納得のいかない勘


少年の名前は不知火一樹。
彼と出会ったのは、あの小さな先生との出会いから1週間過ぎたときのことだった。


納得のいかない勘

 
オリエンテーション期間が終わり、いよいよ明日から授業が始まる。
そして今日は日曜日。


「もう行くぞー!」

「わかってるー!」


下の階から聞こえる兄の声に私は自分の部屋から叫んで返事をした。


<ドタドタ・・>

「じゃあ行ってくるね!」

「早く帰ってきなさいよ?」

「分かってるってば。」
「分かってる。」


リビングにいる母に声をかけて私とひろは外へ出て行った。


―――

「にしても、明日から中学生だなんてねー。」

「ああ。実感わかないよな。」

「ねー。」


街を歩く2人の男女。

彼らとすれ違う人もそうでない人も一度足を止めて彼らを振り返る。


(顔がそっくり・・)


思うことは誰しも同じ。
彼らは一卵性の双子なのだから顔が似ているのもしょうがない。


「で、何買うんだ?」

「ああ!えっとね、ブレスレットかストラップ!」

「へえ?」

「・・・。ひろも買うんだからね。」

「、は?あんず、俺に女物のやつつけさせるのか?」


――

<カラン、コロン>

「いらっしゃいませー。」


店内に入ってすぐさま周りを見渡した。


「星のやつがいいよね。」

「勝手にしろ。」

「あ!これなんかどう?」


小さな星がポイントのストラップ。
星の色は2色で、金と銀。


「ストラップ?」

「いいでしょ。」

「んー。いいんじゃね?」

<カラン、>

「いらっしゃいませ。」

「すみません。昨日お電話した不知火と言います。」

「ん?」


会計をしているときに入ってきた一人の男子。
その男子が名前を言ったときひろは反応した。


「ありがとうございました。」

「どうかしたの?」


会計を済ませ、それでもまだ彼を見ているひろに私は声を掛けた。


「あいつ・・不知火って言ってたぞ。」

「?そうなの?」

「確か俺たちがここに来る前に通った神社の名前、”不知火神社”って・・」

「へぇ。」


そんな会話をしているとき、その彼がこちらを振り返った。


「「!」」

「?」


一瞬怪訝そうな顔をしたがお店を出て行った。


「あと着いていくぞ。」

「え、・・え?」

<カラン、コロン、>


「何の為に?」

「俺の勘。不知火さん!待ってくれ!」


外を出るとひろは彼に声を掛けた。けれど声を掛けるまでもなかった。というのも彼はこちらを向いて立っていたから。


「お前等は?」

「言わなくても分かってるんじゃないか?」

「ちょっと、ひろ。」

「・・まぁな。でもお前はなんでそれを、」

「俺は本山ひろ。こいつは妹のあんず。これからよろしくお願いしますね”先輩”。行くぞ、あんず。」


彼の名前も聞かずに去ろうとするひろ。
私は一度彼の方を振り返った。


「よろしくお願いします!」

「!、俺は不知火一樹だ!」


挨拶をすればびっくりされて、でもすぐに笑顔になって自己紹介をしてくれた。


「どうしてあの人が私達のこと知ってるってわかったの?」

「言っただろ。俺の勘。」

「勘、ねぇ。」


納得のいかない私の手で、さっき買ったストラップの入った袋が揺れていた。


20130907修正

 


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