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岩下明美PS追加・変更・女主人公用台詞
『カッター音』(変更)
キチキチキチ……
チキチキチキ……


1話悪霊に魅入られた少年(男)



『2、助けなかった』
そう……。
そうね。
いじめには、かかわらない。
いじめを見たら、見て見ぬふりをする。
それが、一番楽よね。
あなただけじゃないわ。
みんなそうだった。
だから……。

……そうよね。
あなたって、そういう人だと思ったわ。
自分が一番大事だってことよね。
いいのよ、わかってるんだから。
へたをすれば、自分に矢先が向くものねえ。
…………みんな同じよ。
いじめられた者の痛みなんて、想像できないんでしょう。
毎日楽しければ、それでいいんでしょう。

ねえ、そうなのよね?
そうなんでしょう?
素直に認めたらどうなの。
……まあ、なんて顔しているの。
別に、あなただけを責めている訳じゃないのよ。
内山君を助けなかった、すべての人に怒りを感じているの。
わかるでしょう?

あなたならわかってくれるわよね。



『2、怖くない』(変更)
あなたは、助けてなんかいない。
内山君のこと、見捨てたのよね。
……内山君はね、誰も助けてくれないから、いろいろと考えたの。

本当に助けてあげたのなら、あんなことにはならなかったのよ。
あなたは、助けてなんかいない。
内山君のこと、見捨てたのよね。
……内山君はね、誰も助けてくれないから、いろいろと考えたの。
どうして自分がいじめられるのかをね。


2話無限に続く学校の廊下(男)



『2、守れない』→『1、守れる』(削除)



それじゃあ、最後の質問をするわね。
……坂上君。



約束『2、守れない』(変更)
そう……。
私、優しいあなたにお願いがあったんだけど……。
あなたに約束してもらいたいことがあったの。
私が今から話す呪いを、解いてちょうだいってね。
でも、あなたは人の忠告は聞けない人なのよね。
だったら、だめかもね。
私の忠告なんて、あなたには聞けないんでしょうから。
でも、話しておくわ。
昔、この学校で起きた事件について。
あなたのクラスは危険よ。
……忠告しておくわ。
それじゃ、話を始めましょう。

そんなこというの?
困ったわ、私、あなたに約束してほしいことがあったんだけど……。
優しいあなたに、お願いがあるのよ。
これから私が話す呪いを、解いて欲しいの。
……それは無理なことかもしれない。

でも、私は話さずにはいられないの。
私、この話の女の子を、とてもかわいそうだと思うんだもの。
……よく聞いてね。



『1、このまま廊下を進んでみる』(変更)
ここまで歩いたんだから、もうすぐ向こうの階段に着くはずだ。
そう思ってね。
何だろう?
蛍光灯が、古いのかもしれない。
彼はパチパチまばたきをして、よく目をこらして天井を見たの。
そこには……。
何も見えなかったの。
そこはただの闇。
彼は急いで辺りを見まわした。
前にも後ろにも、廊下が続いていたわ。
でも、廊下の端は見えないの。
そこには、ただ闇が広がるばかり。
闇は、自分に迫ってくるようだった。
これは、停電じゃない。
彼はそう思ったわ。
このままでは闇にのまれてしまう。
逃げなくては。
逃げなくては……。
「うわーーーーーーーっ!」
彼は、どうしていいかわからず走ったわ。
廊下の端に向かって。
腕を激しく振って。
足音が響く。
汗がちる。
ふるえているのは体かしら、足かしら。
たどり着けない。
廊下の端に着かない。
足音は、彼をせきたてるようにこだました。
でも、廊下の終わりは見えない……。
何だろう。
何かがいる。
廊下の向こうに、人の気配がする。
黒い影だ。
何だろう……。
彼は、思わず足を止めたわ。
肩で息をしながら。
喉が痛くなるほど、呼吸を繰り返しながら…………。
黒い影は、壁の辺りにうずくまって、モゾモゾと動いているの。
それは人のようでもあるし、肉の塊のようでもあったわ。

歩いてきた距離を考えれば、戻るより進んだ方が、早く帰れるはずだったしね。
胸の奥に広がる、嫌な予感を押し殺して、彼は歩き続けた。
…………何かが聞こえた。
彼は、ぎくりと足を止めたわ。

耳をすます………………。
何も聞こえなかった。
怖い怖いと思ってるから、幻聴が聞こえたんだろう。

彼は自分を納得させて、また歩き出したの。
するとまた聞こえたのよ。
それも、一人の声じゃない。
暗い廊下のあちらこちらから、忍び笑いが聞こえてくるの。
これは幻聴なんかじゃない。
彼には、はっきりとわかったわ。
ここには誰かいるんだ。

目をこらしても誰もいない。
だけど、声だけは聞こえてくるのよ。

彼は恐ろしくなって駆け出したわ。
無理もないわよね。
彼は息もできないほど急いで、全速力で廊下を走ったの。

すると突然、闇が固まりでもしたように、目の前に黒い影が現れた。
彼は立ち止まった。
…………いつの間にか、笑い声は聞こえなくなっていた。
でも彼は、目の前の影に気を取られていて、そんなことにも気づかなかったの。

黒い影は、壁際でもぞもぞと動いている。
肉の塊か、ゴミ袋のようにも見えたわ。
でも、あの動きは明らかに意思を持った生物のもの。
それじゃあ、あれはいったい何なのかしら?



『2、後ろに戻る』(削除)



彼は、後ろに戻ったの。


3話清水さんの自画像



『2、嫌い』



岩下さんは横を向いてしまった。
気分を悪くしたのかしら。
これくらいで怒ることないのに……。

でも、とにかく私は謝ることにした。
「すみません、岩下さん」

岩下さんは、私をチラッと見た。
「絵、嫌いじゃないでしょ?」
…………なんて強引な人なの。
私はため息をついて、それからうなずいた。
「はい。
私、絵は大好きです」

私の返事を聞いて、岩下さんの機嫌は直ったみたいだった。


 
『2、いやだ』



そういって、岩下さんはつんと横を向いてしまった。
もう何も話してくれそうにない。
しょうがないから、次の人の話を聞くことにしよう。



『3、自分はここに残る』



私以外のみんなが立ち上がって、ゾロゾロと出ていき始めた。
最後になった岩下さんが、私を振り返った。

「気をつけてね……」
くすっと笑う。
背中がぞくっとした。
この人は何かを知っているんだろうか。
この部屋に一人で残されることを急に怖いと思った。
「ま……待ってください!」
あわてて立ち上がる。
「やっぱり行きます」

「そう……」
扉を閉めかけていた岩下さんが、にっこりと笑った。



『2、飾ってはいけない』(女用)
ひょっとして……怖いの?
駄目ねえ、男の子でしょ。

ひょっとして……怖いの?
駄目ねえ、そんなことじゃ。



『2、部室』(変更)
……あら、怒ったような顔しているわね。
今さらながら、怖くなってきたんじゃない?
うふふ……。
それじゃ、これで話を終えるわね。

……あら、怒ったような顔しているわね。
このことを知らせずに、あの絵がある美術室に誘ったからかしら。
うふふ……今さらながら、怖くなってきたんじゃない?
それじゃ、これで話を終えるわね。



『1、激しく燃え上がった』



岩下さんは、そんなことをいって、にこにこと笑っている。
馬鹿にされたみたいで、私はなんとなくムッとした。
だから、少し怖かったけど、そんな素振りも見せずに絵に近づいた。

……何か、声が聞こえた……気がした。
そんなはずはない。
岩下さんがあんな話をするもんだから、ついそんな気がしているだけなんだ。
そうに決まってる。

…………やっぱり聞こえる。
何かが燃えるような音に混じって確かに人の声らしいものが。
私は思わず、まじまじと絵を見つめた。

……目が動いた!
絵の中の、女の人の目が私を見た!!
他はみんな油絵なのに、そこだけまるで本物の人間みたいに立体的でリアルな目玉。

私は悲鳴をあげた。
逃げ出そうとして、しりもちをつく。

「うふふ……どうしたの、倉田さんたら」
笑いを含んだ岩下さんの声が、すぐ後ろでした。
「あんな話をしたから、怖くて幻覚でも見たのかしら。
案外、気が小さいのね」
私は何もいえなかった。
岩下さんは、何も見ていないのか?

