Secret Garden 〜黒狼侯爵の甘い罠〜 | ナノ













Secret Garden 〜黒狼侯爵の甘い罠〜








本編のサイドストーリーです。本編第七章、魔女の媚薬 を読了後にお読み下さい。

拍手未掲載SS ウォルド侯爵の年齢

 ウォルド侯爵に抱かれた朝。
 ブルーベルは入浴を済ませてから自室で遅めの朝食をとっていた。媚薬の効果はかなり治まったが、その反動のせいか疲労感があった。間違ってもウォルド侯爵に抱かれたから疲労感があるわけではない、とブルーベルは頑なに否定をする。
「ブルーベル様。本当に申し訳ありませんでした」
 アルテミラが見舞いへ訪れていた。食事の支度や入浴を手伝ってくれたのも、アルテミラである。
「いえ、いいんです」
「そういえば…、城主様から解毒剤をいただきましたか?」
「あ、はい。昨日、飲ませてもらったみたいです。私は覚えていないのですが」
「いえ、そうではなく、今日もお飲みいただくように朝と昼と夜の三回分を出しておいたのですが」
「え?」
「森の魔女は、私よりも力が強いのです。なので、早く体内から媚薬の効果がなくなる解毒剤をお出ししたのですが」
「いえ、受け取っていませんが…」
 アルテミラは僅かに逡巡して、あぁ、と納得して笑顔を浮かべた。
「まぁ、薬自体は明日か明後日ぐらいにはなくなると思います。解毒剤を飲まなくても大丈夫ですよ」
「いえ、大丈夫ではありません。解毒剤をいただけませんか」
 正直なところ、椅子に座るという単純な行為でさえ辛い時があるのだ。椅子へ座る時の衝撃が下腹部へ振動として伝わり、喘ぎ声が出そうになってしまう。そんな失態をするわけにはいかないので、ブルーベルは部屋に引きこもっているのだが。
「でも、城主様が渡していない、ということは、そういうことだと思いますよ」
「そういうことって、どういうことですか」
「勿論、媚薬で苦しんでいるブルーベル様を助けるという名目で、お抱きになりたい、ということかと」
「!」
「安心してくださいまし。私の占いでは、これから毎日半年間抱かれても、妊娠しないようですから。婚儀の時にお腹が大きくなっている、ということはありませんわ」
「恐ろしいことを言わないでください。毎日なんて、とんでもありませんから」
 アルテミラはにこにこしていた。
「いいではないですか。愛されている、という証拠ですよ」
 ブルーベルは朝食に出された白いパンを食べながら、泣きそうになった。
「アルテミラ様は、魔女なんですよね。だったら、そういうことを避けるまじないも知っているのではないですか?」
「はい。知っていますよ。ブルーベル様が仰っているのは、おそらく貞節を守る魔法のことでしょう」
「それを、私にかけてください」
「嫌です」
「い……?」
 アルテミラは妖艶なまでの美しい笑みを浮かべていた。
「私はシルバーフレイム城に仕える魔女。城主様の意に背くことはできませんわ」
 ブルーベルは、唯一の望みを絶たれて落ち込んだ。この城には味方は誰もいないのか、と。だが、アルテミラが城主に背くことができない、ということも理解する。
「そうですよね…」
「でも、城主様とご結婚された際は、ブルーベル様の一番の味方になることをお約束します」
「私がウォルド様と閨をともにしたくない、と言えば庇ってくれるんですか?」
「はい」
 アルテミラは、ブルーベルとウォルド侯爵が結婚するということを疑っていないようだった。
「アルテミラ様は、好きな方はいないんですか? たとえば、その…、クリス様とか」
 アルテミラはあり得ない、とばかりに笑って右手を左右へ振った。
「私、年下は好みじゃありませんから」
「年下? そんなに年齢は離れていないように見えますが…。アルテミラ様は一体おいくつなのですか?」
「ご想像にお任せします」
 常套句であっさりとかわされてしまった。
「すみません…、失礼な質問をしてしまって」
「いいえ、いいんですよ。私の年齢を教えるかわりに、城主様の年齢をお教え致しましょう」
「え?」
 ブルーベルは知りたい、とその言葉に食いついた。ウォルド侯爵が一体何歳なのか、とても気になっていたからである。
「私の覚え間違いでなければ、ブルーベル様と同い年ですよ」
 ブルーベルはウォルド侯爵の顔を脳裏に浮かべた。黙って立っていれば品がよく、整った顔立ちをしている。鍛えられた体は思わず見惚れてしまうほどに、男性としての色香を放っている。
「ウォルド様って…、そんなに若かったのですか。私、てっきり二十五歳前後だと思っていました」
「城主様は子供扱いをされるのが嫌で、大人っぽくみられるように普段から気を付けていますから。でも時折、年相応の表情をしますよ。ブルーベル様とご一緒の時とか」
 ブルーベルは、ウォルド侯爵の寝顔を思い出して顔を赤くした。自分の両手で顔を煽いで熱を冷まさせようとするが、一度赤くなった顔はなかなか戻らない。
「そういえば、そうですね」
 ウォルド侯爵が笑った時や寝顔など、とても幼く感じることがあるのだ。同い年であるならば、ウォルド侯爵が時折見せる幼い顔にも得心がいった。
「城主様が苦労されるのも、わかります」
「え? どういう意味ですか?」
「さぁ…。どういう意味でしょうね」
 アルテミラははぐらかして教えなかった。ブルーベルは色々と納得できなかったが、黙って食事をすることにした。








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