『3、体育の若月先生』→『1、気のせいだと答えた』【PS追加END餌食にされた若月先生】 | ナノ
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先生は、すっくと立ち上がり、笑いながら答えたよ。

「はっはっは。心配いらないよ。
これはただの壁の染みさ。
人の顔に見えるなんて、気のせいだよ。
こんな染みなんて、天井の板を見ればいくらだってあるさ」
僕たちは、がっかりした。

頼りにしていた先生が、まるっきり信じようとしないんだもの。
でも、しょうがないよね。
普通だったら、そう思うに違いないから。
きっと先生には、霊感がなかったんだ。

そうじゃないと、あの染みを見て何とも思わないなんて変だもの。
「さあ、こんなバカなものに気を取られている暇があったら、早く帰って勉強でもしなさい。
もうすぐテストが始まるぞ」
先生は、にこにこしながらそういった。

僕は、女の子達ににらまれてしまったよ。
彼女達は僕を頼りにして話し掛けて来たのに、僕は何もして上げられないどころか、相手にもしてもらえない先生に相談してしまったんだもの。

次の日。
あの女の子達に会うのがいやで、重い足取りで学校に向かったんだ。

学校に着くなり、僕を見つけた女の子が駆け寄ってきた。
僕はぎょっとしたね。
昨日のことをそんなに怒っているのかと思って。
でも違ったんだ。

「細田君、細田君!
大変なの!」
「どうしたんだい?
落ちついて話してくれないとわからないよ」
彼女は僕にこういった。
「昨日から若月先生が変なの」
「え? 若月先生が!?」

若月先生は人が変わってしまったようになっていたんだ。
それまで明るくて、はつらつとしていた先生が、急に無口になり、いつも何かに怯えておどおどしている感じになってしまったんだ。
僕は心配になって、先生に話し掛けてみた。
先生、どうしたんですか?

ってね。

すると先生は、何か悪いことをしているところを見つかった子供のように、ビクっとしながら振り返ったんだ。
「なんだ、君か」
「先生、いったいどうしたんですか?
今日の先生、どこか変ですよ」
「じつはな……いや……何でもない……」

先生は明らかに何かを隠しているみたいだったよ。

それから、しばらくたってからだ。
先生が僕に相談してきたんだ。

「細田君……。
実は隠していたんだが、あの染みを見に行ってから、先生はあの染みに悩まされているんだ」
「やっぱり……」
僕は思った通りだと思ったよ。

なんとなく、あの壁の染みが関係しているんじゃないのかと思っていたから。
「実は、あの日以来、毎夜夢の中にあの壁の染みが出てくるんだよ」
先生は真剣にそういった。
気味が悪いので、もう一度あのトイレに行ってみようかと思っているみたいだった。

それで、僕が霊感が強いというのを聞いた先生は、僕に一緒に来て欲しいということだったんだ。

僕は、先生について行く事にしたよ。
だって、先生を巻き込んだのは、僕なんだもの。
僕に相談を持ち掛けて来たクラスの女の子達に話すと、彼女達も責任を感じていたのか、一緒に行くといい出したんだ。

それで、前と同じメンバーでもう一度トイレに行って見たんだ。

トイレには、前と同じように霊気が漂っていたよ。
今度は先生も霊気を感じたらしく、とても不安がっていた。

先生は染みの前に立つと、染みをしばらく眺めていたんだ。
僕達は、先生の後ろに立って、成り行きを見守った。

「うわぁーーーー!」
しばらく染みを眺めていた先生は、急に悲鳴を上げて、後ろに退いて来たんだ。
先生の真後ろに立っていた僕達は、後ろに下がって来た先生に寄り掛かられて、バランスを崩して倒れてしまった。

先生は、来るな、来るなと暴れながら叫んでいるんだけれども、先生の下敷きになっている僕には、見ることができなかったよ。
僕のとなりに立っていた女の子には、見えているらしくて、悲鳴を上げながら泣き出してしまったんだ。

するとね、突然その声に交じって、ドスのきいた低い女性の声が聞こえて来たんだ。
「お前だけは、許さん。
私を馬鹿にしたお前だけは許さん」

「うわぁぁぁぁぁぁーーーーー!」
先生の時空を揺るがすような悲鳴と共に、僕の体に寄り掛かっていた先生の重みが消えてなくなった。
ようやく体の自由が戻った僕は、急いで振り返って見たんだ。

…………しかし、そこには何もなかった。
先生の姿も。

僕の周りには、一緒に来た女の子達が固まって泣いているだけだった。
事情がわからない僕は、何が起きたのか女の子達に聞いてみたんだ。
でも、女の子達は泣いてばかりで、話を聞き出すことはできなかったよ。

それから何日かたって、ようやく登校して来た女の子達から、何が起きたのかを聞き出すことが出来たんだ。
彼女達の話は、まったく要領を得なくてね。
一人一人話の内容が食い違っていたんだけど、話を総合すると次のようなことらしかった。

あの時、突然壁から染みが盛り上がりはじめてね。
ついには壁から空中を漂いはじめたんだって。
染みの顔の回りには、うっすらと長い髪の毛が見えていて、体の部分にはセーラー服が、うっすらと見えていたらしい。
空中を漂う染みは、先生に近づいていったんだ。

そして、先生に抱きつくような形になったと思った瞬間、先生は染みと同化するようになって、消えてなくなってしまったんだって。
そのあと、先生を飲み込んだ染みは、元の壁にすっと入って消えてしまったらしい。

これが、彼女達の話を総合したものなんだ。
倉田さん、君に信じられるかい、この話。
僕もはじめは、信じられなかったよ。

でも、何日たっても、若月先生は学校に来ないし、僕に乗っかっていた先生の重みが急に消えてなくなったのも事実なんだ。
彼女達の話を信じるしかなくなってしまったんだよ。
後から聞いた話なんだけれども、あのトイレの染み、模様が少し変わったらしいよ。

顔の模様の口の中に、もう一つの顔が現れたらしい。
まるで、助けを求めているような顔をした染みが……。
僕はあの後、その女子トイレには入っていないから、本当かどうかはわからないんだ。

当然だよね。
僕は男なんだから。
でも、倉田さん、君は女の子なんだから、その染みの口の所に新しい顔があるかどうかたしかめるチャンスがあるよ。
今度そのトイレに行った時に、確かめて来てみてよ。
楽しみにしているから。

でも、気を付けなきゃいけないよ。
その染みを馬鹿にしたり、興味本位で見ない方がいい。
クラスの女の子達の話が本当ならば、染みに取り込まれてしまうかもしれないから。

さあ、これで僕の話は終わり。
次の人は誰かな。

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