あんなにハッキリと、目が動いたのに。

けれど、もう一度見てみた絵には、おかしなところはない。
岩下さんのいうとおり、私は怖くて幻覚を見てしまったんだろうか。

岩下さんは、まだ、にこにこしている。



『3、自分だけ残る』



私以外のみんなが立ち上がって、ゾロゾロと出ていき始めた。
最後になった岩下さんが、私を振り返った。

「気をつけてね……」くすっと笑う。
背中がぞくっとした。
この人は何かを知っているのかしら。
この部屋に一人で残されることを急に怖いと思った。でも、私はグッと我慢した。
わざと思わせぶりな態度を取ってるのね。

そうすれば、私が怖がると思って。
そんな手には乗らないわ。
扉を閉めかけていた岩下さんが、にっこりと笑った。
「案外、馬鹿な人だったのね」

扉が閉まった。
一人になると、狭いはずの部室が、やたらと広く思えた。
薄暗い部屋の隅に、何かが潜んでいそうで、私は思わずきょろきょろした。そのとき、後ろでカタンと小さな音がした。

ハッと振り向く。
……誰もいない。

気のせいだったのかと思って机の方を見ると肖像画があった。
一秒前までなかったのに!?
体中の血が凍って固まる。

絵の中の少女と目があった。
少女の口が動く。
シ……ニ……ナ……サ……イ……。
死になさい!?
呆然とする私の手が、意志に反して勝手に上がった。
私の手が、私の首を絞めようとしている?
信じられなかった。

でも、首を締め上げる力は現実で、苦しくて気が遠くなる。
ひざの力が抜けて、私は床に倒れた。
でも、手は許してくれなかった。
グイグイと締めつける。
もう息ができない。

だんだん暗くなる視界の中で、肖像画の少女がニヤリと笑うのが見えた…………。



『2、殺されたときの顔になっている』(削除)


ついでにもう一つ教えましょうか。
あなたが見たいといった、殺されたときの顔だけど。
今まで死んだ四人は、全員その顔を見ているらしいわよ。
その顔を見るとたたられるのか、それとも誰かの怒りをかったのか……。
そこまでは知らないけど。


4話赤い傘青い傘


  
『1、カッコいい』(変更)
あら、はっきりいいきるじゃないの。
ひょっとして、あなたって自意識過剰なタイプなんじゃないの?
町中で、鏡やガラスに映った自分をいちいち横目で見てチェックしてしまうんじゃない?
その度に、自分はなんてカッコいいんだろうって陶酔してたりしてね。
ふふふっ。
そうね、私もはっきりいわせてもらうけど、あなたは少なくとも私のタイプじゃないわね。
いやだ、そんな顔しないでよ。
でも、他の人はカッコいいと思うかもしれないじゃない?
あっ、ほら、うなずいている人がいるわよ。
ふふ、よかったわね。
それでね、唐突なんだけど、坂上君て雨は好きかしら。

まあ、自信家なのね。
普通の神経の持ち主なら、自分で自分をカッコいいなんて、いったりしないわよね。
それなのに…………ちょっと意外だわ。
でもね、そういう態度ってよくないわよ。
私は好きじゃないわ。
……まあ、いいでしょう。

もう一つ聞くわね。

坂上君は、雨って好きかしら。



『2、カッコ悪い』
もう、けんそんしちゃって……、かわいいのね。
少なくとも、自分で自分のことをカッコいいだなんていう人よりは好きよ。
それでね、はっきりいうと、坂上君て私のタイプなのよ。
……なによ、そんなに怯えることないじゃないの!
まったく、失礼しちゃうわ。
それでね、唐突だけど坂上君て雨は好き?
……まったく!
まだ、怯えているの?
さっきのは冗談よ! 冗談!
ほら、さっさと質問に答えてちょうだい。

まあ、そんなことないわよ。
結構いい線いってると思うけど。
でも、自分のことをカッコいいなんていう人より、ずっと好感持てるわ。
そういう人って好きよ、うふふ……。
もう一つ、変なこと聞いてもいいかしら?

坂上君は、雨って好きかしら。



『3、どっちでもない』(変更)
でも、雨は私たちには必要だってことはわかるわよね。
私は、雨が大好き……。
私、大地が雨を受けとめ、そして染み込ませていくことがどんなに気持ちいいものかを知っているのよ。
特に、あじさいの咲くころは最高ね。
大地が、喜んでいるのがよくわかるわ。
あの砂漠でさえ、めったに降らない雨が降った後はものすごいんだから。
一日の内に、草が生え、花が咲き乱れるんですって。
大地が狂喜しているのね。
私はそう思うの……。
大地がこんなに喜ぶ雨が、私は大好きよ。
私たちは、水なしでは生きられないわ。
ずっと昔、母親の胎内で暮らしたときもね。
そんな、水が天から自然と降ってくるのよ。
それで坂上君は、雨が降ったら傘をさすほうなのかしら?
それとも、傘をささないほうかしら?

優柔不断ね。
それくらいのこと、スパッと決めなさいよ。
男でしょう。

もう一度聞いてあげるから、どっちかに決めなさい。
さあ、雨は好きなの?

それとも嫌いなの?


1、好き
2、嫌い



『2、傘をささない』(変更)
あなた、かなりの不精者とみたわ。
普通、傘をさすわよね。
たいていの理由は、単純に雨に濡れたくないからでしょう?
たとえ、雨が好きな人でもね。
私は、雨がすごく好きだから、そういう人たちの気持ちはわからないけどね。
私は傘は、絶対にささないわ。
どんなどしゃ降りでも、絶対にね。
空いっぱいの雨を受けて、私は天を仰ぐの。
そして、全身で雨を受け止めるの。
素敵よ。
とても、気持ちいいから。
あなたも、一度やってみなさいな。
雨の降りが弱いときは、肌をくすぐるような霧となって、私を感じさせてくれる。
雨の降りが強いときは、激しい雨音とともに、私の身体を強く打ち鳴らす。
雨は生きてるわ。
うふふ……、あなたにはわからないかもね、この快感は。
ところで、坂上君て、学校に置き傘してるかしら?

