好きな人が幸せならいい。
そう思っていたのは、出会ったばかりの頃だった。
〜2〜
話は更に前に戻る。わたしが、さくらくん曰くの”ついうっかりしたミス”をしたときである。
「なまえ先輩は、バレンタインの日誰かにチョコをあげますか?」
「月子ちゃん」
「嬉しいです!・・・じゃなくて、男子です!!」
「あげる予定はありません」
きっぱりと言い放ったわたしに月子ちゃんはつまらなそうな顔をした。
実際のところ、仲の良い男子はあげる予定だ。だけれど、そのことを言ったところで月子ちゃんの機嫌が直るとは思えない。月子ちゃんが望む答えは一つしかない。本命の相手は誰かということ。
仮にそういう相手がわたしにいたとして、そう簡単に相手が誰かなんて言うつもりはない。それが学園二人しかいない女子生徒の片割れであってもだ。
・・・そう、誰にも話す予定もなかったはずだったのだ。
(ああは言ったけれど、月子ちゃんもきっと本命の人用に作るんだろうな)
ノートにチョコをあげる予定の人書き記す。その中でも仲の良い人、次にクラスメートと印で分けていく。
「あー!なまえちゃんってばここにいたんだね〜」
「さ、さくらくん!?」
静かな教室に突然入ってきた人物に驚き、ガタっと椅子を引いてしまった。
そんなわたしにさくらくんも驚き、どうかしたのかとわたしを心配するかのように側に急いでやってきた。そしてわたしの手元にあるノートを覗き込む。
「ああ、リスト・・・あれ。どうしてこの人だけ丸が」
「駄目だってば!」
覗き込まれたノートを急いで閉じて、キッとさくらくんを見る。
さくらくんは面白いネタを見つけたときのような顔をしていた。その時のさくらくんは友達のさくらくんではなく、「新聞部部長の白銀桜士郎」であった。
「へーえ。なまえちゃんってそうだったんだ〜?」
「・・・くっ」
「言わないならなまえちゃんが言う気になるまで追いかけるよ?」
そして話は現在に戻るのだ。
20140128
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