……夢だったんだ。
なんてリアルな夢……。
夢の中で声を出した時……。
二人の女の子は、同時に私を見たわ。
その顔は……。
二人とも私の顔だった!
ナイフを握っていた女の子も……。

血まみれになっていた女の子も……。
二人とも私なの!?

……嫌よ。
……こんな夢見たくない。
「絶対に嫌ぁーーーっ!!」

自分の声に驚いて、私はハッと目を覚ました。
……夢だったんだ。
でも……。
もう、どこからどこまでが夢なのかわからない。
もしかすると、起きていると思っている、今、この瞬間も夢なのかもしれない。

繰り返し……、繰り返し……。
終わらない夢……。
いつまで続くのかわからない悪夢……。


(旧校舎END)
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