風間台詞3 | ナノ
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隠しシナリオスンバラリア星人現る



『1、風間さんの話に相づちを打つ』



私は、ここで一芝居打つことに決めた。

「うん、うん。そうよ。 その通り。
よくわかったわね。
あなたも私の正体を見破るなんて、なかなかのものよ。
よかったら、あなたも私の手伝いをしてくれるかしら?
それでね、その特別命令とは……、スンバラリア星人地球撤退なのよ。
実はね、この惑星は私たちが住めない環境に変わりつつあるということが判明したのよ。
その第一がオゾン層の破壊よ」
風間さんもうなづいていった。

「そう、そう。僕たちスンバラリア星人は、お肌がとーってもデリケート。
紫外線が多くなると、すぐに皮膚細胞が破壊されちゃうんだよね。
そうか、地球がそんなに危ない状態だなんてしらなかったよ。
わかった、今すぐ地球上のスンバラリア星人の撤退をはかろう」
風間さん……、いや、スンバラリア星人は、ワッペンのような物を取り出すと片手をあげた。

一瞬、空が光った。
私はそのまぶしさに目を閉じた。
外はもう暗かったので、昼間のように辺りが明るくなっているわね。

その明かりはすぐに消えて、またもとの夕闇が戻ってきた。
私はそっとまぶたを開いた。

もう、そこにはスンバラリア星人の姿はなかった。
今頃、スンバラリア星人の同胞を避難させるべく、前・風間さんは東奔西走しているのだろう。
取りあえず、ここは逃げるが勝ちだわ。

私は鞄をつかむと、夜の廊下を疾風のように走った。
そうよ、あれは悪い夢だったのよ。
そう、自分にいいきかせて……。



『3、もう家に帰りたいと頼んでみる』


これ以上、話がこじれるのは、ごめんよ。
どうして、私が風間さんのくだらない話につき合わなきゃならないの。
私は、学校であった怖い話を聞きに来たんだから。
宇宙人と友好関係を結ぶために来たんじゃないわ。
私は、もう家に帰りたい。

何だか、泣きたくなってきた。

「風間さん、お願いです。
私はもう帰りたいんです。
お願いですよ。 許してください。
私を解放してください」
風間さんは、私の話を真剣に聞いていた。
そして、ゆっくりと頷いた。

……よかった。
風間さんにも、私の誠意が通じたのね。
「……わかった。君の任務がどんなにつらいものだったかは、噂で聞いている。
帰りたいと願うのも、もっともな話だ。
……あの苦しいウンタマル星での戦い。
それが終わると、休む間もなく地球侵略の命令だ。

……僕が一番乗りだと思っていたのだが、さすがは、歴戦の勇士。
僕より先に、地球侵略を始めていたのだからな。
……わかっている。 君の受けた特別な任務はわかっているよ。
何てったって、歴戦の勇士だものな。
君は、スンバラリア星人の鏡だものな。

……しかし、歴戦の勇士でも故郷が恋しくなるもんなんだな。
僕は、少し安心したよ。何だか、嬉しい気持ちだ。
わかった。僕が何とかしてみよう。
スンバラリア星に帰ろうじゃないか!」
「は……?」

風間さんは、呆気にとられる私を残し、窓際に立った。
そして、ポケットからオモチャのワッペンのようなものを取り出し、それを空に掲げた。

「本艦へ緊急通信! 本艦へ緊急通信!
至急、応答願います! 至急、応答願います!
〜!!」

突然、空が光った。
もう真っ暗だった空が、一瞬だけ昼間のように明るくなった。

「……もう、大丈夫だからね。
怖かったろう。地球は怖いところだもんな」
風間さんは、そういい、私の背中をポンポンとたたいた。
……逃げよう。
逃げるのが、一番いい。

それしか、ないんじゃないかしら。



『1、逃げだす』



風間さんは、また空を見上げた。
そして、ワッペンを振りながら、ラジオ体操のような変なポーズを取り踊り始めた。
……風間さんは、危ない。
私は、ゆっくりと席を立った。

「どこ行くの?」
風間さんの声が、私の背中に突き刺さる。
……逃亡、失敗。
「あ、ちょっとトイレに……」
「何をいってるんだ。 もうすぐ迎えがくるんだぞ。
今の僕の通信を聞いただろう?」



『2、もう少しだけ様子をみる』



いや、ちょっと待って。
逃亡に失敗したら……。
ここでへたに動いて、まずいことになりたくはない。
もう少し様子を見たほうがいい。

風間さんは、また空を見上げた。
そして、ワッペンを空に掲げて太極拳のようなポーズを決めている。
……風間さんは、完全に壊れている。
私でも直しようがない。
風間さんは目をつぶったままつぶやいた。

「宇宙のパワーを感じるよ。
君も、体中で受けとめてごらんよ。僕のテレパシィが通じたんだよ。ほら、もうじき僕らの迎えがやってくるよ」



『2、宇宙人なんていない』



…宇宙人なんていない。
そんなことは、絶対にあり得ないわ。
気をしっかり持たなくちゃ。

風間さんは、自分がスンバラリア星人なんだと思いこんでいるだけに違いない。
本当によくわからない人だわ。

私に残された選択肢は、この危険な男から逃げること。
そうよ、それしかないのよ!!
ドアに向かって駆け出した私の腕を、風間さんが強く掴んだ。

「どうした? ……外に誰かいないか、確かめようとしたのかい? 大丈夫。 誰もいないから。ふふっ、超音波を飛ばせば一発でわかるじゃないか」
この人、何をいってるのかしら。
どうしよう。
ますますヤバイ展開に……。

「ところで君、任務はうまく進めているかい?」
風間さんは、突然真剣な顔つきになった。
に……、任務?
風間さんの顔は、私の頬にくっつきさうなほど近寄っている。
耳にかかる息が生暖かい。
しかも、彼の口から出た言葉といったら……。

「地球侵略だよ。いやあ、しかし、こんなところで仲間に会えるとは。 嬉しいなあ。そうだ、そろそろ定期報告の時期だよね。故郷に一度戻らなくちゃ。今から迎えを呼ぼうか」
風間さんは、一人でしゃべりながら、窓際に立った。