まあ、ささないの?
そうよね、それが正しいわ。
せっかくの雨を、わざわざ傘で避けるなんて馬鹿みたい。
あなたは、それがわかっているのね。
嬉しいわ。
こんな所で、同志に会えるなんて。

もう、雨が嫌いだなんていったりして、ひどいわ。
……ううん、怒っているわけじゃないのよ。
それどころか、嬉しいわ。
あなたも、雨に濡れるのが好きなのよね。
ええ、わかるわ。
一目見たときから、わかっていたわ。

そうよ、あなたは雨が好きなの。
好きに決まってる。

わたしたち、きっと気が合うわね。
だって、雨が好きな者同士だもの。
それなら、雨にまつわる話をしようかしら。
喜んでくれるわよね、坂上君。
雨の日に、雨宿りとかいって、ゲタ箱のところにいる人を見たことある?

よくいるわよね、そういう人。

馬鹿みたいよね。
せっかくの雨なんだから、思い切り濡れて帰ればいいのに。
舌打ちなんかして、おもむろに嫌そうな顔で、まるで天を憎むように空を見上げている人……。
私、ああいう人の気が知れないわ。

そんな奴は、死んでしまえばいいのよ。
坂上君、そんな人じゃないわよね。
……ふふふ。
いやあね、雨宿りしている人って。

でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。

雨宿りしている男の子に、そっと傘を差し出す。
それが恋の始まりだったっていうパターン、珍しくないのよ。
私は、そういうの嫌だけど。

昔ね、立花ゆかりさんていう人がいたのよ。
彼女ね、好きな人がいたの。
名前を塚原浩君ていったわ。
立花さんは、決してかわいくない女の子じゃなかったわ。
どちらかというと、かわいい子。
でもね、飛び抜けて目立つような花ではなかったの。

それに引き換え、塚原君は、ものすごくカッコよかったの。
日本人ばなれした顔立ちで、目鼻立ちがはっきりしていて、まるでモデルみたいだったの。
もっとも、私も二人とも見たわけじゃないから、顔は知らないけれどね。
だから、もてたわ。
いつも、女の子の取り巻きがいて、キャーキャー騒がれていた。
はっきりいって、塚原君て、あまり性格はよくなかった。
もてるのが当然だと思っていたし、スター気取りだった。
だから同性からは嫌われていたわ。

でも、塚原君はそんなこと気にしていなかったし、逆にそれが優越感でもあり、天狗になっていたわ。
正直いって、嫌な奴だったの。

それでも、立花さんは、そんな塚原君にあこがれていたわ。
けれど、控えめな立花さんは、自分から声をかけるなんてできなかったし、いつも遠くから見ているだけだった。
そんな立花さんに、神様はチャンスをあげたの。

梅雨の季節、傘を持っていなかった塚原君が雨宿りをしているときよ。
私が、さっき話したシチュエーション。
その時、偶然取り巻きは誰もいなかった。
そして、立花さんは傘を持っていたの。
大きな赤い傘をね。

こんな絶好のチャンス、ほかにあって?
これを逃したら、もう一生塚原君と話す機会なんかない。
そう思った立花さんは、ためらわず塚原君に歩み寄ったわ。

「……あのう、どなたか、お待ちなんですか?」

「いや、別に。
雨が降っちゃってさあ、仕方ないから雨宿りしてんだよね。
髪、濡らしたくないし。
まったく、いやんなっちゃうよな、このバカ空がよぉ」
そういって、彼は天を憎むような目で空をなじったわ。

「……あの、どうぞ。一緒に入っていきませんか?」
立花さんは、その赤い傘を差し出したわ。
「あ、そ。悪いね。
助かっちゃったよ。
君、どっち?」

ずうずうしい塚原君は、そんな誘いを断るわけもないわよね。
「……あの、塚原さんはどっちなんですか?」
「あれ? 俺の名前知ってんだ。
まいっちゃったなあ。
あ、俺んち、向こう」
塚原君が指さした方向は、立花さんの向かう駅とは反対方向だったの。
「あ、私も同じです」
でも、立花さんはそういって微笑んだわ。
せっかくのチャンスですもの。
それくらいの嘘、平気だった。

そして、二人は一つの傘で肩を並べて歩いたわ。
立花さん、すごくうれしかった。
このまま時間が止まってしまえばいいって思ったの。
この幸せが続くのなら、どうなってもいいとさえ思ったわ。
「君、名前なんていうの?」

「立花ゆかりっていいます」
「あ、ゆかりちゃん。
ゆかりちゃんさあ、どっかで会った?」
「……いえ。初めてだと思います」
「へえ、それなのに、俺のこと知ってたんだ。
どうして?」

塚原君て、そういう性格なのよ。
私だったら、殺しているかもしれない。
でも、立花さんてまじめだったのよね。
「……あ、私、塚原さんのファンでしたから」
「へえ、嬉しいな。ありがとう」

そういって、塚原君は、立花さんの肩を抱き寄せたわ。
塚原君にとっても、彼女のような子は珍しかったのね。
どちらかといえば、積極的でキャーキャー騒ぐタイプの子が、周りには多かったでしょ。
だから、立花さんのような子は、新鮮に映ったのね。

「ゆかりちゃんて、かわいいなあ。
俺、彼女にしてもいいよ」
もちろん、冗談半分に決まっているわ。
ほんの軽い気持ちで、誰にでもいっているセリフ。
それでも彼女にとっては違ったわ。

立花さんは、今にも心臓が飛び出しそうだった。
嬉しくて嬉しくて、気が変になりそうだった。
そして、これが夢じゃないことをお祈りして、神様にありがとうっていったの。

「よければさあ、これから俺んちに遊びに来ない?
俺、ゆかりちゃんのこともっと知りたいし、気が合いそうだからさ」
立花さんは、断るはずもなかったわ。
二つ返事で、彼の誘いを受けたわ。
悪魔の誘いをね。

ねえ、坂上君。
あなた、この塚原君て奴のことどう思う?

ひょっとして、あなたと似てたりしてね。



『1、傘をさす』(変更)
うふふ……、あなたにはわからないかもね、この快感は。
ところで、坂上君て、学校に置き傘してるかしら?

うふふ……、あなたにはわからないかもね、この快感は。
でも、これから私が話す話は、雨が嫌いでせっかくの雨を傘で拒んでしまうようなあなたにはぴったりの話かもしれないわ。

ところで、坂上君て、学校に置き傘してるかしら?



『3、雨の降っている度合にもよる』(変更)
いっそのこと、傘なんてさすのはおやめなさい。
傘なんて、わずらわしいだけよ。
私は傘は、絶対にささないわ。
どんなどしゃ降りでも、絶対にね。
空いっぱいの雨を受けて、私は天を仰ぐの。
そして、全身で雨を受け止めるの。
素敵よ。
とても、気持ちいいから。
あなたも、一度やってみなさいな。
雨の降りが弱いときは、肌をくすぐるような霧となって、私を感じさせてくれる。
雨の降りが強いときは、激しい雨音とともに、私の身体を強く打ち鳴らす。
雨は生きてるわ。
うふふ……、あなたにはわからないかもね、この快感は。
でも、これから私がはなす話は、雨が嫌いでせっかくの雨を傘で拒んでしまうようなあなたにはぴったりの話かもしれないわ。
ところで、坂上君て、学校に置き傘してるかしら?

ふうん、臨機応変というわけ?
そんなことをいって、本当は傘を持っているときはさして、忘れたときは濡れて帰る……なんて、いい加減な人だったりして。
あら、ムッとしたわね。
冗談よ、冗談……うふふ。
それなら、ちょっと聞いてもいいかしら?

坂上君って、学校に置き傘をしている?



