「いいですか、パーチェ。ちゃんと仕事をしてこなかったらあなたの分はありませんからね」
「し、しどいっ!!」
「当然の報いです」
渋々、夜の偵察というめんどくさい仕事を引き受けた。
これも全部ラザニアの為!夜の偵察がてら港にでも行って海の空気を吸おう。
しかし港に着くと、ある船の近くに誰かが立っているのが見えた。月の光のせいでどんな人物かがはっきりと認識できない。
手に力(パワー)を注ぎながらその人物に近付いていく。
「きみは何してるのかなー?」
おれの声にびくついたその人物は勢い良くこちらを振り向いた。
真っ暗闇に紛れるような黒い髪の毛、瞳は藍色。瞳からは一筋の涙が流れていた。
「え」
「・・・」
キッと睨んできたその人物は、おれに向かって指を差した。
と同時に、その指先から眩い光の球がおれに向かって
―――
――
「パーチェ・・・!」
港に着いたときにはもう遅かった。
光の球はパーチェの目前にまできていたのだ。
「パーチェ!大丈夫ですか?!」
傷口はないがぐったりとしている彼に声を掛けたが、閉じていた目を微かに開けただけで何も言わない。
「・・・あの子は誰?」
「ぇ?」
しばらくして口を開いて聞こえたその言葉に私はポカンとしてしまった。
「あの子もアルカナを持っているの?」
「・・・」
確かに、錬金術師のような摩訶不思議な技を出せるのはアルカナ能力を持つ者だけだ。
けれど、このレガーロ島には9人しか存在していなかった。
「・・パーパに聞きましょう」
パーチェの肩に手を回して、私は先程の人物が去っていった方を一度見て、館へと向かった。
――
―――
「光の球を投げてきたの?」
マンマの静かな声が心地いい。
目を閉じたまま、おれは口を開いた。
「うん。あっというまだったよ。だからびっくりした」
「とにかくパーチェは充分な休養をとってちょうだい。しばらくあなたの仕事はフェルに任せるわ」
「!それはかわいそうだよ。おれが反応できなかったのがいけないんだ」
「パーチェ。あの子はアルカナ・デュエロに勝利したのよ?これぐらい出来なきゃこれから先を任せられないわ」
「・・わかったよ」
マンマが部屋から出て行ったのを気配で感じると、おれは眠りについた。
20120607
20140201修正
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