そして、ポケットからオモチャのワッペンのようなものを取り出し、空に掲げる。

「本艦へ通信! 本艦へ通信!
定期報告にまいります!
〜!!」

一瞬、窓の外が光った。
暗くなっていた空に、カミナリのような光りが射す。

それを見て、風間さんは満足そうに微笑んだ。
さらに、ワッペンを振りながら、ラジオ体操なような変なポーズを取り、踊り始めた。

……この人、危ないわ。

私はゆっくりと席を立った。

「どこ行くの?」
風間さんの声が、私の背中に突き刺さる。
……逃亡、失敗。
「あ、ちょっとトイレに……」
「何をいってるんだ。もうすぐ迎えがくるんだぞ。
今の僕の通信を聞いたろう?」



※以下同文※



「……あ、そうでしたね。 あはははは……」
迎えが来る?
いったい、何が迎えに来るっていうのよ。

「あ、来た、来た」
突然、風間さんは部室の入口のほうに目を向けると、嬉しそうに手を振った。
?????
私は、振り返った。

「きゃっ!?」
私は、一メートルほど飛び上がったかもしれない。
それほど、驚いてしまった。

部室の入口には、頭の代わりにアンモナイトを乗せたような怪物が立っていた。
……なんなの、こいつは!!
「長官! 長官自ら、わざわざ出向いていただけて光栄でございます!」
風間さんが敬礼している。
……なんて、手の込んだイタズラなの。

こんな、オモチャみたいなマスクをかぶったって、私は驚かないわよ。

……そうよ!
これはきっと日野先輩の陰謀なのよ。
日野先輩と風間さんはグルだったんだわ。
もう、最初から仕組まれた罠だったのね。
……ひどいわ。

みんなでよってたかって私のことを脅かして、楽しむなんて。
もう、許せない!


(男主人公)
……なんだってんだ。→……ひどいや。


『2、風間さんにつかみかかる』


「ふざけないで! どこまで私をばかにしたら気が済むのよ!! 最上級生だからって、いばらないでーーーー!!」


(男)
いばらないでーーーー!!→いばるなあーーーー!!


私は、そういうと風間さんの胸ぐらをぐいとつかんだ。
「うおおぉーーーー!!」
風間さんが急に雄叫びをあげた。
私はびっくりして飛びのいた。
するとどう、風間さんとアンモナイト野郎は、妖しい光を体から出し始めた。
そして、彼らの筋肉は盛り上がり、びちびちと服を引きちぎっていく。

風間さんの顔の皮膚もやぶれ、アンモナイト野郎と同じ頭が出てきた。

……これは、日野さんのイタズラじゃないわ。
いくら日野さんでも、冗談でここまでの特殊メイクはさすがにしないと思う。
そこには、筋肉もりもりのアンモナイト野郎……、いや、スンバラリア星人が二人立っていた。

「僕たちは、自分に危険が迫ると戦闘体形に変身するのだ。
お前はスンバラリア星人ではないだろう? お前は、スンバラリア星人になりすましたスパイか!? やっぱりそうか!! スパイとわかった以上、死んでもらおう!!」

前・風間さんは、長官と共にジワジワと私に近づいてくる。
口のヌメヌメした触手を伸ばしながら……。

その時、白い光の線が私の両ほほをかすめるように、ものすごい勢いで通り過ぎた。
それは、二人のムキムキスンバラリア星人に当たった。
しゅうしゅうと音をたてながら、スンバラリア星人が溶けていく。
こげ臭い匂いが、辺りに立ちこめた。

私は、恐る恐る後ろを振り返る。

「こ、これは!?」

そこには、レーザーガンのようなものを持った美青年がたたずんでいた。
なにか、ポーズを取っているみたい。
青年は、ぴちぴちの銀のラメ入りのウェットスーツのような服を着ている。

髪の毛は、腰まである紫のサラサラストレートヘアーだ。
彼の瞳も薄い紫色をしている。

「大丈夫かい? 安心してくれ、僕は宇宙警察の者だ。以前、スンバラリア星人が地球侵略をくわだてているという情報が入手されてね。心配で俺が立ち寄ったらこうさ……。
もう少し遅かったら、君も地球人も殺されていただろう。
本当に、間にあってよかった。
じゃ、俺はこれで」

そういうと、その青年は体から光を発した。
そして、光の玉に変形すると部室の窓を割って飛び去っていった……。

二人のスンバラリア星人は跡形もなく消えていた。
地球は、あの青年のお蔭で危機を脱することができたわけだ。
……でも。
これは、ひょっとして全部私の夢だったのかもしれない。
いいや、そうよ……。
ふと、私は窓の外を見る。

空には、満天の星がまたたいていた。



『3、こうなったら、徹底的に相手の話に乗って乗って乗りまくる』



でも、待って……。
このまま日野先輩たちにからかわれてばかりじゃ、ちょっとシャクよね。
私をからかうんだったら、それに徹底的に乗りまくっちゃえ!
私は、長官に敬礼をした。

「長官、お久しぶりでございます。長官の特命を受けて特殊任務に就いております、でございます」

長官は、わけのわからない言葉をしゃべっている。

私はとっさにいった。
「事情がありまして、こうやって彼と知り合った次第でございます。
ところで、長官。そのお姿はいいとしましても、スンバラリア語をなんとかしませんと、誰かが聞いていた場合、不審に思われます。
こちらの言葉に直したほうが賢明だと思いますが」

私は思った。
あの姿をしている時点で、怪しさが大爆発しているのに、今さら言葉もなにもないわよね……。
いや、細かいことは気にしてはいけない。

長官は、しばらく考え込んでいるようだった。
「……わかった。 君のいうとおり、こちらの言葉で話そう。
君のいうことには、いつも間違いがないからな」
長官は私を見ながらいった。
私は長官に提案した。

「実は、私はこの地球に特命を受けてやってきたわけですが……。
地球人について、密かに調査してわかったことがあるのです。
地球人には、霊の世界といわれるものが別にあるということが判明したのです」

長官と風間さんは、興味深げに私の話を聞いている。
私は、彼らをまくしたてるようにいった。

「なんでも、その霊界と呼ばれるところには、地球人も憧れる楽園があるとか。私も、独自に調査したのですが。なかなか普通の人は行けないそうです。……しかし、私はついに発見したんですよ! その楽園への行きかたを!!」
長官と風間さんが感嘆の声をあげる。

「そこには、どうやったら行くことができるのか!」
私はもったいつけていった。
「知りたいですか?」
二人とも大きくうなづいている。
「では、二人とも裸になってください」

二人は、私のいうことをきいてくれるだろうか?



『1、きく』



二人は声を合わせていった。
「……よし、わかった!」
あんまり二人の裸は見たくないけど、私をだまそうとした罰よ。
悪いけど、恥ずかしい格好になってもらうわ。

「脱いだ服は私に渡してください。そして、窓際に二人で並んでください」

私は、いいなりになる二人を見てちょっと得意だ。
本当に日野先輩たちは、ワルノリしやすいんだから。
「目をつぶって、精神集中してください」
私は脅かそうと思って、長官が持っていたおもちゃのガンを二人に向けた。

「さあ、こちらを向いてください」

二人は私を見て驚いた。
「な、なにをするんだ。長官に銃を向けたら、処刑されるんだぞ。馬鹿なことはやめて、早く銃をしまいなさい!!」
風間さんは、長官をかばうようにして私にいった。
「風間さん、日野先輩、もういい加減にしてください。
穏和な私でも、もう我慢できませんよ。……そんなに、冗談が好きなら……。こうしてあげますよ!」
私はそういうと、おもちゃのガンの引き金を引いた。
そのとき……。

ものすごい閃光と、衝撃が私を襲った。
私は、衝撃で後ろに吹き飛ばされてしまった。
なにが起こったのか、私には理解できない。

ふと我に返って前を見ると、そこには風間さんと長官が変わり果てた姿で横たわっていた。
「先輩!!」
私は泣きそうになった。
そして、二人に駆け寄った。

「うっ!」
私は吐きそうになった。
風間さんと、日野先輩だと思っていた二人はアンモナイト野郎の格好をして死んでいた。
これは、特殊メイクなんかじゃない!!
じゃ、二人は本当にスンバラリア星人だったの!?

二人は、シュウシュウと音を立てながら溶けて跡形もなく消えていった。
私は、自分の取った大胆な行動に、今さらながら震えた。
でも、私は地球の危機を救ったのよ。
そうよ、私はヒーローなのよ!!



『2、きかない』



「もうやめた!! もうやだよ、こんな役。ここまでやるなんて、聞いてないよ」
長官が、ずるりとマスクを取った。
そこには普通の顔をした、まったく普通の人が立っていた。
風間さんがその彼にいった。

「ダメじゃないか。ちゃんと演じてくれよ。僕だって、日野に頼まれて嫌々やってるんだから」
やっぱりそうか。
日野先輩たちのイタズラだったのね。
もうこの人たちの相手はできない。
風間さんが声をかける。

「あ、ちょっと!!」

私は、そんな声には耳を貸さずに部室から出ていった。

明日は、日野先輩に聞いてやる。
これは、どういうつもりなのかを……。
まったくもう。



『1、アンモナイトのマスクを引きはがそうとする』



「ふざけないでください!」
私は、入口のアンモナイト怪物につかみかかると、そのマスクを思い切り引っ張った。
……だけど、取れなかった。

!!」
そいつは、何やらわけのわからないことを叫ぶと、口に当たる部分にワシャワシャとうごめく触手の間から、何やら生臭い海水のような透明の液体を吐き出して、勢いよく倒れた。

……そして、そのまま動かない。
マスクじゃない?
マスクじゃないということは……ひょっとして本物?

「長官!」
風間さんは、そのアンモナイト怪物に駆け寄り、揺さぶった。

「……だめだ。死んでいる……」
そして呟くと、私のことを睨みつけた。
「……お前、だましたな。
我々スンバラリア星人の地球侵略を防ぐために送られてきた地球防衛軍のものだろう!
違うとはいわさんぞ。
我々の中にもぐり込もうとしたようだが、失敗だったな。
お前を殺す!」

……風間さん、助けて。
私は、あなたが本物の宇宙人だったなんて知らなかったんです!
それに、地球防衛軍てなんですか?
そんなものがあったなんて、存在すら知りませんでした。
まさか、テレビ番組じゃあるまいし……!

私の心の叫びは、とても声になって出なかった。
私は、震えながらパクパクと口を開けたり閉じたりしているだけだった。
風間さんは、恐ろしい形相で私に一歩一歩近づいてきた。

ど、どうしよう……!



『2、とにかく謝ってみよう』



「すみません。こんなつもりじゃなかったんです。どうか、許してください。私は本当は地球人だったんです。私は、善良な一般市民であって、間違っても地球防衛軍の者ではありません」
長官を殺しておいて、善良な市民はないよね……と自分でも思った。

風間さんは、それでも私のほうに一歩一歩、確実に近づいてくる。
ダメ、私がどんなに謝ったって彼は聞いてくれない。
か、風間さん、それ以上近づいたら私たちは肌が触れてしまう。

ああっ、もう私はおわりよー!!
「……? きゃっ!」
私は叫んだ。
風間さんが、私のほうに倒れてきたからだ。
私は、どっさりと正面から風間さんを抱きかかえる体勢になっていた。

なにか、こげ臭い匂いがして私は風間さんの背中を見た。
彼の背中には、焼けただれた穴が一つぽっかりと空いていた。
私は、風間さんを抱き抱えたまま顔を上げた。

すると、部室の入り口に微笑みながら新堂さんが立っていた。
「し、新堂さん!!」
新堂さんが微笑みながらいった。
「君たちが気になって、部室の外から様子を見ていたら、あんのじょう風間は君を襲おうとした。スンバラリア星人は恐ろしいやつらだ」

私は新堂さんをよく見た。

よく見ると、新堂さんは変なかっこうをしている。
ピンクのぴちぴちしたウェットスーツに身を包み、しかも髪の毛までピンクときている。
右手には、見たこともない銃を持っている。
し、新堂さんって……、何者?

私のいぶかしそうな顔を見て、新堂さんは気づいたようにいった。

「ああ、お前、俺のことが不思議なんだろ? こんなかっこうをしているしな。そうさ、おれは風間と同じ異星人だ」
ちょっと、一難去ってまた一難じゃない。
……助けて。
私が怯えているのを感じたのか、新堂さんは続けて話した。

「心配しないでくれ。俺は、同じ異星人でもスンバラリア星人とは違う。実は、俺はウンタマル星人だ。俺の故郷、ウンタマル星はスンバラリア星人に侵略されて皆殺しにあった。俺は、たまたまほかの星に行っていて助かった。それが地球さ。 俺は、結局地球に永住するはめになった。
あの悔しさは、絶対に忘れない。偶然にも、こんなところでスンバラリア星人を退治することができるなんて、俺は今非常に嬉しい」
……あんなことがあったあとだから、もう驚きもしない。

新堂さんは、私に危害を加える異星人ではないみたい。
けど、こんなに異星人が私の周りにいていいのかしら。
こんなにも割合が高いと、私が地球人だと思っているひとでもひょっとして……。
……私らは、いつも危険と隣り合わせなのね。

「君は僕の秘密を知ってしまった。君には、悪いが記憶をいじらせてもらうよ」
そういうと新堂さんは、私の額に手をかざした。
私は、気が遠くなるのを感じた。

…………………………私は、なぜここで倒れているのかしら。
…………………………新堂さんは、私の記憶を消すのに失敗したみたい。
あの時のことは、この頭にしっかりと覚えている。

これは、新堂さんが記憶を消すことに失敗した代償なのかしら。
あれから私には、ありとあらゆる霊が見えるようになった……。
これで、怖い話の七話目もばっちりね。



『4、逃げるしかない』



逃げるしかない……。
……ダメだわ。
金縛りにあったように体が動かない。
情けないことに、足がすくんでいるみたい。
私は、なんとかこの場をごまかすしかないと思った。



『3、なんとかこの場はごまかしてみよう』



「風間さん! 誤解です!
それは長官なんかじゃない!
その怪物こそ、敵のスパイなんですよ!
それはデベロンダッタ星人ですよ!」
「デベロンダッタ星人……?」
風間さんの動きが止まった。
そして、不思議そうな顔をしている。

とっさについた嘘が、うまくいくかもしれない。
私は、一気にまくし立てた。

「そうですよ! 知らなかったんですか!?
私達スンバラリア星人のほかにも、地球侵略を狙っている宇宙人がいたんですよ。
その名はデベロンダッタ星人。
恐ろしい宇宙人なんです。
地球人を皆殺しにしようとしているんですよ」

風間さんがちょっと眉をしかめた。
そして、長官の死体に目を留めた。
「……なんて恐ろしい。
我々は地球人を食料にしようとしただけなのに……皆殺しはひどすぎるな」
どっちもどっちじゃないの!

……いや、今はそんなことどうでもいいわ。
「そうでしょ! 絶対、地球人は食料にしなければ、もったいないですよ!
だから、デベロンダッタ星人の野望を打ち砕くべきです!」

私は必死だった。
生徒会長の立候補演説よりも、私のほうが何十倍もすばらしかったはずよ。
それぐらいうまくやれたと思う。

風間さんは、あごに手を当て考え込んだ。
そして、私を見た。  
「……証拠は?」
「証拠……ですか?」
「そうだ。証拠を見せてもらおう。

この長官がデベロンダッタ星人だという証拠でも、君が本物のスンバラリア星人であるという証拠でも、どちらでも構わない。
とにかく、君が地球防衛軍のスパイでないという証拠を見せてもらおうか」
……何という展開。

風間さんて馬鹿だと思っていたのに、まさか証拠を求めてくるとは……。

どうする?
どうするの、倉田恵美。

ここが正念場よ!



『2、長官がデベロンダッタ星人であるという証拠を見せる』



いちかばちかよ。
やってみるしかないわ。
私はもう、夢か現実かの境目が消えかけていた。

風間さんに聞いてみた。
「これから、長官がデベロンダッタ星人だったってことを証明してあげるわ。私たちスンバラリア星人の体液は何色だったか覚えているよね?」
風間さんは素直に答えた。
「緑色だったよ」

私は、おもむろに部室の机からカッターを取り出し、長官の手首を切った。
どくどくと体液が流れた。

……ピンク色の体液だ。
「ほーら、私がいった通りでしょ。こいつはデベロンダッタ星人だったのよ」
私はやけくそで、はったりをかましたつもりだったけど……。
本当に、長官がデベロンダッタ星人だったなんてできすぎているわ。

「いや、こいつはデベロンダッタ星人に似ているが、ニャリン星人だ。……まあ、どちらにせよ、長官はにせ物だったんだからな」
風間さんは私にいった。
危なかった……。
ニャリン星人だったのね。
私は聞いた。

「本当の長官は?」
「ああ、たぶんこいつに殺されたんだろう。…………………………僕に一つ提案があるんだが。君が新しい長官に就任したらどうかと思うんだ」
風間さんは私にいう。

「ちょっと、まってください。
そんな、急すぎます。私が長官なんて似合わないです」
「いや、君がニャリン星人を殺してくれなかったら、僕たちはどうなっていたか……。
僕が、スンバラリアの大臣に今回の件をすべて報告しておくよ。次期長官は、君に決まったも同然さ。
そうと決まったら、すぐスンバラリア星に帰ろう。新長官就任式の準備だ。 さあ、我らが故郷スンバラリアへいざかえらん!!」
そして、風間さん……、いいや、スンバラリア星人はワッペンのような物を取り出すと片手をあげた。

一瞬、空が光った。
私たちはまばゆい光に包まれて、まだ見ぬ星へと旅立つ……。
お父さん、お母さん、私はスンバラリア星人の長官として生きることになりました。
親不孝な私を許して下さい。



『3、とりあえず踊ってみる』



とりあえず、踊ってお茶をにごすしかないかもしれないわ。
でも、なにを踊ればいいのかしら。
私が知っている踊りなんて、フォークダンスしかないのに。
ええい、ままよ。

「ちゃらちゃらちゃららららー、ちゃちゃんちゃちゃちゃ!!」
私はメロディを口ずさみ、一人で踊り始めた。
もう、恥ずかしいなんて思っていられない。
そして、私は部室のテーブルの周りをぐるぐると回った。
 私は風間さんを横目で見た。

風間さんが渋い顔で私を見ている……。
彼の視線が痛い。
とにかく踊り続けないといけない。
この均整を崩したくない。
私がここで踊りをやめたら、なにが起こるかわからないし。
その時、風間さんが沈黙をやぶった。

「倉田君、もういいよ。踊りをやめたまえ。
君がスンバラリア星人だということは、立派に証明されたよ。 
君は、スンバラリア星人の中でも勇敢な部族、コッペッポの民だということが証明された。あの踊りは、僕も一回しか見たことがないんだが、確かにそうだ。
コッペッポ族に昔から伝わる踊りだ」

な、なんだかしらないけど話はうまい具合に進んでいるみたい。
その時、けたたましいブザーの音が鳴り響いた。
風間さんは、ポケットからワッペンのようなものを取り出すと口元に近づけた。
「はい、こちらコードネーム
通信機が警報音を発信していましたが、どうかしましかたか?」
風間さんは、ワッペンに耳を近づけている。

「えっ!? そんな……。あ……」
彼はそのままぼう然としていた。
なにか、ただごとではないという感じを受けた私は、そっと聞いてみた。
「……どうかしたんですか?」

「もう、僕たちは終わりだ。
……今、母国から連絡を受けたよ。スンバラリア星がウンタマロ星人の襲撃にあい、壊滅寸前だということをね。これが最後の通信だ……。僕たちはかろうじて助かったが……。地球を侵略するどころではない。
…………………………この地球で、地球人として生き延びるしか方法はないようだ」
彼は、肩を落としていった。

私は、あまりのうれしさに彼にわからないように小踊りした。
笑いが止まらないわ。

私はまじめな顔をして彼にいった。
「風間さん、助かった私たちだけでも生き延びるんですよ。
スンバラリアの民には、なんていったらいいかわからないですけど……。私たちは彼らの分も生きなければならないんです」

私は、風間さんの肩に手を置いて窓辺に近づいた。

すっかり暗くなった空に、満天の星がまたたいている。
そのとき、すぅっと流れ星が尾を引いた。
「風間さん、見てください。
流星を……。あれは、スンバラリアの死んでいった同胞たちですよ。そう、彼らは星になったんです。あっ、ほらまた流れましたよ……」

梅雨明け間近の夜空に、夏の星座が見えていた。
私たちは、それをいつまでも見ていた。



『1、スンバラリア星人であるという証拠を見せる』



……とりあえず、スンバラリア星人だという証拠を見せるように努力してみよう。
……でも、どうやって?
そうだわ!

確か、さっき私が風間さんに対して同じような質問をしたときに、コップの中に、紙の上に乗った十円玉を落とせるかどうか聞いてきた……。
あれが十分な証拠じゃない!

「風間さん! さっき、私が紙の上の十円玉をコップの中に落とす方法を教えたじゃないですか!
あれが、私がスンバラリア星人である立派な証拠じゃないですか!」
「……だめだ。あんなのは、よく考えたら地球人でもできるかもしれない」

……そんなのひどすぎる。
元はといえば、勝手に風間さんが私のことを宇宙人だと勘違いしたんじゃない。
それで勝手に決めつけて、こんな事態を招いてしまったのよ。
よく考えたら、迷惑なのは私の方じゃないの。

「さあ。 早く証拠を見せてくれよ」
風間さんは、また冷たい目付きに変わった。
今にも、私を殺しそうな雰囲気。
……どうしよう。
「君がスンバラリア星人である証拠を見せるのは簡単なことさ。
……こうやってマスクを取ればいいんだよ」
「きゃあっ!」
か、風間さん……。

風間さんは、首の皮に指を引っかけると、ずるずると顔の皮を剥がした。
人間の皮の下には、長官と全く同じアンモナイトのような頭があった。

「……さあ。 お前もはいでみろ」
風間さんは、そういうと私を指さしながら詰め寄ってきた。
口の辺りの触手をもぞもぞと動かして……。
私が顔の皮を剥いだって、その下には筋肉があるだけよ。
冗談じゃないわ!
どうする?

どうすればいいのよ!



『1、逃げる』



とりあえず逃げてみようかしら……。
この場の状態を改善するより、逃げたほうがいいのはわかっているし。
私はダッシュした。
そして私は、部室の入り口のドアに思いっきりアタックした。

バンッ、という音と共にドアははずれ、私は廊下に転がった。
やった、成功したわ!!
今度こそ逃げることができる。
私は、廊下を見て言葉を失った。
学校の廊下には、植物の根のようなものがびっしりとこびりついていた。

私は、逃げ場を失っていた。

「君は純粋な地球人だったんだろ?
もう逃げられないよ。さっきスンバラリアの同胞が、地球全体に特殊な寄生植物の種をまいたからね。
地球はもうじき養分を吸い取られ、しぼんでいくだろう。
地球を支配しようとしたけれど、君たち地球人はとても扱いにくいんでね。
支配するなら、皆殺しにしたほうがいいと思ってさ」
風間さんは、いつのまにか私の後ろに立っていた。

「さあ、君もこの植物の栄養になるんだよ」
風間さんはそういうと、右手で合図した。
すると、廊下にこびりついていた根が私のほうに向かって伸びてきた。
ザワザワとざわめきながら。
「もがいても、ムダだよ。
大丈夫さ、痛みは感じないからね」
風間さんは、そういって私に笑いかけた。

「きゃぁぁぁーーーー!!」
無数の根が、私の体を取り囲む。
すると、不思議な感覚が私を包んだ。
気が遠くなる……。

……私は、生きていたの?
死んでいるんだったら、こんなに意識ははっきりしてないはずだと思うし。
ゆっくり目を開けた。

そこには、異常に大きな木にぶら下がっている人間の頭があった。
よく見ると、みんな目を見開いて目玉をきょろきょろさせている。
みんな、自分たちが頭だけになっているのを驚いているみたい。

そういう私も頭だけのようね……。
あいにく、声は出ない。
すると、向こうからスンバラリア星人がやってきた。
空を飛ぶスクーターのようなものに乗っている。

「この木は、根で吸い取った生物と同じ形の果物をつけるんだよな」
「本当に熟していておいしそうだ」
スンバラリア星人は舌なめずりをすると、私たちの頭と木の幹をつないでいる、茎の部分を切り取り始めた。

「いつも思うけどさ、収穫時期は大変だよな」
彼らは、私たちの頭を果物のように収穫し始めた。
私たちはもう、スンバラリア星人の食料としてしか存在する価値がないみたい……。