『1、傘をさす→1、している』(変更)
あら、用意がいいのね。
梅雨の季節は特にそう。
でもね、置き傘をしていても、突然雨が降りだしたら、その傘を使ってしまうでしょ。
面倒くさくて、それでも傘をささない人は別として。
それで、次の日が晴れたら、置き傘を持ってくるのって、ついつい忘れてしまうのよね。
置き傘を、三本も四本もしている人って単に不精なだけよね。
だから、梅雨の季節は、雨が降ろうと降らなかろうと、毎日傘を持っていないとダメよね。
普通は、なかなかできるものじゃないわ。
まめじゃないとね……。

だから梅雨の季節は、よくゲタ箱のところで雨宿りをしている人を見かけるわ。
濡れてもいいから、早く帰ろうとして雨の中を走っていく人もいるわね。
でも、たいていはそんな人を横目で見ながら雨がやむのを待つわよね。
せっかくの雨なんだから、思い切り濡れて帰ればいいのに。
舌打ちなんかして、おもむろに嫌そうな顔で、まるで天を憎むように空を見上げてる人……。
私、ああいう人の気がしれないわ。
そんな奴は、死んでしまえばいいのよ。
坂上君、そんな人じゃないわよね。
……ふふふ。
いやあね、雨宿りをしている人って。
でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。

まあ、えらいわね。
でも、世の中ってそんな人ばかりじゃないわよね。
男子なんて特に、置き傘をしている方が珍しいんじゃないかしら?
でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。



『3、雨の振っている度合いにもよる→1、している』(変更)
あら、用意がいいのね。
梅雨の季節は特にそう。
でもね、置き傘をしていても、突然雨が降りだしたら、その傘を使ってしまうでしょ。
面倒くさくて、それでも傘をささない人は別として。
それで、次の日が晴れたら、置き傘を持ってくるのって、ついつい忘れてしまうのよね。
置き傘を、三本も四本もしている人って単に不精なだけよね。
だから、梅雨の季節は、雨が降ろうと降らなかろうと、毎日傘を持っていないとダメよね。
普通は、なかなかできるものじゃないわ。
まめじゃないとね……。
だから梅雨の季節は、よくゲタ箱のところで雨宿りをしている人を見かけるわ。
濡れてもいいから、早く帰ろうとして雨の中を走っていく人もいるわね。
でも、たいていはそんな人を横目で見ながら雨がやむのを待つわよね。
せっかくの雨なんだから、思い切り濡れて帰ればいいのに。
舌打ちなんかして、おもむろに嫌そうな顔で、まるで天を憎むように空を見上げてる人……。
私、ああいう人の気がしれないわ。
そんな奴は、死んでしまえばいいのよ。
坂上君、そんな人じゃないわよね。
……ふふふ。
いやあね、雨宿りをしている人って。
でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。
雨宿りしている男の子に、そっと傘を差し出す。

まあ、しているんだ。
案外きちょうめんなのね。
それなのに、傘をささないこともあるなんて……。

でも、その気持ちもわかるわ。
傘って、わずらわしいものね。
だけど、悪いことばかりじゃないのよ。

傘が取り持つ縁っていうのも、結構多いらしいし。
ほら、少女マンガでもあるじゃないの。
雨宿りしている男の子に、そっと傘を差し出す。



『2、していない』(変更)
でも、朝は雨が降っていなくても、下校時には降っていることがあるかもしれないじゃないの?
そんなときは、どうするの?
そうなの!?
さすが、坂上君ね。
いつも、学生鞄には三段式の折りたたみ傘が入っているなんてね。
確かに、置き傘なんてしなくてもいいわけよね。
まめねぇ……。
そうそう面白いこと教えてあげる。
私たちの間ではね、とってもまめな男の子のことを、尊敬の意味を込めてこう呼んでいるのよ。
「マメダマメオ君」
ふふっ、今日からあなたのことを、
「マメオ君」
と呼ばせていただくわ。
女の子は、たいていまめな男の子が好きでしょう?
なかなかいないのよね、
「マメオ君」
ってさ……。
いやだ、そんな顔することないでしょ?
ふふふ。
さあ、本筋に戻るわね。
まあ、傘をいつも持ち歩いていても本人が使うか使わないかは別としても……。
そうやって、傘をいつも持ち歩くくらいの気持ちがないとね。
梅雨の季節は特にそうじゃないとね。
でもね、置き傘をしていても、突然雨が降りだしたら、その傘を使ってしまうでしょ。
面倒くさくて、それでも傘をささない人は別として。
それで、次の日が晴れたら、置き傘を持ってくるのって、ついつい忘れてしまうのよね。
置き傘を、三本も四本もしている人って単に不精なだけよね。
だから、梅雨の季節は、雨が降ろうと降らなかろうと、毎日傘を持っていないとダメよね。
普通は、なかなかできるものじゃないわ。
まめじゃないとね……。

だから梅雨の季節は、よくゲタ箱のところで雨宿りをしている人を見かけるわ。
濡れてもいいから、早く帰ろうとして雨の中を走っていく人もいるけれど、そんな人の気がしれないわ。
なんで、自分からわざわざ不快な気持ちになろうとするのかしら。
でも、たいていはそんな人を横目で見ながら雨がやむのを待つわよね。
でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。

していないんだ。
そういう人って多いのよね。

特に男子。
だから梅雨の季節は、よくゲタ箱のところで雨宿りしている人を見かけるわ。

馬鹿みたいよね。
せっかくの雨なんだから、思い切り濡れて帰ればいいのに。
舌打ちなんかして、おもむろに嫌そうな顔で、まるで天を憎むように空を見上げている人……。
私、ああいう人の気が知れないわ。

そんな奴は、死んでしまえばいいのよ。
坂上君、そんな人じゃないわよね。
……ふふふ。
いやあね、雨宿りしている人って。

でもね、女の子にとっては、それが絶好の恋のチャンスでもあるのよ。


『3、人のことにはあまり関わりあいたくない』(変更)
人のことには、あまり関わりたくないっていって?
今ここで関わったって、なにか起こるわけでもないんだし。
こういう話は興味本位で聞かなくちゃ、面白くないのよ。
特に、こうやってみんなに集まってもらっているんだから……。
それからどうなりました!?
とか、早く先を続けて下さい!!
とか好奇心を発揮しなきゃだめ。
坂上君、新聞部員なんでしょ?
もう少ししっかりしなさい。
さあ、話すわよ。
それから、どうなったと思う?
ふふふ。
それじゃあ、先を続けましょうね。
立花さんは、塚原君についていったわ。

それでもジャーナリスト?
あなた、人に興味を持たないで、新聞部なんてつとまると思うの?
そんないい加減な人に、話なんてできないわ。
もっと、真面目に答えたらどうなの?
さあ、答えて。

塚原をどう思うかって、聞いたのよ。


1、気にくわない奴だ
2、男なんてみんなそうさ



『2、男なんてみんなそうさ』(変更)
なんですって!
もう一度、おっしゃい!
坂上君は、そんな人だとは思わなかったわ。
そんなやつが、この世にはびこっているから、いけないのよ。
あなたもその一人だったなんてね。
優しそうな顔をして、思ってることはとんでもないのね。
あとで、個人的に話があるから首を洗って待ってらっしゃい。
お説教してあげるわ……。
ふふふ。
それじゃあ、先を続けましょうね。
立花さんは、塚原君についていったわ。

あら、そう。
坂上君って、そういう人なのね。
人間の風上にも置けない男ね。
人の、心の痛みがわからないんでしょう。
自分が同じ目にあわないと、気づかないんだわ。
そういう人って許せない。
許せないわ。

…………あら、どうしたの。
怖がっているの?
うふふ……話を続けましょうか。

立花さんは、塚原君についていったわ。



『2、ちょっと変だと思う』(変更)
「ふざけんじゃねえぞ、このアマ!」
「ふざけんじゃねえぞ!」


5話恋人達を引き裂く悪魔の公衆電話(男)



『2、信じない』(変更)
そう。
でもね、一目ぼれってあるのよ。
私だって、今実際にあなたが気になっているの。
ねえ、坂上君。
私を、あなたの恋人にしてくれないかしら?

