”光を操る少女”。
彼女が再び現れることはこの数日の間はなかった。
そのことに俺は特に疑問も持たず、ただいつも通り見回りをしていた。
「しっかしルカのやつ何してんだー?今日はあいつも見回りするとか言ってたのによ」
『あ、リベルタ!今日は私も一緒に行きます!』
そう言っていたのはどこのヘタレ従者だろうか。行く寸前になってルカの姿が見えなくて、しばらく待っていたがそれでも来なかったから置いてきてしまった。
「あ、ちょっとそこの君。この近くに美味しいリストランテあるかな?」
「あ?レガーロにあるリストランテはどこもおいしいぞ?」
「ふぅん。それじゃあラ・ザーニアの美味しいところは?」
「それならパーチェが」
不意に声を掛けられて、その人の質問に答えている途中。ラ・ザーニアのことを聞かれてパーチェのことを思い出した。
あいつ・・まだ休養中なんだよなぁ。食欲も湧かねぇみたいだし好物のラ・ザーニアも食ってないときた。大丈夫かよ・・・
「パーチェって?」
「あ、ああ。アルカナ・ファミリアの一員だよ。・・ん?お前知らないのか?」
ふと何か違和感を感じて、俺に話し掛けてきた女を見る。
「知らないんだ。こっちに来たばかりだから」
「そっか」
「で、パーチェって人がなに?」
「ああ。そいつなら良いリストランテ知ってるはずだからよ。でも休養中だからなぁ」
「休養中?」
「お前も気をつけろよ?光のアルカナ持ちの奴が最近やって来たみたいでさ、そいつにやられちゃったんだよな。パーチェが言うにはあっというまの攻撃で反応できなかったみたいでよ」
「・・・」
「聞いてるか?」
「うん」
変なやつ。こっちは心配してんのに俯いちまうし!
口をもごもごさせながら頷くそいつの肩に俺は手を置いた。
「ま、楽しみなよ!ここのやつらはみんな良いやつだからさ!名前何て言うんだ?」
少し間を置いて呟かれた言葉に俺はどうしてか嬉しくなって頬を緩ませた。
すると彼女は頬を少し赤くさせながら眉を吊り上げた。
「それじゃあリストランテ行ってくるよ!
――――リベルタ」
「おう!」
『名前は・・・ティアーナ』
『へえ!よろしくな!』
「・・あれ。俺の名前言ったっけ?・・ま、いっか!」
20120707
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