『1、こうなったら戦うしかない』



こうなったら戦うしかない。

「いやああっ!」
私は、思い切り風間さんにぶつかった。
そして、目をつぶると無我夢中で腕を振り回した。

!!」

突然、風間さんはわけのわからない奇声を発し、どっと倒れた。
どうやら、私はあの触手を引っ張ってしまったらしい。
そうか、あの口から生えている奇妙な触手がスンバラリア星人の弱点だったのね。
……それにしても弱すぎる。

この怪物、こんなに弱くて地球侵略なんて、地球人もずいぶんと馬鹿にされたものよね。

でも、これで危機は去ったわ。
学校であった怖い話を聞きに来ただけのはずだったのに、いつの間にか私は地球の危機を救った英雄になってしまった。
……でも、誰も気づいてはくれない。
私は、孤独な英雄なの。

そう、英雄なんて所詮はそういうものよね。

でも何だか、ちょっと嬉しくなってしまう。
……今考えると、部室に入ったときに流れていた異様な空気は、きっとこのスンバラリア星人が発していたものだったんだわ。

はたして信じてもらえるかどうかわからないけれど、この体験談を七不思議の七話目にしよう。
何はともあれ、よかった、よかった。

それじゃあ、帰ろうかな。
そう思って、私が部室をでようとしたとき!

「きゃっ!」
私は、思わず部室の陰に隠れてしまった。

……なんなの。
……なによ、これは。
今、何かいたわ。
廊下を、こっちに向かって集団で歩いていたのはスンバラリア星人じゃない?
見間違いかしら?
……そんな、馬鹿な。

これで、すべてうまくいって平和になるはずだったのに……。
どうする?

どうすればいい?



『2、やっぱりやめる』



…………………………やっぱりできないわ!!
私にはできない!!
スンバラリア星人の頭をかぶるなんて!!
私は、風間さんの頭を放り投げた。
どうしよう!

スンバラリア星人の行進する音が、だんだん近づいてくる。
ふとロッカーが見えた。
「あれだわ!」



『2、隠れる』



私は、部室のロッカーの中に急いで隠れた。
そして、ロッカーの中で息を殺していた。



※以下同文※



すると、次々に廊下からスンバラリア星人が、部室になだれ込んできた。



わけのわからない言葉を、口々にしゃべっているみたい。

気になった私は、ロッカーの隙間から様子をうかがった。
スンバラリア星人は、口から触手を出すと二人の死体をまさぐり始めた。
何人ものスンバラリア星人の口から、次々に触手が伸びてきて二人の死体をおおった。

しばらくすると、その触手はまたもとの口へとおさまっていった。
そこにあったはずの、二人の死体は跡形もなく消えていた。
吸収したの!?

そしてスンバラリア星人たちは、周りにいる仲間とどんどん合体していった。
まるで粘土がくっつき合うように……。

ついには、一人の二メートルはあるスンバラリア星人となってしまった。
スンバラリア星人は辺りを見回した。
また口からは触手を出している。
そして、こちらを見て止まった。

私が入っているロッカーへと近づいてくる。

まさか、ここにいることがばれたの?
どうしてばれてしまったのかしら。
どうしよう!

「ええい!」
私は、思い切って飛び出した。
そして、私よりも大きなスンバラリア星人につかみかかった。

結構動きは鈍いようで、もんどりうって倒れた後はすぐに立ち上がることができない。
私は、スンバラリア星人の触手を力一杯引っ張った。
!」
彼は、奇声を発するとばったりと倒れた。

なんだ、あっけないなぁ……。
なんのことはない、やっぱりパワーアップしても弱点は触手なのね。
もう少し考えたらよかったのに……、スンバラリア星人。
弱点が同じじゃ、すぐやられちゃうよ。
なんだったんだろう……。

私は、どっと疲れが出てその場に座り込んだ。
だけど、スンバラリア星人の死体はどうしたらいいのかしら……。



『1、もう一度、確かめる』



そうだわ、私の見間違いかもしれない。
もう一度、廊下を見てみよう。

私は、壁からそおっと廊下をのぞき込んだ。
「うっ!!」

ああ、やっぱり夢なんかじゃないわ。
彼らは、ざくざくと廊下を行進してくる。
こちらに向かっているのかしら?
そうだわ、長官がここに来ていることを彼らは知っている。
……だからね。
こまったわ……。

一瞬、私の頭に一つの考えが浮かんだ。
私は、それを実行しようか迷ったが、仕方ない。
あまりいい考えとはいえないが、急場しのぎにはちょうどいい。



『3、風間の死体をうまく使う』



そうだ!
風間さんの死体をうまく利用しちゃおう。
ちょっと気持ち悪いけれど……。



※以下同文※



私は、風間さんの死体から、アンモナイトのような頭をもぎ取った。
身体の中からは、海水のような体液がドロドロと流れ出た。

いやっ、気持ち悪い……。
私は、風間さんの頭をしげしげと見た。

……これをかぶってみようか?



『1、かぶる』



えーい、どうとでも、なれ!
私は、自分の頭をその頭に押し込んだ。
ぐちゅっという音がし、隙間から内容物が流れ出た。
……何という気色悪さ。
そして、生臭さ。
でも、ぜいたくはいってられないわ。

命にかかわることなんだから。
あまりよく見えないが、触手の隙間から少しだけ様子がうかがえる。
そうだわ、風間さんが持っていたワッペンのようなものも取っておこう。

?」
その直後、スンバラリア星人の集団が部室に入ってきて、意味不明の言葉を私に投げかけた。
何をいっているのかわからない。

どうしよう?



『1、わけのわからない言葉をしゃべってみる』



もう、次から次へとなんなのよ!!
やけよーーー!!

!!」
私は、わけのわからない言葉を発した。
?」
彼らもなにかいっている。

ついでにワッペンも見せてみよう。



『3、ワッペンのようなものを見せてみる』



そうだわ、ワッペンがあったっけ。



※以下同文※



私はこれでもかと、高くワッペンをかかげた。

!!」
(おお、長官殿!! 心配しました。
行ったっきり、戻っていらっしゃらなかったものですから。
さあ、早く戻りましょう!!)
おお、このワッペンは翻訳ができるの!?
……ちょっと待て、長官て私のこと!?

そんなぁ。
私、長官なんかじゃないよ!