まあ、つまらない。
女の子のロマンをわかってくれないのね。
一目惚れって、本当にあるのよ。
魂が呼び合うっていうのかしら。

この人と私は、きっと恋人同士になるって感覚…………あなたには、本当にわからないのかしら?

……私ね、今あなたのことが、すごく気になっているの。
坂上君。
私が、恋人にしてっていったらどうする?


6話幸せの石・ルーベライズ



『1、満足している』&『2、満足していない』(女用)
女の子の間では、ちょっとしたブームになったこともあるのよ。
でもね、マニアの間では、ラピスラズリ以上の効果を呼ぶ幸運のパワーストーンが噂になっているの。

女の子の間では、ちょっとしたブームになったこともあるでしょう。
でもね、マニアの間では、ラピスラズリ以上の効果を呼ぶ幸運のパワーストーンが噂になっているの。



『2、知りたくない』&『2、ふざけるな』(変更)
大川さんはすごく驚いて、すぐに逃げだそうとしたわ。
でも……。
部屋のドアが、見あたらなくてね。
彼女は、あちこちの壁を叩き回ったの。
けれど、やっぱりドアがどこにあるのか分からなかった。
大川さんの様子を見て、霊は満足そうに笑ったわ。

大川さんはすごく驚いて、すぐに逃げだそうとしたわ。
でも……。
見えない力に押さえつけられているような感じがしてね。
彼女は苦しくなって、あちこちの壁を叩き回ったの。
大川さんの様子を見て、霊は満足そうに笑ったわ。



『1、オルガンを弾いていた、澄んだ声の女性』(変更)
オルガンの脇に、見知らぬ男性の姿が浮かび上がったの。
彼の手には、彫刻刀が二、三本。
彼はその刃で、美しい女生徒の頭を何度も突きはじめたわ。

オルガンの脇に、見知らぬ男性の姿が浮かび上がったの。
彼の手には、ナイフが握られていた。
彼はその刃で、美しい女生徒の頭を何度も突きはじめたわ。

彫刻刀をもった男は、岡崎さんに気付いたわ。
そして、ゆっくりと彼女に近寄ったの。
彫刻刀を、振り上げながら。
美しい女生徒は、頭に彫刻刀を刺したままブツブツいっていた。

ナイフをもった男は、岡崎さんに気付いたわ。
そして、ゆっくりと彼女に近寄ったの。
ナイフを、振り上げながら。
美しい女生徒は、刺された頭を揺らしながらブツブツいっていた。

岡崎さんは、泣き叫びながらその場を逃げようとしたわ。
だけど、彫刻刀を持った男に取り押さえられ……。

岡崎さんは、泣き叫びながらその場を逃げようとしたわ。
だけど、ナイフを持った男に取り押さえられ……。



『2、幸せになれない』(追加)



「どうか、みんなを不幸にしてください」

(追加)

……………わかった?
今ね、彼女の願いが叶っている途中なのよ。
きっと、彼女のその願いも満たされることはないでしょうね。
そして、きっと、頼み続けるわ。
「みんなをもっともっと不幸にしてください」って。



『1、実は殺したい人がいる』(変更)
二人は、まるで心中でもするように、よりそって死んでいたからね。
みんな、こういったわ。
あの二人は、ルーベライズによる告白も、心中もドラマチックだったって。
藤臣君は財閥の御曹司だから、身分違いの愛で苦労していたんだろう。
そんなことをいう人もいたわ。
それで、岡崎さんは、死ぬまで幸せだったなんて噂がたったのよ。
十代の未熟な心が起こさせた過ちだといって、校内会議も行われたわ。

二人は、まるで心中でもするように、よりそって死んでいたからね。
きっと二人はかなり愛しあっていたに違いない。
そんな噂がたったわ。
なんだかドラマチック、なんていう人もいたわね。
それで、岡崎さんが死ぬまで幸せだったなんて話になったのよ。

十代の未熟な心が起こさせた過ちだといって、校内会議も行われたわ。


7話白髪鬼・白井の秘密の研究



……岩下さんの話が終わった。
それでも、七人目は来なかった。
もう時間もかなり遅い。
これ以上待っても無駄よね。
私は、集まってくれた六人の顔を見渡すと、深く頭を下げた。
「皆さん、今日はどうもありがとうございました。
七人目はついに現れませんでしたが、とても怖い話を聞けました」
そこまでいって、私はちらりと風間さんのことを見た。

……しょうもない話で場をしらけさせた風間さん。
それなのに、さも自分が一番怖い話をしたとでもいいたげに得意顔で笑っている風間さん。
この人、本当にしょうがないわね。

「……これで、おもしろい校内新聞が作れそうです。
それでは、これで終わらせていただき……」

その時、部室のドアが開き、日野先輩が姿を見せた。
「日野先輩!」
日野先輩は、軽く手をあげてあいさつすると、空いている席に深く身を埋めた。
余程、疲れているみたい。

「いやあ、助かったよ。
まだみんないてくれて。
ごめんな、倉田」
私は、軽く会釈した。
まさか、日野さんが来るとは思わなかったわ。
「いやあ、七人目が見つからなくてね。
どうしようか迷っていたんだけどさ。
さすがに、このまま放っておくわけにもいかないだろ。
かわいい後輩を一人残してさ。
それで、仕方ないから、俺が来ることにしたわけ。
急いで、用事すませてさ。
新堂、風間、岩下、それからみんなも、ありがとな」
そういって日野さんは一人一人の顔を見た。

そうだったわ。
日野さんだけが、ここにいる全員のことを知っているのよね。
みんな、日野さんを見て、それぞれあいさつした。
「ほい。これ、差し入れ」
そして、日野さんは手にしていたビニール袋を無造作にテーブルに投げ出した。

「おっ、気がきくねえ、日野は」
そういって、風間さんがビニール袋の中のものをごそごそと取り出した。
ジュースが入っていた。

缶入りではなく、どれも珍しいミニサイズのペット・ボトルだった。
どこのメーカーかしら。
「さあ、みんな。好きなの飲んでくれ。
倉田、遠慮しないで好きなの飲んでくれよ」
「ありがとうございます」

テーブルの上には何種類もの飲み物がある。

何を飲もうかな。



『1、コーヒー』



私は、遠慮なくいただくことにした。
みんな、思い思いのものを手に取る。
私は、その中からコーヒーを選んだ。

もちろん、キンキンに冷えたアイスコーヒーだった。
フタをひねり口に持っていく。
……んー、おいしい。

一気に飲んだので、頭がキーンと痛くなる。
蒸し暑さと、怖い話の緊張感に、ほどよく冷えたアイスコーヒーは、一服の清涼剤だわ。



『2、オレンジ・ジュース』



私は遠慮なくいただくことにした。
みんな、思い思いのものを手に取る。
私は、その中からオレンジ・ジュースを選んだ。
果汁百パーセント。
ふたを開け、口に持っていく。
……んー、おいしい。

