『3、体育の若月先生』→『3、話をごまかした』【PS追加END若返り】 | ナノ
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先生は、しばらく染みを眺めていた。
黙っている先生に僕は聞いてみたんだ。
「どうですか、先生」
すると先生、ふと我に返ったように立ち上がって、こう答えたんだ。

「こんなの、なんでもないよ。
気にする事はない。
さあ、つまらないものに気をとられている時間があったら、早く帰って勉強でもしなさい」
僕達は、半分腹を立てて、トイレを出ていったよ。

だって、そうじゃない。
わざわざトイレまで見に来てくれたんだもの。
なにかしらのことをしてくれるものだとばかり、考えていたからね。
女の子達は、ぶつぶつ文句をいいながら、帰って行った。

僕は、先生にどういうつもりなのか聞いてみようと、トイレの前で、先生が出て来るのを待っていたんだ。
しばらくして、先生がトイレから出て来た。

「なんだ、まだ帰っていなかったのか」
僕は、先生に聞いてみたよ。
「先生、わざわざトイレまで見に来たのに、どういうつもりなんですか。
僕はてっきり、相談に乗ってくれるものと思っていましたよ」

……今考えると、凄い事をいったものだよね。
先生に向かってさ。
でも、あの時は本当に腹が立っていてね。
ついそんな言葉が出てしまったんだ。
でも先生は、怒らずにこう答えたんだ。
「細田君。
君にいい話があるんだけど、先生に付き合ってもらえないかな?」

僕は、すかされた気持ちがして、また腹が立ったんだけど、先生のいう、いい話というものにも興味があったからね。
とりあえず、先生の話を聞いてみようかと思って先生について行ったんだ。

先生は、僕を生徒指導室まで連れて行った。
はじめて入るところだったんで、思わず緊張してしまったんだよ。
先生は、そんなに緊張するなよといって、お茶を入れてくれた。
僕が落ちついたところで、先生の話は始まったんだ。

「細田君、君は先生の歳がいくつかわかるかな?」
先生は唐突に聞いてきた。
僕は深く考えずに30歳ぐらいと答えたんだ。
実際、そのくらいに見えるからね。
「みんなそういうよ。
でもね、実は僕は53歳なんだよ」

僕は、その冗談に笑えなかった。
だって、どう見たって、30歳前後にしか見えないんだもの。
僕が、どうリアクションをとっていいのか迷っていると、先生は真剣な顔をしていったんだ。
「信じられないのも、無理はない。
先生は、永遠の若さというものを手に入れたのだから」

先生はそういいながら、財布から免許証をとりだし、僕に見せてくれたんだ。
………………………………。
……僕には、信じられなかったよ。
だってさ、免許証の誕生日の日付が、昭和十七年になっているんだもの。
免許証がだよ。
僕はびっくりしちゃって、免許証と先生の顔を交互に眺めてしまったよ。

先生は、笑いながらいったよ。

「そんなに驚くなよ……って、それは無理か。
でも、まあ細田君にだって、永遠の若さを手に入れることはできるんだよ」
簡単なことさ、と先生は最後につけ加えた。
「細田君は、永遠の若さというものに興味はあるかい?」
「先生!
若さの秘密を教えて下さい!!」
僕はがっつくように先生を問いつめた。

だってさ、いつまでも老けずにいられたらいいなと思うじゃない。
倉田さんもそう思わない?
永遠に若いままでいれたらいいなって。
女の子なんだからさ、僕よりよけいにそう思うはずだよ。
その時の僕は、よっぽど凄い顔をしていたんだろうね。

先生は、そんな怖い顔するなよといって、永遠の若さの秘密を話し始めたんだ。

「あれはね、先生が三十二歳のときだった。
この学校に初めて赴任してきた歳だ。
その時に受け持ったクラスの子に、新田かおりという子がいたんだ。

なかなか活発な子でね、物事をハキハキという、とてもしっかりした子だった。
その子は、先生のことを好きになってくれてね。

教師と生徒、いけないことだとは、わかっていたんだけれども、彼女とつきあい始めたんだ」
僕は先生の意外な一面を見てしまって、正直びっくりしたんだけど、この場は黙って頷いておいた。
「かおりは、卒業したら先生と結婚するんだ」

といつもいっていた。
その時、かおりはまだ一年生だったから、卒業まで三年近くあった。
三年立つと、先生は三十五のおじさんだよ、とかおりにいってみたんだ。

するとかおりは、こういった。
もうこれ以上、ふけちゃやだよって。
そんなのは、無理な相談だよね。
まだかおりは、子供だったんだ。
無理だっていっても、かおりはいっこうに聞かなかった。

そして、それからしばらくすると、かおりはあやしげなクスリを僕に渡して、それを飲むようにいって来たんだ。

小さな小瓶に入った、どす黒い色をした、いかにもあやしげなクスリだった。
かおりは、先生が飲むのをずっと眺めていた。

先生は、仕方なくそれを飲んだんだ。
……しょぱい、どろっとした液体だった。
錆が混じったトマトジュースに、雑草かなにかを混ぜたような味だったよ。
かおりに毎日、それを飲ませられた。

毎日飲まないと効き目がないということだった。
するとどうだ。
日に日に体が軽くなり、頭に交じり始めていた白髪も、一本もなくなってしまったではないか。
かおりはそのクスリは、永遠の若さを得ることができる、魔法のクスリなんだといっていた……」

「そのクスリが、若さの秘密なんですねっ」
僕は、そのクスリが欲しくてたまらなくなった。
でも、もうそのクスリはないと先生はいったんだ。
だけど、先生は、そのときも若い姿のままだったんだ。
毎日飲み続けないといけないクスリなのにね。

僕は、先生は僕にクスリを分けるのがいやで、そういったんじゃないかと思った。
「そのクスリの中身、何だったと思う?」
先生が僕に聞いてきた。
僕は、まったく見当もつかなかった。

「そのクスリの中身はね、……実はかおりの血だったんだ。
かおりはどこで調べたのか、若い女性の血と特別な薬草を混ぜると、若さを保つクスリがつくれることを知っていたんだ。

それで、先生に老けて欲しくないかおりは、自分の血を使って、クスリを調合していたのさ。

細田君、君にそんなクスリを飲む勇気があるかい?」
僕はその話を聞いて、気持ち悪くなってしまったよ。
そんなクスリを飲むぐらいだったら……って思ったんだけど、やっぱり若いままでいたいと思ったんだ。
僕はこくりと頷いた。

すると先生は、にやりと笑って、話の続きを話し出したんだ。
「実はその後、かおりは死んでしまった。
貧血で倒れたんだ。
少量といえども、毎日、毎日、自分の血をぬいていたんだ。
倒れない方がおかしいよね。

限界に達した彼女は、とうとうあのトイレの……あの染みの前で倒れて、頭を打って死んでしまったんだ。
先生は悲しかったよ。
いや、かおりが死んでしまったからではない。
永遠の若さを得られるクスリが手に入らなくなってしまったからさ。

クスリを飲めなくなってから、一週間が過ぎた。
先生は、その一週間で、人が違ったように老けてしまったよ。
今までの反動が来たみたいだった……」
おかしいぞと僕は思ったよ。
現に先生は、若い姿のまま僕の前に座っていたんだから。

先生の話は、さらに続いた。
「それからしばらくたってからだったかな。

ある日、枕元にかおりが現れた。
かおりは、老けていく先生を見ているのが耐えられないといった。
そして、私が何とかしてあげるからといって、消えていったんだ。

先生は、夢でも見たのだと、気にもしなかった。
でも、夢ではなかったのさ。
次の日から、再び若返り始めたんだ。
その頃からだった。

あのトイレに、顔のような染みが浮き出ているという噂が流れ始めたのは。
そして、そこで貧血を起こす生徒が多くなった。
きっと、かおりが染みの近くに来た生徒から血を抜いていたのさ」

僕は、恐ろしくなった。
若月先生とそのかおりという生徒の幽霊が。
この先生に深くかかわらない方がいいと思ったんだ。
「細田君、君はさっき永遠に若くいるための方法が知りたいといったね。」
先生はにやにやしながらいった。

「もういいです、先生。
今の話は、冗談なんでしょ?
僕をからかっておもしろがっているだけなんでしょう?」
僕は、先生の話を信じたくなかったんだ。
「じゃあ、この免許証はどう説明するんだい?
そう簡単に偽造できるものではないはずだよ。

……まあ、いい。
もし、永遠の若さが欲しくなったら、次のことを覚えておくといい。
君が好きな女の子を、あの染みに捧げるのさ……。

好きな女の子の生き血を吸わせて上げればいい。
心配しなくても大丈夫。
その子は、死んでしまうけど、カサカサになって、触るとボロボロに崩れるほど、体中の水分を吸い取ってくれるから。
後は、粉々に砕いて、校庭にでもまいておけば大丈夫さ。

好きな子が死んでしまうのは、悲しいかも知れないけど、関係ないよ。
君は、永遠の若さを手に入れることができるんだ。
いくらでも、かわりの女の子が現れるさ。
……どうしてこんなことを君に教えるかわかるかい?

最近、あのトイレの染みが気持ち悪いとかいって、あのトイレを使う生徒が少なくなったんだ。
それで、先生の若さを保つだけの血が足りなくなってきているのさ。
だから、君に『あの染みは、ただの染みだ』という、噂を流して欲しいんだ。

女の子達から相談を受けるほどの君だ。
細田君のいうことなら、女の子達も信じるさ」

先生は、頼んだよといって、相談室から出ていったよ。
この事は、秘密にしておいてくれといい残してね。
実は、この学校には、若月先生の他にも、あと三人、歳をとらない先生がいるんだよ。
若月先生が教えてくれた。
倉田さん、君はたしか一年E組だったよね。

たしか、君のクラスの担任の先生、あの先生もその内の一人らしいよ……。

さあ、これで僕の話は終わり。
次は誰かな。

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