怪盗紳士オリジナル | ナノ
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(1)
大河内「そもそも今回の騒動の発端となった件はどう説明する?
蒲生氏と怪盗紳士の最初の接点……
『我が愛する娘の肖像』をコンクールに送りつけたことも、ニセの怪盗紳士によりものだっていうのか?
そんなことをして、いったいヤツにどんなメリットがあるんだ?
まったく見当もつかんぞ?」

金田一「うっ……」

美雪「しっかりしてよ、はじめちゃん!
さくらさんが言ってたじゃない!

あの絵がコンクールで大賞を取って有名になったから、蒲生さんは自分に娘がいるって告白したのよ。
それを見たから、さくらさんは名乗り出たんじゃない。
ねぇ、さくらさん?」

さくら「えっ!? ええ……」

羽沢「つまり、そのニセモノの怪盗紳士な狙いは、さくらさんを屋敷に招き寄せることなんだな?」

金田一「あ、ああ……。

それが真犯人の立てた『殺人計画』の第一歩だったんだ!

(助かったぜ、美雪!)」



(2)

金田一「とはいえ、本物は怪盗紳士に盗まれちゃったんで……」

剣持「ちっくしょ〜っ!」

金田一「羽沢さん、あの絵の複製画を持ってないかな?」

羽沢「ああ。いちおう持ってきてはいるが、どうするんだ?」

金田一「ちょっと借りるよ。
さて……。
ちょっと注目してほしい!」

(3)

大河内「隠されたヒントだと?
この絵のどこにそんなモンがあるっていうんだ?
なんの変哲もないただの夜空じゃないか!
そもそも、この絵を狙った怪盗紳士がすべての事件の犯人なんだ!
名探偵なんかいなくても、ヤツを捕まえて絞り上げればわかることだ!」

金田一「くっ!」

大河内「もう解散させても構いませんかな?」

剣持「まぁまぁ……。
もう少し金田一の話を聞いても損はないでしょう」

岸「この絵の背景……。
夜空に隠された秘密というと……。
もしかして、以前に羽沢さんが言っていた、この南十字星のことかい?」

金田一「そう! それっ!
それを言いたかったんだ……」

和久田「南十字星だって……?
どれどれ……。
この地平線スレスレに見える4つの星は、たしかに南十字星だ。
天文学者としてそれは断言できるけど……それがどうしたんだ?」

(4)

羽沢「そんなバカな! この絵が贋作だとでもいうのか!
この色づかいや筆のタッチは、明らかに蒲生氏の作品だ!
いくら、その男の筆がたつとしても、ここまで似せて描けるものか!」

小宮山「そ、そうですよ。
御主人様の絵が簡単にマネできるわけがありません!!」

金田一「えーっと……それは……」

吉良「待て待て!
俺はその小僧のいうことを信じるぜ。
思い出してみろよ。

蒲生は5年前に画風をガラリと変えてから評価されるようになった。
その後にヤツが発表した絵が素晴らしかったのは俺だって認める。
だが、あそこまで画風を変えられると思うか?」

羽沢「たしかに蒲生氏の画風の変わり様は急激すぎると、5年前にも話題になったが……」

吉良「蒲生に素晴らしい才能が眠っていたってか?
はっ! とても信じられん話しだ。

だが、あいつが5年前からずっと代作家……つまり、ゴーストに描かせていたならどうだ?
小僧、お前もそうは思わんか?」

金田一「あ、ああ……。
俺も吉良さんと同じコトを考えたよ」

(5)

大河内「島にいた病人がお前のいう代作家だとしても、いろいろ無理があるんじゃないか?
蒲生氏はそれなりに名前の知れた画家だぞ。
そんな妙な男を病院に入院させるなんて目立つことができると思うのか?
すべてを蒲生氏の犯行として片づけるのは無理があるんじゃないか?
それに、蒲生氏は乗り物嫌いなんだろう?
乗り物嫌いが、どうやって青森から沖縄まで病人を連れて行ったんだ?」

金田一「くっ!」

大河内「やっぱりお前の推理には無理があるみたいだな」

剣持「いや! ちょっと待ってくださいよ、大河内警部!
たしかに蒲生氏ひとりの犯行と考えると無理があるが、共犯者がいたとしたらどうでしょう?」

大河内「共犯者ですと?」

剣持「そう。
この事件のもうひとりの犠牲者、海津里美ですよ。
あの女が医者としての立場を利用し、診断書を偽造したとしたら……?」

大河内「……なるほど。
海津里美は蒲生の愛人同然だった。
たしかにあの女が蒲生に協力していた可能性は高いが……」

剣持「それに、あの女には別の疑いもあるんだ。
ちょっと、これを見てくれ」

羽沢「青酸カリ!?」

剣持「これは海津の部屋にあった薬品の保管庫から見つかったモンだ。
ほかにも危険な薬を複数保管していたことがわかっている。
……一介の付添医師に、こんな劇薬が必要なモンかね?」

岸「もしかして、その無名の画家を病院送りにしたのは……」

剣持「ああ。
海津里美の仕業と考えるのが自然だろうな。

金田一の話のとおりなら、おそらく診断書を偽造し、邪魔になったその男を波照間島に隠したんだろう」

大河内「ぐぬぬ! だとしたら、なんてひでえヤツらだ!」

吉良「利用するだけ利用して、ヤバくなったら病院送りか……。
ケッ! あの男がやりそうなことだぜ!」

金田一「(さすが警視庁の警部だぜ!)」

(6)

小宮山「ちょ、ちょっと待ってください!
あのアザがいったいどうしたというのですか!?
珍しいアザかもしれませんが、あれはさくらお嬢様が御主人様の娘だという証しなんですよ!?
生き別れたお嬢様の成長した姿を想像して、御主人様はこの絵にあのアザを描いた――その絆を示す以外に、どんな理由がこのアザにあるというのですか!?」

さくら「……」

金田一「えーっと……それは……」

剣持「おい、金田一! 何かないのか? この絵に関連した証拠とかは!?」

岸「そういえば……金田一君!
あのスケッチブックは持ってるかい?」

金田一「あ、ああ……。ここにあるけど……」

岸「ちょっと借りるよ。

……。

やっぱりそうだ。
何度も何度も見直したのに、今まで気づかなかったなんて……」

剣持「なんのことだ?」

岸「このスケッチブックは5年前、僕がこの屋敷から盗んだものです。
……金田一君の推理が正しければ、この絵もその無名の画家が描いたモノでしょう。

とりあえず、この絵を見てください」

剣持「……これは?」

羽沢「さくらさんの絵だ……」

岸「そう。それも5年前――12歳の頃の。
それで、この絵をよく見てください。胸元のところ……」

小宮山「あ! アザが――!
あの蝶の形をしたアザがない!」

金田一「(岸さんのおかげで助かったぜ!)」

(7)

小宮山「そんな……。私には信じられません!
ラベンダー荘から御主人様が助けを求める電話をされたすぐ後、お嬢様は、この本館の居間にいらしたじゃありませんか!
それからすぐに私たちはリムジンでラベンダー荘に駆けつけ、御主人様の遺体を発見してるんです。
電話が切れて、ほんの1分もたたぬうちに現れたお嬢様に、どうやってラベンダー荘にいる御主人様を殺せるんですか!?」

羽沢「そうだな……。
この本館から川向こうのラベンダー荘まではどんなに急いでも車で5分はかかる。
ラベンダー荘で蒲生氏を殺してから、1分やそこらで本館に戻るなんて不可能だ!」

さくら「……」

金田一「うっ……!」

小宮山「やはり、金田一さんの考えすぎだったんですよ。
さくらお嬢様がそんなことを……」

剣持「……いや、ちょっと待ってくれ!
蒲生の死体はたしかにラベンダー荘で発見されたが、ラベンダー荘で殺されたってのは、状況証拠から導き出した答えのひとつにすぎん。

金田一! お前は違う可能性に気がついたんじゃないのか!?」

金田一「そ、そうかっ!
オッサンの言うとおりだ。
俺の推理を改めて聞いてくれ」

(8)

大河内「だが待てよ? いくら目を潰されてるからといって、車の中をラベンダー荘と勘違いするなんて偶然にしちゃデキすぎじゃないか?」

小宮山「そ、そうですよ。
長年ラベンダー荘を使ってる御主人様が、そう簡単にまちがえるとは考えられません!
それとも、そう勘違いさせる仕掛けでもあったというんですか?」

さくら「……」

金田一「うっ……!」

剣持「……そうか!わかったぞ、金田一!

お前は、以前、蒲生はラベンダーの匂いのおかげで自分のいる場所に気がついたと言ってたよな?」

金田一「あ、ああ……」

剣持「だとすると、その匂いさえあれば、蒲生に自分のいる場所をラベンダー荘だと思わせることができるんじゃないのか?」

美雪「あ!? はじめちゃん、あれよ!
匂い袋!」

金田一「それだ!」

(9)

小宮山「待ってください、金田一さん!
あなたの言うことがすべて正しいとしても、どうしても私には信じられない!
なぜ、さくらお嬢様が御主人様や海津先生を殺さなければならないのですか!?
そな無名の画家とお嬢様にどんな関係があるというのですか!?
そうだ! その無名の画家には動機があるかもしれませんが、お嬢様には何の動機もありません!
無名の画家は、さくらお嬢様の写真か何かを見ながら、その島であの絵を描いたということもありえるのではないでしょうか?」

さくら「……」

金田一「え〜っと……」

小宮山「さくらお嬢様に御主人様を殺す理由はありませんよ。きっと犯人も別にいるんです!」

美雪「でも……」

剣持「どうかしたのか、七瀬君?」

美雪「はじめちゃん、言ってたよね?
いつきさんからの電話で、“もうひとりの怪盗紳士”の正体がわかったって……。
いつきさんは、その絵描きさんと真犯人をつなぐ何かを見つけたんじゃないの?」

金田一「そ、そうかっ!」