緊張していたせいか、ほどよく冷えたオレンジ・ジュースは喉越しが心地いいわ。



『3、トマト・ジュース』



私は遠慮なくいただくことにした。
みんな、思い思いのものを手に取る。
私は、その中からトマト・ジュースを選んだ。
生のトマトは食べれないけど、トマトジュースなら飲めるわ。

ほどよく冷やしてあったので、つい一気に飲んでしまった。
おかげで、すぐなくなってしまった。
みんなはまだ味わって飲んでいるようで、私はちょっと手持ちぶさた。
なんだか、ますます蒸し暑くなってきたわ。

これは、一雨来るかもしれない。
私達が帰るまで、雨が降らないといいのに……。
私は、そんなことを考えながら、みんなが飲み終わるのを待った。



『4、ウーロン茶』



私は遠慮なくいただくことにした。
みんな、思い思いのものを手に取る。
私は、その中からウーロン茶を選んだ。
甘いのが苦手な私は、果汁百パーセントといえどジュースはあまり飲めない。

やっぱり、のどが渇いたときはお茶に限るわ。
本当は熱い日本茶がいいんだけど、日野先輩がおごってくれるならゼイタクはいえない。
ウーロン茶には、色々な種類がある。
そのウーロン茶は、日本ではめずらしいポーレイ茶というお茶だった。

ウーロン茶とは思えない、きれいな紅色をしている。
私は、そのポーレイ茶を一気に飲んだ。
……んー、おいしい。
後味にちょっとクセがあるけど、けっこういけるわ。
後で日野先輩に、このお茶のメーカーを聞いておこう。

今まで怖い話をしてきたので、なんとなく気持ちがどんよりとして、自分が別の世界にいるような気がしていた。
でも、この冷たいウーロン茶のおかげで、ちょっと現実に引き戻されたわ。



『5、最後の残り物』



私は、この会を取り仕切っている立場だから、最後に残ったものを取ろうと思った。
最後に残ったのは……、なんと、おしるこドリンクだった。
「……」
私は思わず言葉を失った。
日野先輩は、こんなものを本気で選んで買ってきたのかかしら。

冗談で選んだんじゃないかな。
日野さんが、そんな困り顔の私を見ていった。
「あっ、倉田!
ラッキーだなぁ。
俺、おしるこドリンク大好物でさ。
しかも、冷たくひやしたやつ。
いつものクセで、つい選んじゃって……」

……そうか、日野さんは真面目に選んだのね。
でも、冷たいおしるこドリンクなんて売ってるのかな。
私は、フタを開け思い切って飲んでみた。
……あっ、けっこうおいしい!
へえ、新しい発見だわ。
私は、ニコニコしながらそれを飲んだ。



『差し入れ』



みんなが、あらかた飲み終えると、日野さんは身を乗り出した。
ようやく、最後の話をしてくれるみたい。
みんな、構える。

……そういえば、日野さんて、怖い話が好きなのかしら。

あまりそういう話を聞いたことはないけど、人は見かけによらないし。
それが、私の表情に出てしまったみたい。

日野さんは、チラリと私を見ると、ニヤリと笑った。
まるで、安心しろといいたそうに。
私は、何だか心を読まれたようで気恥しくなり、目を伏せた。



『1、興味ある』(追加)



そうだろ。
だったら、その倉庫の中にあるものを見てしまった奴の話をしてやろう。



『3、死体を燃やしたような臭い』(変更)
お前ら、死体を燃やした臭いってかいだことあるか?
俺も、直接はないんだけどさ。
俺の母親の田舎のじいさんが聞かせてくれたんだ。
昔は、今みたいにちゃんとした火葬場なんてなかったんだ。
八本の鉄の棒で作られた、四角柱の枠組みだけの質素なものが火葬場として使われていたそうだ。
今でも、その枠組みが残っているところがけっこうあるんだ。
その中央に死体を置いて、木やわらと一緒に燃やしたんだって。
俺もそれを、近くで何回か見たことあるけど、あんまりいいものじゃないよ。
その鉄の枠も、中央の土もどす黒くてね、つい嫌なことを想像してしまった。
なんで、壊さないで残しておくんだろうね。
田舎では『葬礼場』とかいってたっけ。
一つの村には一つくらいあってさ。
それがけっこう民家と近いんだ。
人を燃やすときは、半日以上もかけて焼くそうだけど、またその臭いがすごいんだって。
言葉ではいい表せないほど臭いそうだ。
自分が生活している空気と一緒に、死体を焼く臭いが流れてくるんだぜ。
俺のじいさんもいってた。
あの臭いは何回もかいだけど、慣れることはできなかったって。
俺は思ったよ。
じいさんがいってた死体を焼く臭いって、きっとこんななんだってね。
そう思ったら、胃の中のものがぐっとこみ上げてきた。
でも、俺はそれをのどの奥にだ液と一緒に飲み込んだよ。
飲み込んだとき、その臭いも一緒に飲み込んだ気がして嫌だった。
このまま、長くここにいたら気が変になってしまうかもしれないと思いながらも、電気のスイッチを捜した。
その時だった。
どこからか赤ん坊の泣くような声が聞こえてきたんだよ。
その声は、倉庫の奥のほうから聞こえてくるようだった。
赤ん坊の声と一緒に、水がチャプチャプ揺れるような音も聞こえてきた。
俺はびっくりしたよ。
そして、何事かと思ったよ。
部屋はかなり奥行がありそうだが真っ暗で何も見えない。
いろいろなものがゴチャゴチャあるみたいだったが、わけのわからないものばかりだ。
へたに歩くと、危ないからな。
電気さえつけばはっきりとわかる。
何とか電源を捜そうと必死になった。
その時だ。
俺の後ろで、何かが倒れる音がした。
見ると、岩山が倒れて、つらそうに息を吐いているじゃないか。
「おい、岩山」
「……日野。俺、気持ち悪い。この部屋、臭いぜ。もう、だめ……」
岩山の野郎、この臭いにがまんできなくなったんだな。
俺はいったよ。
「情けないぜ、岩山。これくらいでダウンか?
きっと、こういうのが死体を焼いたような臭いっていうんだな。そう思わないか?」
岩山に聞いたって、返事はうなり声だけだよ。
そういう俺も、限界寸前だったんだけどな。

馬鹿いうな。
お前、死体の臭いってかいだこと、あるのかよ?
俺はないな。
だから、もし臭いをかいでもわからないんだ。
嫌な臭いだろうとは思うけどな。
俺がかいだのは、ホルマリンの臭いだったのさ。

ホルマリンてわかるよな?
あの、動物の標本とかをつけとく溶液のことさ。
まるで、あのビンを部屋中にぶちまけたようなきつい臭いだった。
俺は、一瞬、麻酔を打たれたみたいになってな。
感覚が、ぶっとんじやったよ。

ふらふらになって、視界がぼやけて意識がもうろうとし始めた。

こりゃ、中に長い間いると危ないなと思いながら、電気のスイッチを捜した。
その時だった。

どこからか赤ん坊の泣くような声が聞こえてきたんだよ。
その声は、倉庫の奥のほうから聞こえてくるようだった。
赤ん坊の声と一緒に、水がチャプチャプ揺れるような音も聞こえてきた。
俺はびっくりしたよ。

