僕は、どうしても中のことが気になり、覗いてみることにしたんだ。
遠くから眺めている分には、大丈夫だろうと思ったんだ。
それが間違いだったんだ。
あんな事になるなんて……。
僕は、入口の所からそっと覗いてみたんだ。
入口の所に立つと、中から風が吹いて来るんだ。
トイレの窓は開いていないのにね。
きっと先生と霊がぶつかりあっているんだろうと思った。
先生は、汗だくになりながら、一生懸命に何かを唱えていたよ。
僕は、壁の染みの所に目を向けてみたんだ。
するとね、なんと染みがあったところ付近が、蜃気楼が上がっているように揺らめいているんだよ。
その蜃気楼に、ときどき顔の形をした染みと同じ表情が浮かんだりしていた。
僕は、固唾をのんでその光景を眺めていたんだ。
すると突然!
僕の首筋の所をなでる、何かを感じたんだ。
「うわっ!」
僕は思わず悲鳴を上げてしまった。
先生が僕を見ていったよ。
「バカ野郎!
なんでそんなところに立っているんだっ」
若月先生は、普段穏和な先生からは、信じられないほどの険しい表情で、僕に怒鳴ったんだ。
その途端だった。
先生の集中力が途絶えたのか、急に霊気が強くなるのを感じたよ。
僕は、その霊気にはじき飛ばされ、しりもちをついた。
入口の所に立っていた僕でさえ、吹っ飛ばしてしまうほどの霊気だよ。
中にいる先生が、無事なはずないよね。
僕はそう思って、急いで起きあがって、先生を見てみたんだ。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
なんと先生は、無数の霊魂のようなものに囲まれて、絶叫を上げていた。
僕は、トイレの外で、ただ震えているだけだったよ。
先生は、霊気に魂を吸い取られているのか、だんだんと生気を失っていった。
肌がかさかさになって、目は落ち込み、顔中しわだらけになっていくんだ。
おまけに頭髪は白髪になってね、ボロボロと抜けていった……。
最後はまるでミイラのように、ボロボロになってしまったよ。
僕は、ここから後のことは全く覚えていないんだ。
気がついたら、僕は、自分の部屋のベッドの上で、眠っていたからね。
僕はどうやって帰ってきたのか、全く覚えていなかったよ。
あれは、夢だったのか……。
僕は、あれが夢であってほしいと祈ったよ。
……でも、残念ながら、夢ではなかった。
次の日、学校に行くとパトカーが何台も止まっていたんだ。
女子トイレで変死体が見つかったらしいとの噂が流れていたよ。
若月先生は、身元がわからないほどの状態で発見されたらしい。
人の形をした、布きれのような姿になってね。
倉田さん。
あのトイレの染みは、今でも残っているらしいよ。
……しかも、前より大きくなっているらしい。
僕は思うんだ。
この学校にはたくさんの霊が住み込んでいる。
あの時、学校中の霊があのトイレに集まったんじゃないんだろうかって。
先生の徐霊によって、学校中の霊が呼び集められたんじゃないかって。
先生は、それに対抗するだけの力を持っていたんだ。
それを僕が興味本位で覗いてみたばっかりに……。
あの時覗いていなければ、この学校の霊はみんないなくなっていたのかも知れない……。
さあ、これで僕の話は終わったよ。
次の人は誰かな。
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