1、声がした方へ進んでいく【PS追加END六人の捌け口に】 | ナノ
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僕は、細田さんの声がした方に、進んでいった。
そうする以外、思いつかなかったのだ。
何もない空間を、自分の勘を頼りに進んでいくのだ。
自分では、声がした方に向かって進んでいるつもりだけど、本当にこの方向でいいのか、不安になってくる。

「細田さん! ……新堂さん!」
僕は、あの六人の名前を呼びながら、走っていった。
しかし、もう細田さんの声は聞こえなかった。

僕は、疲れてその場に座り込んでしまった。
「……僕は、これからどうしたらいいんだ。
どこへ行ったら……」
僕は、途方に泣き崩れてしまった。
「おい、坂上! 何を泣いているんだ。
まったく、女々しい野郎だぜ」
新堂さんの声が聞こえる。
「心配しなくていいよ。君は間違っていないよ。
もうすぐ僕たちのところにつくよ。
ほら、もう見えるでしょ?」
僕は、声がした方を見てみた。
「あ、みなさん……」

向こうの方に、あの六人が立っているのが見える。
僕は、急に元気が出てきた。
それまでの疲れも忘れて、彼らに向かって走り出した。
しばらく進と、小さな小川が行く手を遮ったが、僕はお構いなしに一気に飛び越え、進んでいった。

「やあ、坂上君。ようやくついたね。
待ってたんだよ」
細田さんは、満面の笑みをたたえて、迎えてくれた。

「よう、坂上。よくきたな。
これから、ずっと一緒だぜ。
仲良くやろうな」
新堂さんもご機嫌だ。

残りの人たちも、僕のことをとても歓迎してくれた。

この分なら、これからの人生も、楽しく生きられそうだ。
……死んだ後に『人生』というのも、おかしいけれど。

「それにしても、何のためらいもせずに、こっちの世界に来たものね。
私でも、あの川を渡るときには、ずいぶんとだだをこねたのに。
でも、結局こっち側に渡らずをえなかったけど……」
岩下さんが、そういった。

(え? あの川って……)
僕は、後ろを振り返ってみた。

「あれっ!」
僕は、驚いてしまった。
さっきまでは、小さな小川だったのに、今ではとても大きな川になっているではないか。
それに、何もない空間だと思っていたところには、今まで住んでいた街が見えているではないか。

「それより、三途の川って、本当にあったんですね。
僕、ちょっと感動してしまいましたよ」
荒井さんが、本当に感心しながら、そういった。

「……三途の川って……」
もしかして、僕の目の前に流れている川のことなのだろうか?
もしかしたら、向こう側から見ると、この川は小川ぐらいの大きさに見えるのだろうか。
僕は、その小川を飛び越えてきてしまった。

もし、あのときに引き返していたなら……。
しかし、大きな川に遮られて、今はもう引き返すことなどできない。

「私は、こっちの世界の方がいいなぁ。
だって、これから楽しそうじゃん。
坂上君も来てくれたし……」
福沢さんが、声を弾ませて、そういった。

「そうだよ。
僕も、向こうの世界は、つまらなすぎたよ。
みんな頭が固くて、僕のセンスについてこれないんだもの」
風間さんも、こちらの世界を気に入っているみたいだ。

そうさ、今さら引き返すことはできないんだし、くよくよしたって、しょうがない。
戻りたいなんて思わないで、こっちでの生活を楽しめばいいんだ。

「俺も満足しているぜ。
これからずっと、坂上のことをいじめていられるんだからな。
ストレスなんか、無縁の世界だぜ」

え……。
今、新堂さんは、なんていった?

「そうよねぇ。
なんていい世界なのかしら、坂上君のことを公然といじめることができるなんて。
それがなかったら、何にもない、最低の世界だけどね」

……ちょっと待ってくれよ。
どうして、僕が公然といじめられなければならないんだ。
みんなが僕を見ながら、にやにやと笑っている。
まるで、おいしい獲物を見つけて、喜んでいる感じだ。

僕は、怖くなって、必死に逃げ出した。
「おいおい、自分で望んだ世界に来て、今さら逃げ出すのかよ」
みんなが、僕を取り囲んだ。
もう逃げることはできない。
「僕は、こんな世界なんて、望んでいないよ。
気がついたら、ここにいたんだ。
……それに、もし本当に僕が望んだ世界なら、あなた達はここにいないはずだ!」
僕は、思い切って言い放った。
「………………………………」
みんな黙ってしまった。

「……坂上、おまえがこの世界を望んだっていうのは、本当だぜ。
人は、死ぬと自分が一番望んでいる世界に行くんだ。
もちろん、坂上、おまえも例外ではない。
頭では、嫌だと思っても、意識の奥底では、こういう世界を望んでいるのさ。
ここにいるみんなも、おまえの意識によって呼ばれたんだ。
坂上、おまえは、俺達にいじめてもらえる世界を望んだわけさ」

「うそ……うそだ……うそだーーーー!!」
僕は、絶叫した。
信じたくなかった。
自分がこんな世界を望んでいるなんて。
あの六人にいじめてもらいたいと、思っているなんて。
僕は、新堂さんを突き飛ばして、逃げ出した。

でも、それは無駄な行為だった。
いくら走っても、どっちの方角に走っても、あの六人の所へ戻ってしまうのだ。

それを何百回繰り返しただろう。
やはり、ここは自分が望んだ世界なのだろうか。
そして、僕は、あの六人にいじめてもらうことを望んでいるのだろうか。
だから、いくら逃げても、あの六人のいるところに、戻ってしまうのかもしれない。

もう、逃げ回る気力もなくなった
それを待っていたのか、あの六人がにこにこしながら、僕に近づいてくる。

「さあ、坂上。気は済んだだろう。
今度は、俺達と遊ぶ番だぜ」
新堂さんが、なれなれしく僕の肩に手を回す。
彼の顔には、あの白い仮面がつけられていた。

よく見ると、新堂さん以外の人も、いつの間にかあの仮面をつけていた。
……もう逃げられない。
この六人からも、この世界からも……。

そして恐怖は繰り返す…



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