私は、またスンバラリア語に挑戦した。
!!」
(さあ、みんな。大事なスンバラリアの同胞を一人失ったが、悲しむんじゃない。彼は地球人と相打ちをして立派に殉職した。彼に敬意を示そう。
これから我々のしなければいけない仕事はたくさんある。
秘密基地に帰ろう)

しまった!
思ってもいないことをいってしまった。
しかもこんなに調子よく……。
このワッペンは、翻訳をするだけで通訳をしてくれるわけじゃなかったのよ!!
!!」
(了解! さ、みんな! 用意はいいか)

「いやー!! やめてー」
スンバラリア星人たちは、私をかつぎあげると全員がワッペンをかかげた。

キュイーンという音と共に、私はスンバラリア星人とまばゆい閃光に包まれた。
私は、このままスンバラリア星人の長官になってしまうのね。
私の人生って……。



『4、とりあえず踊ってみる』



私は思わず踊った。
しかも、こてこてのフォークダンスを……。
「ちゃらちゃらちゃららららー、ちゃちゃんちゃちゃちゃ!!」
私はメロディを口ずさみ、一人で踊り始めた。
もう恥ずかしさのかけらもない。

……しばらく踊っただろうか。
なんと、スンバラリア星人も私の踊りに合わせて踊り始めたのよ。
ラッキー、これでうまくごまかすことができたわ。
けっこう、スンバラリア星人も踊りがうまいじゃない。

…………………………………
………………………………ちょっと待って。
よく考えたら、ごまかすことはできたけど、この先どうすればいいの!?
さいわい、スンバラリア星人は我を忘れて踊っているけど、問題はその先よ。

じゃ、私はここでずっと彼らと踊り続けるの!?
明日、明後日は、土曜日と日曜日だからいいけど、月曜日はどうしたらいいのよ。

私は、変な宇宙人と踊っているのを発見されたらもう生きていけないわ。
その前に、疲れて死んじゃう。
そんなのってない!
……そうだわ!!
私が、こうやって踊りながら彼らを誘導すればいいんだわ。
なんて頭がいいのよ、倉田恵美!!

……よく考えたら、どこに連れていけばいいのよーーーー。
やっぱり私は大ばかものよーーーー!!



『2、黙って、風間さんの死体を指さす』



私は、首のなくなった風間さんの死体を黙って指さした。
スンバラリア星人は口々に意味不明の奇声を発し、風間さんの死体を調べ始めた。
そして、長官の死体も。
……いまだわ!

私は、その隙に外に飛び出た。
とにかく、走るのよ!

私の肩越しを、何か白い光の線がものすごい勢いで追い越していった。
それは、前方の壁にぶつかり爆発した。

レーザー銃……。
「死んでしまう!」
まさかSF映画じゃあるまいし、なんで私がこんな目にあわなきゃいけないの。
何で、こんなところにスンバラリア星人がいるのよ!
私は、そんなことを考えながら思い切り走った。

私の脇を何本ものレーザー光線が追い越していく。
当たれば、私なんて、一瞬にして消滅してしまうわ。
とにかく、学校の外に出なければ!

外に出ると、レーザー光線は追いかけてこなかった。
だからといって、まだ安心は出来ない。
なぜなら、校庭にも、スンバラリア星人が、ウヨウヨいたから。
……学校はスンバラリア星人に占拠されてしまったのかしら。

私は手を振りながら、例のワッペンを見せた。
そして、ゆっくりと校門に向かって歩いていった。

……うん、いいわ。
この調子よ。

私は、学校の外に一歩を踏み出した。

……さあ、今よ。
走れ!

私は、思い切り走った。

どこへ行く?



『1、自分の家』



私は、とにかく自分のうちに帰ることだけを考えた。
とにかく走らないと。
走って走って走りまくのよ。
幸い、こんなものをかぶっていても人目につくことなく家に逃げ帰ることに成功した。
私は家に飛び込むと、玄関のドアの鍵を閉めた。

そして、台所へ行ってみた。
夕方なので、母さんは食事を作っていた。
「母さん!!」
私は、母さんの後ろから声をかける。
「遅かったわね。今日は、父さん残業で遅くな……、ひーっ!!」

母さんは、振り返りざまに手に持っていたお玉を落とした。

しまった!
このマスクを取ることをすっかり忘れていたわ。
……あれ?
取れない!
と、取れないよ!

い、痛い!
取れるどころか、引っ張るとものすごく痛い。

……そういえば変だわ。
最初は生臭くて気味悪かったこの頭も、今は妙になじんでいる。
まるで、私の頭のように……。
それに、よく考えれば変だわ。
風間さんの頭ほどしかなかったものに、どうして私の頭に入ったのかしら。
サイズが合わないじゃない!

母さんは、まだ怯えているみたい。
私は母さんに訴えた。
「母さん! 私よ!! 恵美よ!」
そして、母さんは私に向かって走ってきた。

「恵美、やっとあなたも一人前になったのね!! 母さん嬉しいわ。今日はみんなでお祝いよ。地球人と同化して三十年。私たちも、やっと普通に暮らせるようになったし。私は今、幸せよ」
母さんは、そういって私を抱きしめた。

ちょっと、なにをいっているの、母さんは……。
すると、母さんはあごに手を当て勢いよく皮膚をはいだ。
例のアンモナイトの頭だ。
「母さんもあなたと同じ年に、大人の仲間入りをしたのよ。
嬉しいわぁ。今からお赤飯炊いて間に合うかしら。
会社に電話してお父さんに早く帰ってきてもらうわね」
私のマスクと同じ顔が言う。

「ただいまー」
私の姉さんが帰ってきた。
「あら、あんたもやっと大人の仲間入りね。私なんか中学生の時よ。早いでしょ? ませてたのかしらね」
姉さんがなにげない顔でいう。
なにげない顔をして、いうことじゃないと思うんだけど……。

ということは私の家族は、スンバラリア家族だったのかしら?
風間さんのマスクが取れなくなったのは、私がスンバラリア星人だったから?
私がちょうど成人の肉体変化をとげるのと同時に、風間さんのマスクをかぶったから?

なにか、脱力感が私をおそう……。
でも、よく考えたらこれはこれで幸せなのかもしれないけど……。



『2、警察』



まず、警察に行こう。
警察に行って、スンバラリア星人のことを話すのよ。
私は、近くの交番へ急いだ。

「キャーーーーーッ!」
交番へ続く道の人通りは多い。
案の定、叫び声が上がった。

そういえば、私はまだあの気持ち悪い頭をはめ込んだままだった。
取ってしまおう。
……あれ?
取れない!
と、取れないわ!

い、痛い!
取れるどころか、引っ張るとものすごく痛い。

……そういえば変よ。
最初は生臭くて気味悪かったこの頭も、今は妙になじんでいる。
まるで、私の頭のように……。
それに、よく考えれば変だわ。
風間さんの頭ほどしかなかったものに、どうして私の頭が入ったのかしら。
サイズが合わないじゃない!

ひっ!

私の頭の横を、銃弾が掠めていった。
見ると、誰かが通報したのか警官が私に向かって銃を構えている。

!!」
こ、言葉がうまくしゃべれない!
!!」
あせればあせるほど、私の口から出るのは、スンバラリア星人がしゃべっていたあの奇妙な言葉……。
私は、スンバラリア星人になってしまったの!?

警官が、また銃を撃ってきた。
私は、逃げた。
どこへ?
……学校へ。
仲間のいる学校に向かって私は走った。

……これは、夢よ。
そうよ、夢に違いない。
これは、悪夢なのよ!
お願い!
夢なら覚めて……………………!



『3、病院』



私は、走りながらマスクを取ろうとした。

「!?」
マ、マスクが取れない!
きっと、無理矢理顔にはめたからだわ。
病院に行けば、なんとかなるかもしれない。

私は、怪しまれないように新聞紙を拾って頭からかぶせた。
ひょっとしたら、このほうが怪しまれるかもしれないけど。
幸い、こんなものをかぶっていても人目につくことなく病院に到着することに成功した。
私は裏口からそおっと入った。
この病院は、私の家族のかかりつけだ。

担当医の田中先生のいる部屋へ走った。
私は部屋のドアをゆっくり開けた……。
先生はまだいないようね。

なんとかして、このマスクをはがしてもらわないと。
私は先生の机の下に身を隠した。
三十分ぐらいたったかしら。
田中先生が部屋に入ってきた。
田中先生は少し小太りだ。
趣味も、ちょっとおたくっぽいけど私は好き。
先生は明かりをつけた。

「先生!」
私は机の下から飛び出していた。

「うわっ!!」
先生は驚きのあまり、もんどりうって倒れた。
私は半泣きでいった。
「先生! 倉田です! 私は倉田恵美です!」
先生は、ろうばいしながらも私にいった。
「ど、どうしたんだい? その頭は?
本当に倉田君かい?」
「田中先生!! 聞いて下さい……」
私は、せきが切れたように今までのことをしゃべりまくった。

先生は、しばらく黙っていた。
「……うーむ。今までの話を聞くと、本当に君は倉田君のようだね。どれちょっと見せてごらん。ほうほう……。ふむふむ……」
先生は、私の顔とマスクの継ぎ目をていねいに調べた。
「わかった、私がなんとかしてあげよう。
これから、すぐ手術室にいこう」
先生は私をかくまいながら、手術室へ連れていってくれた。

やっぱり田中先生は頼りになるなぁ。
手術室の中はひんやりしていた。
「さあ、この手術台に横になってごらん。麻酔をかけるよ。
君が目覚めたときには、このマスクもきれいに取れているはずさ」

私は、先生のいう通りに手術台に横になった。

「はい、これから十数えるからね。すぐ眠くなるよ。一、二、三、四、五、六……」
意識が遠くなる。

私は、ゆっくり目を開けた。
……私は、今までずっと眠っていたのかしら。
田中先生がのぞき込んでいる。
「先生!! 私はもとの顔に戻れたんですね!?」
田中先生は笑っていった。

「倉田君の名前を使うなんて許せんやつだ。お前のような、得体のしれないエイリアンは僕たちの研究材料になるといい! ははは!」
そんな、先生は私を信じていたわけじゃなかったの!?
私は先生にいった。

「先生、私はあのマスクをかぶっていただけなんでしょう?」
「ばかをいうんじゃない。あれはマスクなんかじゃない。
ちゃんとした、お前の皮膚だ。
よくそんなウソを、ぬけぬけといったもんだな」
私は体を動かそうとした。

「か、体が動かない!」
私の体は、ベットにベルトで縛りつけられている。
「逃げられたら困るからね。
縛らせてもらったよ。大事な研究材料だからね。おとなしくなさい」

田中先生の高笑いが病室に響く。
私は先生の研究材料として、生き続けることになったらしい。
こんな姿では、もうなにをいっても誰も信じてくれないだろうし。
こんなのってないよ!!



『4、テレビ局』



テレビ局へ行って、このことをみんなに知らせなきゃ!
スンバラリア星人が、地球に侵攻してきていることを……。
さいわい夕暮れだったし、人気のない道を選んで走った。
テレビ局は、学校からあまり離れたところではなかった。
中学校の時、社会科見学で一度行ったことがある。

テレビ局に着いて、私はガードマンがいないか茂みに隠れて見た。
ちょうど、交代の時間だったと見えてガードマンボックスで話をしているみたい。

「チャーンス」
私は突っ走った。
そして、裏口からそっと忍び込んだ。
とりあえず、壁に貼ってあるタイムテーブルを見た。
「生番組は……、これだ!!」
ニュース番組に目がいった。
もう本番を始めているみたい。
「第五スタジオね……」

テレビ局の中って、こんなに静かなのかしら。
撮影所とは違うんだろうな。
そんなことを思いながら私は急いだ。
「ここね……」
私はドアに手をかけて思った。
しまった、マスクを取らないと。

私は生臭いマスクを取った。
ゆっくりとドアを開ける。
そして、テレビカメラに近づいていった。
私は屈みながら物陰から近づく。
ニュースキャスターがしゃべっている。

「あっ!!」
私は思わず声を出してしまった。
テレビカメラが私のほうを向く。
そこには、スンバラリア星人が何人もいた。
カメラマンも、ニュースキャスターもスタッフもみんなスンバラリア星人だった。

スンバラリア星人の操るテレビカメラには、私の恐怖にゆがんだ顔が映っていた……。