そして、何事かと思ったよ。
部屋はかなり奥行がありそうだが真っ暗で何も見えない。
いろいろなものがゴチャゴチャあるみたいだったが、わけのわからないものばかりだ。
へたに歩くと、危ないからな。
電気さえつけばはっきりとわかる。

何とか電源を捜そうと必死になった。
その時だ。
俺の後ろで、何かが倒れる音がした。

見ると、岩山が倒れて、つらそうに息を吐いているじゃないか。
「おい、岩山」
「……日野。俺、気持ち悪い。
この部屋、臭いぜ。もう、だめ……」
岩山の野郎、あまりホルマリン臭いんで、よっぱらっちまったのさ。



『1、岩山を放って、電源を捜した』(変更)
その時、ちょうど俺の頭になにか得体のしれないものが当たった。
その時、ちょうど俺の顔になにか得体のしれないものが当たった。




『1、電源を捜す』



……日野先輩。
……もう、だめ。
私も、意識がもうろうとしていく。
なんて臭いなの。
これは、本当にホルマリンの臭いなのかしら?



『2、オレンジジュース』(変更)
僕たちを、だましたっていいたいのか?
僕たちに、うそをついたっていいたいのか?
なあ、坂上。この溶液は、ちょっと見たところ水みたいだろ?


おまえが新聞部で飲んだ飲物。覚えてるだろ?
すでにあの中に、痛みを感じる神経を麻痺させる薬が入っていたのさ。お前らの手足を切り取るときなんか最高に楽しかったぞ。
お前たちが、少しでも痛がっていたらさすがに俺はちゅうちょしたかもしれないけどな。


おまえが新聞部で飲んだ飲物。覚えてるだろ?
すでにあの中に、幻覚を見せる薬を入れてあったんだよ。あのときは笑わせてもらったよ。みんな、この倉庫の中をぐるぐると、たださ迷い歩いていたんだ。喜劇だったよ。
久しぶりに面白いものを見せてもらった。


おまえが新聞部で飲んだ飲物。覚えてるだろ?
すでにあの中には、お前たちの体内を軟化させる薬が入っていたのさ。
おかげで、お前たちの手足をもぎ取るときは楽だったよ。
カッターで、すーっと切るだけでよかったんだぜ。関節なんか完全に軟骨化していたよ。

誰なの、そこに立っているのは……?
真っ白い髪をした男……白髪鬼。
……まさか?
……もう……だ……め…………。

……………………私は生きている。
なのに、手足の自由が効かない。
縛られているの?

薄暗い電球がついているだけで、周りの景色はよく見えない。
ここは……、ここは、あの倉庫?

……聞こえる。
赤ん坊の泣き声が聞こえる。
日野さんのいっていた、あの泣き声だわ。
どこから聞こえてくるのかしら……。
泣き声は、四方から私を包むようにして聞こえてくる。
……まだ、意識がもうろうとしている。

何だか、とても心地好い。
何だか、とても暖かい。

……わかった。
私の体は、水の中に浸っているんだわ。
胸の辺りまで、生暖かい水の中に、私はいるのよ。
これは、水……?
辺りがあまりに薄暗く、そして視界も定まらず、よく見えない。

時々、体を刺すような痛みが走るけれど、それがまた逆に快感を与えてくれる。
意識をはっきりと持とうとさえ思えない。
……けだるいこの感覚。
もう、どうなってもいい。
……生きているのが面倒臭い。
すべてが無気力だわ。

……私は、どうしてしまったのかしら。
「……先生。順調に成長していますね」
日野さんの声。
とろんとした視界の片隅に、日野さんの姿がかいま見えた。
日野さんが腕を組み、満足そうな笑みを浮かべながら私のことを見ている。
日野さんのとなりに、白衣の男が立っていた。
髪の毛は真っ白。

あの人が、白井先生かしら。
白井先生もまた、満足そうに笑っている。
「日野君。もうすぐ、あの七人も君の仲間になるからね。
そうしたら、仲よくしてあげなさい。
たとえ、嫌いな連中でも、新しく生まれ変われば、運命共同体なのだから」

「もちろんですよ、先生」
何をいっているのかわからない。
日野さんは、私のほうに近づいてきた。
それにつれ、私の視界も少しだけはっきりしてきた。

私がいるのは、かなり大きな水槽のようだった。
透明の水槽。

その水槽の縁に日野さんは腕を組み、そこにあごを乗せた。
そして、私を見る。
「……なあ、倉田。
俺はな、一週間前にこの倉庫に忍び込んで、白井先生に捕まったんだよ。
そして、生まれ変わったのさ。
……一緒に忍び込んだ岩山は死んじまったけどさ」

そういって、部屋の片隅に目を向けた。

そこには、薄桃色の肉の塊が積んであった。

それが、ぶよぶよと動いている。
あの肉の塊は生きている。

耳をすますと、その肉の塊が泣いていた。
あの赤ん坊の泣き声で……。

「ああなっても、生きているんだ。
そして今は、俺の仲間さ。
こうやって人間の姿をとどめているか、いないかだけの違いだけどな」
そして、もう一度私を見て笑った。

「……お前がそのままの姿でいられるかは、お前次第だろうなあ。
うまく融合できれば、一緒に仲間を増やそうな。
いひひ……」
そして、生きている肉の塊と反対方向に目を向けた。

そこには、たくさんの人間の手足が積んであった。
……そうだったのね。
私は縛られているんじゃないわ。
私の手足の自由が効かなかったのは、手足を取られたからだったのよ。
あれは私の手足……。

無造作に山積みにされた手足は、まるで壊れたマネキンの残がいを思い出させる。
あそこに、私の手足に混じって岩下さんや新堂さんの手足も一緒にあるのね。
不思議と、私は悲しくなかった。

それは、この溶液の中に浸る心地好さも手伝っていたと思う。
私の手足を取った傷口から、何かが私の身体の中に入ってくるのがわかる。
それは、体内に染み込むように、身体中にじわじわと広がっていく。

……そして、そこから、私の新しい手足が生えていくようだった。

「あぎぃ……ギャアーーーーーッ!」
私の左隣りで、女の悲鳴が聞こえた。
見るのも、面倒臭い。
それでも、反射的に少しだけ頭を傾けた。

私の左隣りには、岩下さんがいた。
私と同じように、手足を取られ、溶液に浸っていた。
彼女の皮膚は、生暖かい溶液に浸っているのにもかかわらず、水分を失い乾燥したそれのようにパリパリとはげ落ちた。

筋肉もそげ落ち、骨も溶け、そして肉の塊に変貌していった。
それを見ても、私は恐ろしささえ感じない。
それもまた運命と受けとめてしまうような順応性がある。

完全なる肉の塊になってしまうと、艶かしい肉色の身体をてからせながら、彼女は、赤ん坊のうぶ声をあげた。
……生まれ変わったのね。

「やあ、岩下。
お前は、うまく融合できなかったようだな。
でも、心配ない。
あとの面倒は、俺が見てやるからさ。
くひひひひ……」
日野さんは、笑いをこらえるように口に手を当てた。

そして、もう一度私を見ると、溶液の中に手を浸し、その手で液体をかき回し、遊ばせた。
「なあ、倉田。
この溶液は、ちょっと見たところ水みたいだろ?
でも違う。
この中には、あらゆる細菌を意図的に入れてあるんだ。
いわば培養液なのさ。

そして、その主成分となっているのが、白井先生が生み出した、人間よりも高度な知能や能力を持った細菌なんだ。
今、世界は爆発的な人口増加時代を迎えている。
そして、このままいけば間違いなく食料難がやってくる。
でも、安心しろ。

この細菌を肉体と融合させれば、何も食べなくとも生きていけるのさ。
温度の変化や、環境の変化にも、何の問題もなく馴染むことができるんだ。
素晴らしいだろ?

