『1、すぐに引き返して、調べてみた』【PS追加END踏んだり蹴ったり】 | ナノ
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(竹内さんは、あの植物のことをなにか知っているに違いない)
そう確信した僕は、あの植物を調べてみようと思ったんだ。
竹内さんが校舎の中に入っていったのを確認して、すぐに引き返してみた。

すると、あの変な植物がなくなっていたんだ。
生えていた場所を調べてみると、掘り起こした跡が残っていた。
竹内さんが、掘り起こして移動させたに違いない。
やはり竹内さんは、あの植物についてなにかを隠しているようだ。

僕は、植え変えた場所を探して回ったんだ。
もっとあの植物に関して調べてみたいと思ったからね。
きっと、よく日の当たる場所に植え変えているはずだと思った僕は、日当たりのいい所を探して回ったんだ。
すぐに見つかったよ。

君も知っていると思うけど、旧校舎の裏なんて、物陰なんかないじゃない。
それに日の当たる場所だから、まわりに影になるものがあるとまずいわけだし。

そばに行って見ると、思った通り、今植え変えられたばかりのようだった。
僕は、竹内さんが何をしているのか、隠れて見てみようと思った。

次の日に、僕はいつもより早く昼御飯を食べて、急いで旧校舎へ行こうとしたんだ。
びっくりしたよ。

教室を飛び出すと、廊下に竹内さんが立っているんだもの。
「あ、あれ、竹内さんっ」
今から隠れて何をしているか、見ようとしていた人がそこにいるんだもの、びっくりするよね。
竹内さんは、にこにこしながら近づいて来た。
「やあ、細田君。
昨日は、悪いことをいってしまったね。
あれから、僕はなんて酷いことをいってしまったんだろうって後悔したよ。
それでさ、おわびの印にいいことを教えてやろうと思って来たんだ」
竹内さんは、あっさりとそういった。

意外だったよ、昨日の竹内さんとは、全く別人のようなんだもの。

僕は、素直に竹内さんの好意を受け取ることにしたんだ。
竹内さんは、旧校舎の裏まで来てくれないかといって、僕と一緒に旧校舎の裏まで歩いていった。

旧校舎の裏に着くと、竹内さんは、にこにこしながら、質問してきた。
「細田君は、僕に関する『噂』を知っているかな?」
一番答えにくい質問だった。
竹内さんがトイレに行かないという噂は、この学校の生徒だったらさ、誰でも知っていることなんだ。

でも、面と向かって本人にいうのは、気が引けることだよね。
僕は、
「はあ」
といってごまかしたんだ。
「君に、僕のトイレに行かないという、噂の秘密を教えてあげるよ。
誰にも教えていない、とっておきの秘密だよ。
誰にもいわないって、約束してくれるのなら、教えてあげる」
僕は、びっくりした。
だって、今まで誰も聞き出すことができなかった秘密を教えてくれるっていうんだ。
それも、僕だけにだよ。

もう僕は喜んじゃって、すぐに約束をしたよ。
竹内さんは、約束だよって、念を押して話し始めた。

「僕の噂のトイレに行かないって話、あれ、本当なんだ。
だからって、僕が宇宙人だなんてことは、全然ない。
細田君と同じ人間さ。
あたりまえだけどね。
僕も、昔はみんなと同じようにトイレに行っていたんだ。
この学校に入ってからなんだよ、僕がトイレに行かなくなったのは。
だから、僕がトイレに行かなくなってから、まだ三年しかたっていないんだよ。
秘密は、食事にあるんだ」
僕は、驚いたよ。

食事を変えれば、トイレに行かなくてもよくなるなんて。
そんな話は、全然聞いたことなかったからね。
僕も食べることが好きだから、食べ物に関しては、いろいろ本なんかを読んだりして、研究していたんだけどね。

そういうことが書かれている本は見たことがなかったんだよ。

「驚いているみたいだね。
そうだよね。
食事だけで、トイレに行かなくてよくなるなんて。
それにね、何とダイエットにもなるんだよ。
細田君、僕は、今こそこんなにガリガリだけど、一年生の頃は、細田君ぐらい太っていたんだ。
いや、僕の方が、もうちょっと太っていたかな?
でもね、ごらんの通りだよ。
僕が食事を変えてからは。
それから、なぜか女の子は寄ってくるようになったし、トイレには行かなくてよくなった。
どうだい、知りたくなっただろう?」

