Secret Garden 〜黒狼侯爵の甘い罠〜 | ナノ













Secret Garden 〜黒狼侯爵の甘い罠〜







11、お馬さんごっこ

 僕は今、とても幸せな気分だった。
 なぜなら、ブルーベルが僕の体の上へ跨って、腰を振っていたから。
 もちろん、真下から突き上げているのはこの僕だ。
「ひゃっ、ウォル……ド、もう、許して」
「まだだよ。ほら、ブルーベル」
「きゃっ、んぅ、やだ、ウォルド……、だめぇっ」
 僕の体の上でブルーベルが喘いでいる。
 たまらない。
 彼女の声は、なんて甘美な響きなのだろう!
 僕は彼女を下から突き上げ続ける。
 ブルーベルもまた、熱い声で僕の名を呼ぶ。
 二人の体はとっくに汗ばんでおり、衣が擦れる音が部屋に響く。
 あぁ、ブルーベル、やっぱり君は最高だ。


 十五分ほど前。
 僕はブルーベルと一緒に、いつものように僕の部屋で遊んでいた。
「ねぇ、ウォルド」
「なあに、ブルーベル」
「ウォルドって、馬に乗ったことある?」
「あるよ。一人ではまだ乗れないけれど、その内乗れるように練習をするよ」
「ふうん…。いいなぁ」
「ブルーベル、馬に乗ってみたいの?」
 ブルーベルは頷いた。馬に乗ってみたいだなんて、変わってる。女の子が馬に乗るだなんて、普通ははしたない、って思われることなのに。
「大きな動物に乗ってみたいって思ったの。羊に乗ったら、羊が潰れちゃうし」
「そっか…。馬に乗せる、っていうお願いなら叶えてあげられなくもないけれど…」
「本当?」
 僕は想像してみた。馬に乗るには、大人の男性が一緒に乗らなければ危ない。
 僕は、ありえないな、とその案を捨てることにした。
 ブルーベルが僕以外の男と一緒に馬に乗るだなんて。
 間違ってブルーベルがその男に惚れたらどうするんだ。
 うん。却下だ。
「いや、やっぱり無理だ。期待させてしまってごめんね」
 ブルーベルはがっかりしていた。可哀想だけれど、仕方がない。ブルーベルが変な男に引っかかったら困る。
「ううん、いいの。私のほうこそごめんね。変な話をしてしまって」
「馬には乗せてあげられない。その代りに、僕がブルーベル専属のお馬さんになってあげる」
「お馬さん?」
 僕は四つん這いになった。両手と両膝は床についており、背中はできるだけ平らに保つ。
「僕の背中に乗って」
「え。ウォルドの骨が折れちゃうよ?」
「折れないよ。ほら、いいから」
「う、うん」
 ブルーベルは躊躇ったものの、僕の背中へと控えめに乗った。僕は、自分の背中にブルーベルのお尻が乗っているのを感じて、熱い息が漏れそうになってしまう。
「ブルーベル。僕の肩にしっかりまって」
「は、はい!」
 ブルーベルは僕の肩にまった。それをきちんと確かめてから、僕は四つん這いで歩き出す。
「ひひーん、お馬さんだよー」
 僕が馬の真似をすると、ブルーベルは笑った。
「ふふ、なにそれ。ウォルドってば」
「ブルーベル、落ちないようにね」
 僕が早く動くと、その振動でブルーベルのお尻がぷにゅぷにゅと当たった。
 形のいいブルーベルの、丸くて柔らかな感触が僕の腰に当たっている。
「ウォルド、もっとして、もっと」
 僕の背中の上で喜ぶブルーベル。
 もしかするとブルーベルには、騎乗位の才能があるかもしれない。思わぬ収穫だ。
「楽しい?」
「うん。本物のお馬さんに乗ってるみたい」
「こんなことぐらいで喜ぶだなんて。君が望むのならいくらでもしてあげるよ」
「有り難う、ウォルド」
 可愛いなぁ、ブルーベル。僕が夫になったら、毎日お馬さんをしてあげるよ。
 その時は、僕は仰向けで君を下から突き上げていると思うけれどね。
「じゃあ、今度は暴れ馬をするよ。しっかりまっててね」
 あ。しまった。下ネタっぽい言い方だった。
 僕って、ちょっと中身がオッサンなのかも。
 ……まぁ、いいか。気にしない、気にしない。
「え?」
 僕はわざと、激しく体を下から上へと突き上げた。
「えいっ」
「きゃっ」
「ふふ。ほらほら、ブルーベル」
「やっ、ウォルド」
「そーれ」
「あっ……ん」
「ほらほら、まだまだいくよ」
 僕が動く度に、ブルーベルが声を漏らした。それも、極上の甘い声を。
 僕は下から突き上げ続ける。ブルーベルのお尻の感触と、彼女の声を堪能する、ただその為だけに。
「ひゃっ、ウォル……ド、もう、許して」
「まだだよ。ほら、ブルーベル」
「きゃっ、んぅ、やだ、ウォルド……、だめぇっ」
 そうして、ひたすらその行為を繰り返して。
 突然僕のお尻にぴしゃりと何かが当たった。
