また来るってことで。
「・・・ふぅ」
「だ、大丈夫か?」
「深呼吸、深呼吸。ほら、翼も」
「ぬ・・・ふぅ・・」
1つの部屋の前で私達は何度か深呼吸をする。
今から話をするんだ。1つは翼の荷物の返却。もう1つは―――
「さっきのやつ、大丈夫なんだよね?」
「うぬ。『とりっぷくん』が上手くいったからこっちも大丈夫だ」
「そう。・・・ふぅ」
4度目の深呼吸を終えると私は襖に手を掛け「やっと入る気になったんだ」 おおおおお沖田さんんんん!? 襖に手を掛けて開けた瞬間目の前には(色々な意味で)いい笑顔の沖田さんが立っていた。
「ぬぁ?・・ああ!昨日の『ぬいさん』返せ!!」
「え?あれ没収したの土方さんだから。僕に言わないでよ」
「返せー!」
「だから僕じゃないって」
翼と沖田さんが言い争いしていてもこの部屋の主の声が聞こえない。そのことに疑問を感じて部屋を見渡すとどうやら不在らしい。
まぁこれはこれでしょうがないか。そう思って私は翼に話し掛けた。
「翼、『きかんくん』飲もう」
「もう飲むのか?」
「うん」
「え、ちょっと何の話してるの」
沖田さんの言葉は無視した。
「『ぬいさん』はまだ返してもらってないのに・・」
渋々といった感じで翼は私に『きかんくん』を差し出す。
「沖田さん、土方さんには『また来ます』って言っておいてください」
「え、だから何の話、」
<ごくごくごく・・>
私と翼は『きかんくん』を飲み始めた。
そしてやっぱり視界は暗くなっていくのだけど、天井裏に気配を感じたので、
「山崎さんもまた」
「「!」」
―――
「あの子達、今光って・・山崎君も見たよね?」
<シュタッ、>
沖田の声に応じて天井裏から黒装束の男が降りてきた。
「はい。信じられませんが現実のようですね」
「・・はぁ。土方さんどうするんだろうなあ」
――――――
「「・・・」」
「・・・えーと、こんにちは?」
「ぬいぬいにそらそら・・」
「お前はまた・・」
「こんにちは、お二人とも」
視界が明るくなって目に入ったのは生徒会長と颯斗だった。
「俺がいる時にトリップしろよ!」
「なんで許可を・・颯斗、ただいまです」
「お帰りなさい」
「俺無視するなあああ!」
「『ぬいさん』大丈夫かな・・・」
「翼君?『ぬいさん』ってなんですか」
「ぬああ!そらそらごめんちゃいいい!!」
「おい、『ぬいさん』ってなんだ?」
「・・・」
「ゆうはまだ俺を無視するのかああ!」
―薄桜鬼〜新選組奇譚〜 編―終
※山崎さん・・本名:山崎烝。新選組諸士調役兼監察。沖田さんとは犬猿の仲。
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