17、好きと言って 僕は執事のハンスと二人きりで、誰もいない空き部屋にて話し合いをしていた。 室内の空気はぴりぴりとしており、僕もハンスも緊張している。 「ハンス。残念だよ。お前にこんなことをさせる羽目になるなんて」 僕がそう言うと、ハンスは首を振った。 「いいえ、お坊ちゃま。私でお坊ちゃまのお役に立てるのであれば、本望ですよ」 「そう……、じゃあ、決心は変わらないんだね?」 「はい」 僕は一度だけ俯いた。 「わかった。お前がそこまで言うのであれば、僕も覚悟を決めるよ」 「はい。お坊ちゃま」 腹をくくるしかないようだった。僕はゆっくりと顔を上げる。 「じゃあ、やるよ?」 「はい」 「好きって十回言って」 「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」 「僕のことは?」 「好き」 ハンスははっとした。僕はにやり、と口元に笑みを浮かべる。 「ふふふ。どう? ハンス。この手を使えば、ブルーベルといい雰囲気になれると思わない?」 ハンスの目がきらきらしていた。僕のことを羨望の眼差しで見つめてきている。 「お坊ちゃま、これは妙案です! 私、無意識のうちにお坊ちゃまを好き、と言ってしまいましたよ!」 そうだろう、そうだろう、と僕は頷いた。 「昨日、一晩中考えていたんだよ。ブルーベルともっと仲良くなれるにはどうしたらいいか、って。で、ようやく思いついたんだ。この方法だったら、自然な流れでブルーベルといい雰囲気になれる」 「流石はウォルドお坊ちゃま! 天才です!」 「や、やめてよね。褒めたって何にも出ないよ」 僕は照れてしまった。でも自分でもなかなかいい案が閃いたものだとにんまりしてしまう。 ブルーベル、待ってて。 僕が君の心に、恋という名の花を咲かせてあげるから! |