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大切な人を失うということはとってもつらいこと

俺はもう"二人"も失った

だから、決めたんだ

もう大切な人を失わないように頑張るって

いつまでもくじけてたら梓とじいちゃんに怒られるから











木ノ瀬梓が死んでから七日目

天羽翼はいつも通り生徒会室に来ていた

こんな事件が連発して起きているため、当然学校は休止だった

翼が来ている理由。それはここの副会長と会長がずっと残っているためだった

書記の月子は、幼馴染二人と一緒に実家に帰った

いや帰らせられた、ていうのが正しいのかもしれない

でも仕方が無いと翼は思う

なぜか月子の周りの人が死んでいくから

実際あんな風に明るく振舞っても精神的にはつらいはずだ

「翼君、今日は休んでもいいですよ」

急な言葉にびっくりした翼は生徒会副会長、青空颯斗のほうを見る

「ぬ、どうして?」

「・・・まだ木ノ瀬君が亡くなってから七日しか経ってません。翼君には正直つらいと思います。それと・・・・・」

珍しく颯斗が言葉を詰まらせる。翼をあまり傷つけないように言葉を選んでいるのだろう





確かに梓が死んだのはつらかった。それも数分前はすぐ近くにいた人が





後悔もあるし、悲しみもある。それだから同じ過ちを繰り返さないため、翼はここにいるんだ

「そらそら、心配してくれてありがとう。でも俺もう決めたんだ。俺は大切な人を守るって、だから、大丈夫」

目頭が少し熱くなった気がした

颯斗も「そうですか」と言うといつものように微笑んだ



その様子を見ていた生徒会長は、一人だけつらそうな笑みをしていたのだ















午後、生徒会も普通はもう誰もいないのだが今日は三人とも長く残っていた

「二人とも、もう帰って良いぞ」

一樹は資料と睨めっこしながらぼそっとそんなことを言った

「ぬぬ、俺みんなが帰らないならここにいるぞー!」

「僕も翼君に同感です。一樹会長一人残して帰るわけにはいきません」

あんな事件が起きそうで怖いのだろう。一樹は良い後輩を持ったなと心から思った

「そうか・・・。なんか悪いな」

「いえ、当たり前じゃないですか」

そう言って颯斗は実際一樹に言いたいことがあった

先ほどからずっと何かを一人でつらいことを溜め込んでいる気がして仕方ないのだ

そうして颯斗は一樹に言った

「・・・・会長、さっきから何か隠してますよね」

颯斗のその言葉で一気に空気が重くなった

発明途中だった翼もその異変を感じ、動きを止まった

颯斗はぎゅっと手を握った。この時初めて、一樹が怖いと思ったのだ

「何も・・・隠してない」

その言葉が部屋全体に静かに響く

心臓がばくばくなっている。だけど言わないといけない気がして仕方ない

「嘘つかないでください。さっきから会長苦しそうです」

「・・・」

空気が落ち着いてきた

決心がついたのか、もう嘘を言っても仕方ないと思ったのか、一樹は二人のほうを見る

そしてこう言った

「俺の話、聞いてくれるか――――」














星月琥太郎は保健室にいる二人に溜め息をついた

その二人とは携帯をいじっている水嶋郁とお茶を飲んでいる陽日直獅

「・・・直獅お前帰らなくていいのか?弟とかいるんだろ」

「んー?俺帰らないぞー。あとアイツは心配してるかよくわからないし・・・」

真剣に考え込む直獅。あ、何か分かった。こいつは何言っても帰らないな

「郁、お前大学あるだろう」

「さぼります」

一言で、それもサボり発言

琥太郎は溜め息をついた。面倒ごとは御免だと思っていた郁まで参加してしまったのである

ここに残る理由。直獅はまだ学校にいる生徒が心配なのだ。それならまだ分かるが、大学生の郁がどうしてここに残る必要があるのだろう

これが違和感に感じた一つの種。だけど郁は何を言っても答えないだろう

もういいと言うように琥太郎はベットに寝っ転がる。寝ようとした瞬間、直獅が「そういえば!」と声を張り上げたのだ

びっくりした琥太郎そのままベットから落ちた

「あ」

郁はぽかんとなっている

直獅も相当驚いたのか、目を思いっきり開けて琥太郎のほうを見る

「直獅、早く言え」

そのまま落ちた体勢になりながら、琥太郎は言った

「あ、うん。裏の方のことで」

"裏"と聞いて琥太郎は真剣になった

自分たち含めて生徒何人かでやっている組織

生徒はもちろん、一部の教師までもが知らないのだ

「何か・・・あったか?」

「裏切り者がいる可能性がある」

裏切り者。一番聞きたくない言葉だった

「そうか・・・予感はしてあった」

これは本当のことだ。だって、今まで殺されてきた、いや死んだように見せかけて消えた二人は――――





"裏切り者"





琥太郎は郁のほうをチラッと見た

携帯をかちかちといじりながら聞いている郁

「直獅、耳貸せ」

「え、なんで?」

「いいから」

その時、琥太郎は郁が裏切り者の気がしたからだった

直獅を引っ張り耳元で何か囁いた

直獅は「了解」だけ言うと、すぐに琥太郎のところを離れる












星月学園の裏。それは"スパイ組織"であった









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