2、人の顔がうごめいていた【PS追加ENDケツのバラード】 | ナノ
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そうなの。小さな人間の顔がひしめきあってたの。
その中にどこかで見たような顔が……。
いくら興味がなくっても、私だってテレビは見てるから、ケツの顔ぐらいわかるわ。
彼はけっこう有名だったしね。

「ケツはね、これからずっと私の中で生き続けるの。
これからは、私のためだけに歌ってくれるのよ」
早苗ちゃんは、明るい声でそういったけど、すぐ、うつむいてしまうの。
「これしか、方法を思いつかなかったの。
こうしないと、彼を助けられなかったの!」
最後には、泣き声になってた。
「どうしたの? 早苗ちゃん。泣いてちゃわかんないよ」
「……うん、あのね、昨日のコンサートでね……」

早苗ちゃんの話によるとね、コンサートのラスト……、アンコールの時に事故が起こったらしいの。
興奮した熱狂的なファンが、警備員を踏み倒して、ステージに乱入したんだって。
それを見た他のファンの子達も、我先にと駆け出して、会場内は大混乱!

そうなると、もう止まらないよね。
ほとんどが若い女の子だから、一種の集団ヒステリーじゃないかなぁ。
早苗ちゃんの席は、二階だったの。
それで、上から呆然と見ているしかなかったって。

あわてて照明がつけられた時には、ケツは、ファンの子達に押しつぶされて、血を流していた……。
もうすでに息はなく、瞳孔も開いていたって。
ファンって、怖いよね。
ファンそのものじゃなくて、その思いっていうのかな……。

誰にでもいえることだけど、思い込みの激しい人っていうのは、極端から極端にはしるからね。

……早苗ちゃんの話を続けるよ。
早苗ちゃんは、ケツが死んじゃったのが、悲しくて……。
それも、突然あんな形でだったから、よけいにね。
どうして、彼が死ななければならなかったのか。
もう一度、彼に歌わせてあげたい。

ただそれだけの思いで、早苗ちゃんは、彼女の一族に伝わる秘術を、行う決心をしたの。
その秘術までは聞けなかったけど、きっと、例の紙切れが関係あるんじゃないかなぁ?
そして、その結果が……。
もうわかってるよね。

そう、早苗ちゃんの口の中の人達のことだよ。
早苗ちゃんの一族はね、代々のご先祖様たちを、あの秘術で体内に寄生させているんだって。
たくさんの人の顔は、早苗ちゃんのおじいちゃんや、おばあちゃん達だったのね。

「ケツは一族の人間じゃないから、馴染むまでちょっと体が辛いけどね」
そういって、早苗ちゃんはやっと泣きやんだわ。
彼女の口もとから、やさしいバラードが、聞こえたような気がしたの。

……見た目にはとってもグロテスクなんだけどね。
早苗ちゃんとは、それまで以上に仲いいよ。
もう体調もすっかり良くなってるみたいだし。
気分がいい時は、よく歌ってるよ。
誰かって……、決まってるじゃない。

この話、信じるも、信じないも、恵美ちゃん次第だから。
ふふふ、じゃあ、私の話はこれでおしまい。
次は誰なの?

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