「わ」
 なんだろう、と僕は驚いて動きを止めた。
「えーい、この暴れ馬め。大人しくしなさい!」
 ぴしゃり、と再び僕のお尻に何かが当たった。
 いや、ブルーベルが僕のお尻を右手で叩いたのだ。
「ブルーベル?」
「ご主人様の言うことをききなさい」
 再び僕のお尻が叩かれた。
 え。
 なにこれ。
 ブルーベルって、こういう趣味があるの?
 やばい。やばすぎる。
 僕は興奮が止まらなかった。
 ブルーベルが僕の背に馬乗りになりながら、僕のお尻を叩くなんて。
 僕のお尻を!
「やだよー。きかないよー」
 と、僕がわざと反抗的な態度をとると、ブルーベルは再び僕のお尻を叩いた。
 三回も。
 別に痛くはないけれど、別の意味で興奮してしまう。
「私がご主人様よ! この、駄馬っ! おしおきよっ」
 あぁ、ブルーベル。僕は今日、新たな世界に一歩踏み入れてしまったよ。君に罵られながらお尻を叩かれる日がこようとは。
 というか、ブルーベルは一体どこでこんなお世辞にもいいとは言えない喋り方を覚えたんだろうか。まさか継母に虐待される時に、いつもこんなふうに怒鳴られているんだろうか……。それを想像すると胸が痛む。
「ご、ごめんなさい、ご主人様」
 僕はブルーベルに合わせてそう言ってみた。
「わかったのならよろしい。では、ゆっくり歩きなさい」
「ひひーん」
 従順に従うふりをして、また体を揺らして暴れてみた。するとブルーベルが僕のお尻をぺしぺしと何度も叩く。
「もうっ、暴れちゃダメだってばっ」
 と、そこでがちゃん、と何かが割れる音が響いた。
 ブルーベルと僕は、部屋の入口である扉へと振り返る。
 するとそこに、真っ青な顔をした老執事のハンスが震えながら立っていた。
「お坊ちゃま……」
 流石の僕も、サーッと血の気が引いた。ブルーベルは僕の背中からすぐに立ち上がり、僕もすぐに背筋を伸ばして立つ。
「ハ、ハンス、今のは……」
 弁解しようとした。だがハンスは心得ております、と言わんばかりに真顔で大きく頷いている。
「坊ちゃま、大丈夫ですよ。私は執事。執事は家具と同じ。家具は何も見ておりません」
「え、いや、ちが……」
 ハンスは落として割ってしまった足元の皿へと顔を向けた。どうやら焼きたてのクッキーを持ってきてくれたらしく、割れたクッキーも散乱している。
「私はなにも見ておりません。見ておりませんとも。お坊ちゃまとブルーベルお嬢様がいかがわしいことをしていただなんて、ちっとも思っておりません。えぇ。大丈夫です。私は優秀な執事ですから。誰にも口外しません」
 ハンスは朗らかな笑顔を浮かべながら床を手早く片付け始めた。
 なんだかもう、酷い誤解をしているようだった。
 いかがわしいことなんてちっともしていないのに!
 いや、僕はちょっと性的興奮を覚えていたから否定はできないけれど、ブルーベルは純粋に遊んでいただけのはずだ。僕はどれだけ言われても構わないけれど、ブルーベルは無実だ!
「僕とブルーベルは、普通にお馬さんごっこをして遊んでいただけだから!」
「えぇ、わかっておりますとも。お坊ちゃまとブルーベルお嬢様が、ひそかにお馬さんごっこという名の性的プレイを楽しんでおられたことは。どうぞご安心ください。貴族のお坊ちゃまは総じて早熟なものですし、色々と人には口外できない遊びをするものです。それに、そう遠くない未来にお坊ちゃまがこういうことをするだろうというのは、大方予想をしておりました」
 ブルーベルの前でなんてことを言うのか、この誇大妄想執事はっ。
 ブルーベルへ振り返れば、思ったとおりきょとん、としていた。
「せーてき…、ぷれ?」
「ブルーベルはそんな卑猥な言葉は覚えなくていいの! むしろ覚えちゃいけません!」
 僕はブルーベルの耳を両手で塞いだ。ハンスはまたしても、変な視線を向けてくる。
「お坊ちゃま。耳を塞いでのプレイとは、なかなか高度なプレイですね。流石はお坊ちゃま。このハンス、恐れ入りました」
「違うって言ってるだろっ! ブルーベルとは、何もしてないんだってばっ! 遊んでいただけだ!」
「わかっておりますとも! これからそういったことをするのですよね! いわゆる本番を!」
 ハンスの目がきらきらしていた。
 いや、止めようよ、お前執事だろ。なに瞳を輝かせているんだよ。有り得ないだろ。本番とか。
 今から僕とブルーベルがベッドでイチャイチャすると思ってるの?
 しないよ、するわけないだろ。





home
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -