「ありがとう。
私もそう思うわ。
これで、私も本来行くべきところへ行くことができる。
それじゃあ、さようなら、坂上君」
窓から、朝日が差し込んできた。
その光に彼女が包まれる。
そして彼女は、その光に包み込まれるように、消えてしまった。
彼女の立っていたところには、彼女がつけていた仮面が、そっと置かれていた。
僕は、窓の外を見てみた。
長かった夜が終わり、柔らかな光が全てを包み込んでいる。
「う〜ん……」
僕は、大きな伸びをした。
なんだか、いい記事が書けそうな気がする。
しかし、怖い話をしてくれた人達がいなくなったのは、どう説明しよう。
……考えるまでもない。
僕が体験したことを正直に書くしかないのだ。
僕にも、説明できないことだから。
僕は、仮面を拾いあげると、トイレから出ていった。
誰もいない朝の旧校舎を、ひとり歩きながら、僕はいろいろと考えた。
彼女の存在、彼女のいった言葉、そしてあの六人のことを。
とても、数時間前にあの集まりがあったとは思えない。
もっとはるか昔の記憶、記憶を正確にたどることができないほど昔に体験したことのようにも思える。
あの六人は、本当にいたのか?
そもそも、あれ自体が僕の夢だったのか?
……だとすると、僕はいつから夢を見ていたのだろうか。
そして、いつ夢は終わったのだろうか。
いや、夢はまだ続いているのかもしれない。
ただ一つ、はっきりしていることがある。
僕の右手には、あの仮面が握られている。
……この旧校舎も、あと数日で取り壊されてしまうのだなあ。
僕にとって、別に懐かしくもない旧校舎が妙に哀愁を感じさせた。
この旧校舎がまだできたばかりの真新しかったころから知っていたようなそんな錯覚に陥ってしまう。
僕が、旧校舎の外に出ると、いつの間にか右手に持っていたはずの仮面がなくなっていた。
僕は改めて旧校舎に目を留めた。
この旧校舎が消えてなくならないことを、僕はなぜか祈っていた。
夢なら、覚めないように……。
(新校舎END)
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