……でも、残念なこともある。
それは、自分が自分でなくなることさ。
この細菌が身体に馴染めば、完全に自分の意志も肉体も乗っ取られる。
今までの記憶や感情も、すべてなくなってしまう。
それだけが残念だ。
俺も、もうすぐそうなる。

十日ほどで、完全な新生命体に生まれ変わってしまうんだ。
……自分が自分でなくなる。
それが、凄く悔しい。
そして、憎らしい。

なあ、倉田。
このメンバーは、どういう基準で集めたか知っているか?
俺が気にくわない奴を集めたんだよ。
顔の気に入らない奴、性格の気に入らない奴、見ててむかつく奴、なぜだかわからないけれど、嫌な奴。

そんな連中を集めたんだよ。
倉田。俺な、お前のこと嫌いだったんだよ。
だから、お前も俺と同じ運命を味あわせてやりたかったんだよ。

お前が新聞部で飲んだオレンジ・ジュース。
覚えてるだろ?
すでにあの中に、感覚をマヒさせる薬が入れてあったんだよ。

……残念だよな。
ああ、倉田。
お前の顔の皮が剥がれていくぞ。
お前も岩下と一緒だな。
ただの肉の塊に変わっちまうんだな。
ざまあないな。
……どうした、倉田?
お前、溶け始めてるぞ。

なあ、おい。
俺の声、聞こえているのか?
聞こえているなら、返事してみろ。

ひゃはははは……、返事できるわけないよなあ。
お前の声、もう、赤ん坊みたいだものなあ。
お前の面倒、見てやるよ。
俺は融合に成功した。
そして、お前は失敗した。
その結果お前は、化け物のような肉の塊に変わってしまった。

だから、喜んで面倒見てやろうな。
……もう、意識はないのか、倉田?」

……違うわ、日野さん。
私は何も心配しなくていい存在に生まれ変わったのよ。
なったものにしかわからない、究極の快感。
残念だけど、日野さんはそれを味わうことができない。
私は何も考えず、動く必要もない。

ただ、無限の時を生きるだけ。
かわいそうなのは、日野さんよ。
……これから、私の新しい人生が始まるんだわ。



『1、戦うしかない』



……私は、気になって日野さんに聞いてみた。
「あの……、岩山さんのことは警察の人に話したんですか?」

「……いや、話してはいない。
思い出したくもないからね。
俺は、あの倉庫のことはできるだけ記憶から消そうとした。
いや、今もしているんだよ……。
でも、忘れられない。
あたりまえだ、忘れられるわけがないんだよ」

一瞬、日野さんがぼやけて見えた。
水の波紋のように、日野さんの顔が揺れて見える。
日野さんは、いやらしい笑いを顔に浮かべていた。
これから、私たちになにかをしようとしているのが本能でわかった。

このままじっとしていたら、なにをされるかわからない。
……しかし。
もう今は、なにも考えたくない、なにも行動したくないという気持ちに支配されている。

「君達、いい感じに薬が効いているようだね。
ふふふ、あの飲み物には薬が入れてあったのさ。
お前たちは、俺たちと同化するんだ。
俺たちの仲間になれば、それぞれの優秀な才能を最大限に発揮することができる。
どんどん俺達は同化していけば、最終的には誰にも劣ることのない一つの生命体になれるんだ。
すごいだろう。
君たちは喜ぶべきなんだ。
そして、この研究を成功させた白井先生にも感謝すべきだ」
その時、ぼんやり揺れている日野さんは手のひらを私達に向けた。

手のひらには一つの顔があった。
その顔は、口をもごもごと動かしていった。
「初めまして、俺は岩山だ。
これからみんなと一心同体になるわけ。
仲良くしよう。よろしく」
私は、言葉もなくそれを見ているだけだった。

よく見ると日野さんの皮膚には、取り込まれた人たちであろう顔がびっしりとうごめいていた。
彼の、のど仏、ほおや首、額など……、たぶんこのぶんだと体中がそうに違いない。
その顔は、思い思いになにかをぐちゃぐちゃ私にいっているみたい。

すると、だんだん日野さんの皮膚は薄桃色の半透明に変化してきた。
柔らかそうに、左右に揺れながら。

その時、目の前がふっと薄桃色の幕をかけたように見えた。
どうする!?

無気力のまま最期を迎えるの!?



『1、迎えよう』



もう私達は、このまま取り込まれて最期を迎えることになるのかしら。
日野さんは、体中から薄桃色の触手を出して私達六人を取り込もうとしている。
きっと、みんなと同化したほうがいいのかもしれない。

このままこの学校で凡人として過ごすなら、きっとこのほうが……。



『2、最後の抵抗をこころみよう』(追加)



もう私達は、このまま取り込まれて最期を迎えるのかしら。
日野さんは、体中から薄桃色の触手を出して私達六人を取り込もうとしている。
もう、私達は薄い膜に被われてしまっている。
私は、急にこの化け物に自分が同化されることに抵抗を感じた。

無気力な自分の中でもなにかを感じる。
そして、最後の抵抗を試みようと思った。

私は目をつぶり、こん身の力と気持ちを込めた。
しかし、私のこの気持ちとは裏腹にみんなとの同化は進んでいるらしい。

すると、ふと体中が軽くなった。
もう同化が終わったみたい。
私は、そっと目を開けた。

すると、なにごともなかったように、私は前と同じ場所に立っていた。
私は、みんなと同化したわけではなかったの?
そして異形の者として、体中に同化した人々の顔をつけているはずではなかったの?
「……見事だ」
私は、その声に振り向いた。

そこには白髪鬼……白井先生が立っていた。
「取り込まれて、同化した者たちはみな姿を持たない。
その中で、一番精神力が強い者だけが生前の姿を保つことができる。
日野も精神力が強いほうだったが、これほどまでに他の者を押さえつけられる精神力はなかった。
精進しなさい。
そうすれば、これまで取り込んだ者、これから取り込む者のいいところだけを引き出して、それを自分の思うがままに扱うことができるようになる。
もちろん自分は自分として存在することは可能だ。
実に素晴らしい。
私の傑作だ。
また君の様子を見にくるからね」

そういって、白井先生は去っていった。
……本当に、先生のいう通りなのかしら。
その時、私の頭の中に響いた。

「助けてよ。
ここから出たい。
どうしてこんなところに……」
同化された者たちのざわめきだわ……。
そして、同時に私の頭の中に、一つの欲望が頭をもたげているのに気づいた。
そうよ、これからどんどん同化して究極の生命体になってやる……。

絶対に。

(追加)

腹の底から、笑いがこみあげてくる。
この世の生物の中で、最も美しく、最も強く、最も賢い自分の姿を思い浮かべて、私は酔いしれたような気分を感じていた。