僕は、こくん、こくんと頷いたんだ。
それを聞いたときには、なんて凄いんだろう、たとえ、どんなにまずいものであっても食べるぞって、思ったよ。
「じゃあ、教えてあげるよ、細田君。
その食べ物ってね、実は、ここにあるんだよ」

竹内さんは、そういって、あの植物を指さしたんだ。
「え、この植物を食べるんですか?」
僕は、信じられなかったね。
この変な植物が食べられるなんて。
「ああ、そうだよ。
この植物、僕がこの学校にはいる前からここに生えていたんだけれども、不思議なことに、毎日実をつけるんだ。
その実を食べるわけさ」
そういって、竹内さんは、ごそごそと葉をかき分けて、茎の先が膨らんでいるところを引っぱり出した。

そして、膨らんでいるところの皮をむき始めたんだ。

膨らんだ部分には、赤い柔らかそうな実がたくさん並んでいた。
ちょっと透明がかった赤色の実で、ちょうどイクラぐらいの大きさだった。
それが、所せましっ並んでいるんだ。
『すじこ』って知っているかな?

ちょうどあれを詰めたような感じだったよ。
竹内さんは、それをむさぼるように食らいついた。
ぐちゅっ、ぐちゅっと実がつぶれれ音が聞こえる。
その食べ方がとても異常で、さっきまでの竹内さんとは、別人のようだったよ。

食べ終わった竹内さんが、こちらを振り向いた。
僕は、一瞬背中が凍り付いたよ。

竹内さんの顔つきが変わっているんだ。
つぶれた赤い実が、血のように口の回りについている。
「さあ、細田君、食べてごらんよ」
新鮮なフルーツのような、甘い香りが漂ってくる。
僕は、その甘い香りに誘われるように、食べてみたんだ。

口の中で、ぶちっとつぶれる感覚が心地よい。
今まで味わったことのない、何ともいえない風味が口の中に広がるんだ。
確かに、お腹にはたまらないんだけどね、ああ、食べたなって気持ちになるんだ。
一度食べたら、忘れられない味だよ。

「どうだい、細田君。おいしいだろう?」
竹内さんが、嬉しそうに尋ねてくる。
「はい、とってもおいしいです。
こんなにおいしいものは、今まで食べたことがないです」
竹内さんは、嬉しそうに何度も頷いていた。

「実はね、細田君。
これの実には、毒があるんだよ。
この一粒で、人一人殺すことができるぐらいのね」

(え……?)
僕は、竹内さんがなにをいっているのか、一瞬理解できなかったよ。
そう、あの実には、毒が混じっていたのさ。
それを聞いたからかどうか、わからないけど、心臓の鼓動が早くなっていったよ。

そして、心臓が締め付けられるように、苦しくなった。
呼吸が激しくなる。

「どうしたんだい? 細田君。
顔色が悪いよ。
僕もはじめは、そうだったさ。
でも、すぐになれるよ。
今では、これがないと、食べた気にならなくてね」
竹内さんは、青白い顔で、ふらふらしながら、そういった。
「心配しなくていいよ。 細田君。
ちゃんと、解毒剤があるから」

そういって、竹内さんは、その植物の根っこの部分を掘り始めた。
何をしているのか、背中の影で見えなかった。
「あった、あった」
竹内さんは、振り向いて、僕の方に右手を伸ばした。

「細田君。これを食べるんだ。
そうすれば、死なずに済むよ……」
右手についている、もぞもぞ動いている何かを口に入れながら、竹内さんがそういった。
竹内さんの右手には…………。

なんと、ウジ虫が這い回っているじゃないか!
右手にも、たくさんのウジがもそもそと、はい回っている。
竹内さんは、それを下ですくって、むしゃむしゃと食べている。
「さあ、早く食べないと、手遅れになるよ」

どんどん目の前が、暗くなっていく気がする。
僕は、ウジ虫を食べなければならないのだろうか。
いや、食べなければならないことは、わかっている。
そうしないと、僕は死ぬんだ。

