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2012/04/10 02:25



真っ白いコートを抱きしめる。
朝届いたばかりのぴかぴかの新しいぼくの制服。今日からぼくらがサブウェイマスターだ。
こんな日が本当に訪れるなんて、ぼくらはなんていう幸せものだろう。
体の奥の方から湧いて出る喜びに頭の先っぽまで満たされて、皺がつくことも考えずにぼくはぎゅうぎゅう抱きしめる。
隣から浮かれすぎですよって水を差すようなことをいう男がいたけれど、ノボリだってさっきぼくに隠れるように倉庫でブラボー!って叫んでいたのを知っている。かっこつけの兄さんが傷つくから、ぼくは知らないふりをしてあげるけどね。

「いいですか、大変なのはこれからなんですからね。ちょっと、聞いてるんですかクダリ」

「うん、うん。聞いてるよノボリ、大丈夫」

「大丈夫って貴方、そんな子供みたいな無責任なお返事をして」

「ひどい、ぼくべつに軽い気持ちでそう言ったわけじゃないよ。コートも帽子も、ノボリと一緒。ぼくにはそれだけあれば、もう大丈夫!」

ノボリだって、ね、そうでしょう。にっこり一番の笑顔で言えば、ぽっと頬をピンク色に染めて、ノボリの口はもう何も煩わしいことは言わなくなった。
兄さん簡単すぎるよ、とは言わないでおく。ぼくはくすりと笑ってさっきからノボリが放さないでいた黒い帽子を手から奪い、大人しくなってしまった兄の頭に乗せてあげる。うん、よく似合ってる。

「……貴方も、よく似合っておりますよ」

「ふふ、ありがとう!」

ノボリは黒いツバを恥ずかしそうに指で下げ、耳をほんのり赤くさせながらぼくの頭をぐりぐりと撫でた。
そのせいでお揃いの白い帽子が深く頭を飲み込んで、ぼくの目の前を真っ暗にする。
くすくす笑いながら見えないよとぼくが文句を言うと、ノボリはすぐに気がついて帽子を整え直してくれた。優しくて気が利くぼくの兄さん。
ぼくがこうしてはしゃいでいられるのも、ノボリがぼくとおんなじ制服を着ているからだ。ノボリと隣同士なら、ぼくは恐いことなんてほとんどない。これはなんにも嘘じゃない。
でも、もしもということを考える。例えばノボリがぼくから離れて、遠く見えないところまで行ってしまったら、果たして。

「ノボリ、ぎゅってして」

ぼくが頼むとすぐに暖かい体温が身震いをしたぼくをくるんだ。
甘えるようにシャツにおでこを擦り付けると、ずれた帽子が宙へ投げ出される。
ぼくが気にするより先に、抱いていた腕のひとつがそれをぱっと捕まえて、窘めるように帽子で背中をぽんぽんと叩いた。
ぼくは黙ったまま、ノボリの背中をぎゅっと締め付ける。ぼくの世界でたったひとりの素敵な兄さん。ぼくにはノボリがこの世界のすべてだった。




お気づきの通り表の話のボツネタです使いまわしすみません\(^o^)/
新しいことを踏み出すって物凄いストレスなんですよね。
この子達は特にそういう環境の変化に弱そう。クローズな双子だけの世界でずっと育ってきてて、新しい環境でも互いがいるから安心しきってしまって変化・適応を積極的にしてこなかったとか。そんなこんなで依存が強くなっていく良くないループ。
しかしそこに互いの愛情を認め合って陶酔感さえも感じてるあんまり健康的ではない双子ちゃんなサブマスもドキドキします。
とにかくノボリ兄さんが計画的にしろ無自覚にしろどろっどろに甘やかしいでクダリを依存で雁字搦めにしていると美味しいです。とことんクダリ信者で駄目兄なノボリが好き。
自分も新しい環境に適応できるよう頑張りたいものです。






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