僕は、竹内さんの右手から、ウジを一匹つかむと口の前まで運んだ。
人差し指の上を、はい回っている。
少し黄色がかった白色のウジが、僕の口のすぐ前にある。
(これを、これさえ、食べれば……)

そうは思っても、なかなか決心がつかなかったよ。
でも食べなければ、僕は死ぬんだ。
僕は、思い切って、人差し指を口の中に突っ込んだ。

人差し指をゆっくりと口から出すと、口の中で、はい回っているウジ虫の感触が舌に伝わってくる。

「細田君、よく噛んで食べないといけないよ。
そうしないと、効かないんだ」
丸飲みしようと、思っていた矢先に竹内さんはそういった。
僕は、死にたくないんで、思い切って噛み潰したよ……。
どんな味がしたと思う?

苦い汁が、『ぷちゅっ』と広がるんだ。
小さなウジ虫だったのに、その味は、口の中全体に広がった。
僕は、気持ちが悪くて、思い切って飲み込んだよ。
すると、少しだけ、心臓を締め付けられているような感覚がなくなった。

(もっと、食べなければ死んでしまう……)
僕は、竹内さんの右手をつかむと、右手についたウジ虫を直接舐めあげた。
今度は、大量のウジ虫が口の中に入ってきた。
口の回りにはね、入りきれなかったウジがはい回っていた。

僕は、しっかりと噛み潰しながら、口の回りについているウジも、一匹たりとも逃がさないように、口の中にいれて、噛み潰したんだ。
食べていると、苦かった味が、だんだんと甘く感じられてきて、とても不思議だったよ。
………………………………。

ようやく、苦しみから解放された僕は、竹内さんの方を見てみた。

竹内さんも、毒が中和されたのか、元の顔つきに戻っていた。
そして、掘り起こした地面を元に戻そうとしていたんだ。
でも、どうして、土の中にウジ虫がいたんだろうと思って、竹内さんの背中越しに掘った穴を覗いてみたんだ。

「う、うわぁーーーー!!」
僕は、学校中に響きわたるような大声を出して、叫んだよ。
だってそこには、死体が埋まっていたんだもの。
女生徒の死体。
縦に埋められているのか、上を向いたような格好で、埋まっていたんだ。

ぽかんと開いた口からは、さっき食べたウジ虫がたくさん這い出してきていた。
そして、その変な植物は、その死体の目のところから生えていたんだ。

「お、おい、大きな声を出すなよ。
見つかってしまうじゃないかっ」
竹内さんは、冷静にそういっている。
冗談じゃない。
僕は、気持ち悪くなって、胃の中のものをぶちまけたよ。

「細田君。 誰にもいうんじゃないよ。
君は、僕と同じ、あの味を知ってしまった仲間なんだ。
これからは、君もなにを食べてもおいしく感じられないはずだ。
あの実を食べるためには、誰かの犠牲が必要なんだよ。
……大丈夫。

卒業するまでは、僕がこの植物を育てるから。
幸いにして、僕の周りには、たくさんの女の子が集まってくる。
トイレに行かずにすむ秘密を教えてくれってね。
だから、あの実を食べさせてあげているんだ。

でも、女の子達は、解毒のためのあの虫を食べることができなくて、死んでしまうんだ。
その子達には、この植物の栄養になってもらっている。
僕は、悪くないんだよ。
ちゃんと解毒の方法も教えてあげているのに、それを食べないで、死んでしまっているのだから。

自殺と同じさ……」
そういって、竹内さんは、再び穴を埋め始めた。

…………………………………。

竹内さんのいうとおり、僕は、なにを食べてもおいしいと感じることはなくなってしまった。
だから、楽しみなんだよね、あの実を食べる瞬間が。
僕は、毎日食べているわけではないから、トイレに行かなくてもいいということはないんだけどね。

僕にしてみれば、トイレに行かなくてもいいというのは、あまり魅力的じゃないんだ。
ただおいしいものが食べたいだけさ。
倉田さん、今度あの実をごちそうしてあげるよ。
とってもおいしいんだから。
君も病みつきになるよ。

でも、あの解毒剤を食べないといけないんだからね。
まあ、食べれなかったときには、あの植物の肥料にでもしてあげるよ。
楽しみだね。
いつ食べに行こうか?
じゃあ、これで僕の話は終わり。
次は誰かな。

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